翌日、彼らは自由行動をすることにした。これからの旅にむけて道具を揃えたり、情報をえるために。ロインとティマにとっては、住み慣れた地との別れを告げるためでもあった。
「こんなところにいた〜。」
夕方頃、港で海を眺めていたロインを見つけ、ティマが駆け寄ってきた。その声に振り向くと、彼女の手に包みのようなものが二つあった。
「町で買ってきたの。一緒に食べない?」
そう言って、包みの一つをロインに差し出した。それを受け取り、中身を見ると、ホカホカの饅頭が入っていた。包みから取り出して頬張ると、口の中に程よい辛さとうまみが広がる。そのおいしさに、ロインの顔から笑みがこぼれた。それを見たティマも笑顔になり、自分も饅頭を頬張った。
「…明日だな。」
「うん。」
饅頭を口にしながら、二人は『女神の従者』こと『雷嵐の波』の船と目の前の海を見つめた。
「首都まで直接は行けないけど、近くの港に下ろしてくれるってラミーが言ってた。」
「そうか。じゃあ、もうしばらくかかるな。」
「うん。」
何気ない問いにティマは頷いた。だが、彼女の心の奥にある複雑な想いに、ロインは気づかなかった。
やがて饅頭を食べ終えると、二人は他愛のない話をしながら宿へと戻った。部屋で待っていたカイウスとルビアは、いつものように仲のいい二人の姿を見て、どこかほっとしていた。そして、彼らが調達してきたグミや食材などの荷物をうけとると、明日の出航に備え、二人は早めに床についた。そのおだやかな寝顔を見守るカイウスとルビアの表情は、どこかこわばっていた。
「これからの旅がもっと危険かもしれないって、言ったら不安にさせただろうな。」
呟くようにカイウスが言うと、ルビアは首を縦に振って答えた。
「大陸で廃止されたはずの『リカンツ狩り』に似た動きがあったり、マウディーラ王家に不穏な動きのあるとか、ね。…カイウス、大丈夫なの?」
ルビアは不安そうにカイウスを見つめた。もし、彼に「獣人化」の能力があるとバレれば、どうなるか予想がつかないからだ。カイウスは頭を掻きながら、少し不安げな顔をした。
「う〜ん。『バオイの丘』でロインにバラしちまたからなぁ。あいつが告げ口しなきゃ平気だと思うけど…。」
「…微妙ね。」
そういう二人の視線が、無意識のうちにロインに向けられたことに、当の本人は気づいていなかった。しばらくしてから、二人も不安を抱えたまま床についた。
そして夜が明け、出航の時間が近づいた。
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