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第3話 〜エアルと魔導器と〜



先に町とその外を隔てる城門に辿りついていたクレイは、すでにクリス隊員と引き継ぎ作業を済ませていた。そこへ現れた覇気のない四人。何があったか知らないクレイだったが、なんとなく察しがついたのだろう、短いため息を吐いた後、ユーリらにとって予想外の行動に出た。

「ん?なんだよ…って、おわっ!?」

トントンと軽く肩をたたかれ、ユーリはその方向へ顔を向けた。すると、彼の目の前に青い影が至近距離で現れ、驚き半歩飛び退くことになった。その様子を見てクレイが笑っている。そして、その腕の中にいた青い影、軍用犬ランバートの息子である子犬・ラピードが、ゆっくりと地面に下ろされた。ラピードはそのままユーリの足元を駆け回って遊び、時折彼の足にすり寄っている。

「てめっ、クレイ!よくも…って、邪魔だな、こいつ。」
「ラピードの世話係なんだから、いいじゃん。」

ユーリはクレイに食ってかかろうとするが、足元のラピードが気になって気を逸らされてしまう。それに対して突っ込むのは、やはり彼の教育係のヒスカだった。それに加わり、フレンとシャスティルも、うんうんと頷いている。一人不平を口にするユーリだが、それをまともに相手するのは、四人と一匹中誰もいない。ユーリは諦め、はあ、と短くため息をつくと、ふと何かを思い出したように顔を上げた。

「な、魔術見せてくれよ」
「はあ?今、必要ないでしょ?」
「昨日、ひっくり返ってて見えなかったんだよ。新米じゃ、まだ支給してくんねぇし。」
「あんたは一生無理かもよ。」

ユーリは、まるで新しい玩具をせがむようにヒスカに言うが、それは軽くあしらわれるだけだった。ヒスカはまるで相手にしない。その隣で、シャスティルがその様子を見ながらフレンに目を向けた。

「フレンはコネ使えば早いかもよ。お父様も騎士だったんでしょ?」
「実力で手に入れますよ。」

そう言って少し不機嫌になるフレン。シャスティルは真面目な彼らしいと思い、クスッと笑い声をあげた。

「勉強のために見せてくれよ。」

その一方で、ユーリはまだヒスカに頼みこんでいた。とは言ったものの、別に畏まる訳でもない、頭を下げているわけでもない、友達に軽い気持ちでも物事を頼むような態度で、だ。これでヒスカが頷くわけがない。

「まず、その口の利き方直しなさいよ。」

当然そう言って注意した。すると、ユーリはすぐさまその場で気を付けをし、ヒスカに向かって真っ直ぐ立った。やればできるじゃん、とヒスカが感心した、次の瞬間だった。

「見・せ・て・く・れ・よ!」
「馬鹿にしてんの!?」

すかさず入るヒスカの突っ込み。苛立ちが募る彼女の右手には自然と力が入り、胸の前で怒りに震えていた。

「ヒスカ、落ち着いて」
「わかった!見せてあげようじゃないの!あたしらを馬鹿にしたこと、後悔させてあげるわ!」

シャスティルが声をかけたのと、ヒスカがユーリに啖呵を切ったのはほぼ同時のことだった。握られていた右手の人差し指を生意気な後輩に向け、そしてズンズンと城門の外へ歩きだして行った。ユーリはヒスカの剣幕に一瞬たじろいだものの、すぐさま「やりぃ!」という表情で指を鳴らし、彼女のあとに続いた。

「ヒスカ。それじゃ、ユーリの思う壺だって…。」

そんな二人の背を見つめ、シャスティルは大きなため息をついた。そんな先輩を、フレンはどうフォローしようか思いつかず、ただ肩をすくめていた。クレイも髪を掻き、ユーリとヒスカに続いて城門へと足を運んだ。すると、すでにヒスカは魔導器を構え、魔術発射の体勢を整えていた。そして彼女の右腕に装着されている魔導器の魔核から発射されたひとつの魔術。それは空へゆるゆると上っていき、不発に終わった花火のように弾けて消えた。

「しょぼっ!レベル低っ!」
「あたしらは回復と防御系が得意なの!」

もちろん、そんな魔術を見せられたユーリは別の意味で驚愕の声をあげた。もともと攻撃魔術が専門ではないとはいえ、あのようなへなちょこを見せられては開いた口が塞がらないというもの。

「シャスティル!」

このまま下がれない。ヒスカは先輩騎士としてのプライドのためか、荒い口調でシャスティルを呼んだ。すると、シャスティルはヒスカの意図を理解したのか、彼女のそばに立ち、魔導器の魔核に手を添えた。すると、先ほどのように魔導器は魔術発射の術式をくみ上げ始めたのだが、そこにはヒスカだけではなくシャスティルの力も加わりだしたのだ。

「魔導器は、こういう使い方もできるのよ。」

ヒスカがそう言った直後、彼女らが組み上げた魔術は空へと発射された。今度のは、先ほどとは別格の火炎弾だった。弾丸の如く勢いよく空へ飛び出し、彼方へと向かう途中で花火のように弾け散った。今度はユーリも称賛に値すると思ったらしく、手を叩いて
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