「うっ・・・!?」
すると突然胸に痛みが走り、セレスはその場に倒れ込んでしまう。
「げほっ、ごほ、ごほっ!どうして、こんな急に・・・!?す、スイッチを」
苦しそうに胸を押さえ、起き上がる力も無く、テーブルの上にあるスイッチに手を伸ばすが当然届かない。
ゴロンと体勢を変え、せめて楽な姿勢を取ることで精いっぱいだった。
「(苦しくて大声が出せないし、何か、他に大きな音が出そうな物を・・・!)」
何か探そうとするも目の前がボヤけだし、意識が飛んでしまいそうになるのをセレスはぐっと堪える。
「(助けて・・・助けて、お兄様・・・!)」
ギュっ、と目を瞑ると、頭上から見知らぬ声が聞こえた。
「おや、これはいけない・・・大丈夫ですか、セレス様」
「え・・・?」
何とか顔を上げ、声の主を確認すると、白黒の道化師のような服を着た人物が自分に手をかざしていた。
そこから緑色の光が発せられると、たちどころに体が楽になっていくのを感じ取れた。
「ど、どちら様?」
「私、サイグローグと申します。いや驚きました。こちらに参ったらセレス様が床に倒れていたものですから」
セレスは起き上がって恐る恐る尋ねると、サイグローグはお辞儀をしながら口を開き、どうしてここに来たかをセレスに話し出した。
「いきなりの訪問で申し訳ございません。実は、本日はセレス様に夢のような情報をお話しにきました」
「・・・わたくしに?」
「はい」
にっこりと笑顔を浮かべるサイグローグを、セレスは何だか不気味に思っていた。
普段なら不審者としてすぐさま他の人物を呼びつけるのだが、このサイグローグは先ほど自分を治療してくれたし、何が目的かが分からなかった。
どうやってこの部屋に入ったのかなど聞きたい事がたくさんあったが、とりあえずセレスはこの人物と二人きりにはなりたくなかったので、スイッチを手に取った。
「あ、あの、そのお話、わたくしの執事を同席させてもよろしいかしら?」
「んー、構いませんが、恐らく無駄だと思われますよ?」
「それはどういう・・・」
カチッ、とスイッチを押して少し待つが、トクナガは現れない。
ならばと連続で2回押しても、トクナガが現れる気配は一向に無かった。
「そんな・・・どうして・・・」
押すのを止めたセレスは、先ほどの発言をしたサイグローグを睨み付けた。
「あなた、トクナガに何をしたんですの!?」
「ご、誤解でございますセレス様!ただ、ちょっとこの場所を空間ごと切り取らせて頂いたので、外部との連絡が取れなくなっているだけなのです。このお話は、なるべく私とセレス様だけでしたいものですから・・・」
「空間を?そんな事が・・・」
試しにセレスは扉を開けようとするが、鍵がかかっている訳でもないのに全く開こうとはしなかったし、窓の外も街の明かりや空の星が見える夜景であったのに、今は何も見えず、真っ暗になっている。
サイグローグの言っている事が本当だと確信し、セレスは未だに驚きを隠せない表情でサイグローグの方へと向いた。
「ご理解いただけたようですね、セレス様」
「何者なのですか、あなたは・・・」
「ふふ、それは秘密でございます」
片目を閉じ、立てた人差し指を口元に当てるジェスチャーをした後に、サイグローグは‘さて──’と言いながら話を切り出した。
「本題に入りますが・・・セレス様、何か願い事はありませんか?一つだけ、何でも叶えてさしあげますよ」
「願い事?」
「ええ、例えば・・・死んでしまった兄を生き返らしてみたい、とか」
「えっ!?」
そんな事が可能だとしたら、正に夢のようだった。
今までのサイグローグの行動からしてただ者ではない事は十二分に理解したし、死人を復活させる事も可能かもしれなかった。
そして、そんな余りにも唐突な言葉に思わずセレスはサイグローグに歩み寄っていた。
「お、お兄様を生き返らせる事ができますの!?」
「可能でございますよ・・・ただ、それにはセレス様に協力していただく必要がありまして」
兄が生き返る。そのためならば、セレスは何だってする覚悟でいた。
そんな必至な様のセレスを見て、サイグローグは表情には出さず、心の中でニヤついていた。
「わたくし、やりますわ。お兄様のためならどんな事でも!」
「ふふ、迷いのないその尊さに感謝いたします」
そう言うと、サイグローグはまたお辞儀をする。
「これから私が異世界へと続く扉を開きますので、そこで8つの特別な宝石を集めて欲しいのです・・・が、その世界にも魔物はいますので、お体の弱いセレス様には酷なことでしょう。そこで、セレス様にはこれをお渡しいたします」
「?・・・これは、エクスフィア!?」
自分の右手が光りだしたので、何かと思って光が収まってから見てみると、
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