i-mobile
旅人探し 〜デスティニー2編〜 PART2

リムルは小さいころ、寺子屋のテストで良い点を取った時に母に褒められたことがきっかけで、それからリムルは何でも一番になろうとした。
その時は母の兄であったスタンにも憧れていて、彼のように強く立派になりたいと思って剣術の修業を始め、毎日鍛錬をかかさなかった。
そして見事にそれらは叶い、成績でトップになり続け、村に入り込んだ魔物を一瞬で倒した時にはリムルは村で一番の人気者になっていた。

‘ああ、これが私の求めていたものだ・・・’そう思っていたが、ある日リムルは何か違和感を覚え始めた。

(流石は英雄スタンの姪だな!)

こんな言葉をよく聞くようになってからである。
どうして、そこで伯父さんであるスタンの名前が出てくるのだろう?
頑張ったのは私なのに、良い成績を取ったのも私なのに、魔物を倒したのだって全部私なのに、なんでリムルは凄いなと言ってはくれないのだろう。

「(たとえどれだけ一生懸命努力を重ねてきたとしても、英雄の名の前ではそんなもの、何の価値も無いものに変わってしまう・・・)」

そう、その一言で、リムルの今までの努力が全て無駄になったのだ。
寝る間も惜しんで勉強をしたし、血が滲むまで剣を振り続けたのに、それらも‘英雄の姪だから凄い’の一言で片づけられてしまう。
逆にサボって結果を残さなければ‘英雄の姪のくせに・・・’と罵られる日々だった。

誰も、私を‘リムル’としては見てくれなかった。

そして何もかもが嫌になって村を飛び出し、ノイシュタットでチャンピオンまで上り詰めるも、結果は同じことだった。
もうこの英雄の血の呪縛からは一生逃れられないのだと、リムルは悟っていた。
いつの日からかスタンへの気持ちが憧れから憎しみに変わり、実際にスタンをこの手で倒せれば、みんな私を見てくれるのではと思うこともあった。

だが、相手はすでに死んでいる人物。死んでしまっていては、超えたくとも超えようがない。
だから、今日のカイルとの勝負はいつもよりも気合いが入っていた。
もしかしたらカイルを倒せば、英雄の息子を倒せば少しは報われるのではと期待を寄せたが、結果は敗北に終わった。
私はカイルに勝てなかった。しかも、最後に放ったあの技・・・。

私は、英雄スタンに負けたのだ。
そう考えると途端に自分が惨めに思えてきて、涙が溢れるのを止められなかった。

「うっ・・・く、ひっく・・・!」

何だか、自分はスタンよりも下なのだという事を示されたような気がして、リムルはただ純粋に悔しかったし、どうすれば自分は認めてもらえるのかという先の見えない地獄に、胸が張り裂けてしまいそうだった。

「悔しい、苦しい・・・もう嫌だよぉ、お母さん・・・!」

世間に対して怒り、自分の惨めさに悲しみ、英雄への憎しみを感じているリムルは、もうどうすれば良いのか分からなかった。
やがて船はチェリクへと辿り着くと、客室に置いていた荷物を背負って船を降りる。
そして、とりあえずこの暑い環境の下で修業をしようとさっそく街を出た。


「はああぁぁぁっ!」

襲いかかる数々の魔物を、リムルはただがむしゃらに斬り捨てている。
二十匹、三十匹と、次々と魔物の死体の山が積み上げられていった。
それはどこからどう見ても修業という名の八つ当たりであり、悪く言えば魔物の大量虐殺であった。

もうリムルは何も考えないし、考えたくもなかった。
とにかく体を動かしていないと、言いようのない不安に駆られてしまいそうだった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・まだまだぁ!!」

倒した魔物が六十匹を超えようかという時にリムルは強烈な一撃を横っ腹に受けてしまい、一旦そこで中断せざるを得ない状況に陥ってしまった。
丁度良い木陰と水辺を見つけたのでそこに座りこみ、周りに人や魔物がいない事を確認してから、鎧と上着を脱いで治療をしはじめる。
包帯を巻き終えると辺りはすっかり暗くなっていたので、今日はここらで野宿をしようと腰を浮かし、火をおこして簡単な夕食を作った。

「ごちそうさまでした。・・・さて、と」

夕食を食べ終えたリムルは横に置いてあった剣を取り、スラリと鞘から剣を引き抜いて何もない場所に向けて突き付けた。

「あなた、誰?」

そう言うと、白黒の派手な衣装を身に着けた人物がパチパチと渇いた拍手をしながら夜の闇からすーっと現れた。

「ふふ、素晴らしい。よく私の存在に気付きましたね」
「わざわざ食べ終えるのを待っていたくらいだから、私に危害を加えるつもりは無いんでしょうけど・・・」
「おっと、お見通しでしたか」

確かにサイグローグはリムルが夕食を食べ始めた頃から機を伺っていたが、まさかそこまで見抜かれているとは。
サイグローグは素直に敬服と謝罪の気持ちを込めて、深くお辞儀をした。

「私、名をサイグローグと
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想

i-mobile

TOP TOP
掲示板一覧 掲示板一覧
ゲームリスト ゲームリスト | ゲーム小説掲示板
サイト案内 サイト案内 | 管理人Twitter
HOME HOME