マーリンの家でもあるシドの仕事場に、レイディアントガーデン出身者は集まっていた。いつものことではあるものの、普段と違ってまとめ役のレオンは不在であり、家主であるマーリンも今はいない。
火をつけたタバコをくわえながら、金髪の中年――シドは顔をしかめた。
「それで、レオンの様子はどうなんだ?」
ちろりと長い髪をみつあみにしてまとめた女――エアリスに問うと、彼女は困ったように眉をひそめて息をつく。
「起きないの。クラウドも、何があったのか話してくれなくて……」
言いながら傍ら――金髪の男がたたずむ方へとエアリスとユフィが見ると、シドはわしゃわしゃと頭をかいた。
「ったく、テメェがそれでどうすんだ!? 何があったのかさっさと言え!」
「今は話せない」
「あんだとぉ?」
つっけんどんなクラウドの答えにシドがガタリと椅子から立ち上がる。頭から蒸気でも立ち上らせそうな勢いのシドを慌てて止めつつ、ユフィは「まあまあ」と抑えさせた。
しかし、クラウドは気にとめないかのようにシドを見やり、静かに口を開く。
「話せない」
青の双眸がにらみ合う形になり、エアリスはハラハラと二人を見た。シドはかなり短気な所があり、クラウドは周りを気に掛けないところがある。そのあたりの潤滑油の役目はクラウド側をエアリスが、シド側をレオンが補っていたのだ。それが片側が居ないだけでこの険悪な雰囲気になってしまう――それにレオンの偉大さを感じてしまうエアリスだった。
しばしクラウドを見ていたシドが、唐突に片眉を動かした。
「ユフィ、エアリス。席を外してくれ」
「え!?」
「何でよ!」
唐突な掌返しに、エアリスとユフィが驚く。ユフィの腕をむりやり解かせ、シドはタバコの火をガシガシと灰皿で消す。
「お前らには聞かせたくない内容なんだろうよ。俺がお前らに聞かせても問題ないと判断したら、後で俺から伝える――それで良いだろ?」
シドがそうクラウドを見ると、クラウドはゆるりと頷いた。じっとクラウドを見ていたエアリスは、やがてシドを見て口を開く。
「約束、だからね?」
「おぅ」
しかりとシドが頷くのを見届け、エアリスはユフィの手を引いた。
「ユフィ、行こう」
「納得いかないよぅ、エアリスぅ……」
「大丈夫だから」
しぶしぶといったていのユフィは、あっかんべーをしてからドアを思い切り閉めて行った。
その子供っぽいしぐさにシドが苦笑を洩らす。それを気に留めていない風のクラウドは、改めてシドの前へと歩みを進めると頭を下げた。
「すまない」
それを呆れたように見つつ、シドはドサリと椅子に腰かけなおす。
「なんの。それで、実際何があった?」
真剣味を増したシドの視線を感じつつ、クラウドは目を伏せてから再び目を開いた。
「レオンが、自殺しようとしていた」
「何!?」
言われた内容を理解できず、シドが半ば叫びながらクラウドを見る。身じろぎ一つしないクラウドに落ち着きを取り戻したシドが、冷や汗を一つ流しながら問いなおす。
「確かなのか?」
「この短銃を口に入れて引き金を引いていた」
答えながらクラウドが懐から取り出したのは、回転式の拳銃だった。赤黒い付着物の発する鉄のにおいから、シドはそれがレオンの血と悟って青ざめる。
「それを止めたのか!?」
この『レオンが銃を口で固定して引き金を引いた』という事実からは、レオンが本気で自殺を図った事がうかがい知れる。それをクラウドが止めて見せたというのであれば、それはそれで信じがたい事だった。
こう言っては何だが、やはりクラウドとレオンでは戦場に立っていた年季が違う。クラウドはシドからすればやはり『綺麗な戦士』なのだ。魔法剣士の様な手段を選ばない方法も選択できるレオン相手には、基礎的な能力とは違う部分で勝てない可能性が高い。
そんな疑いを含んだシドの視線を受け、クラウドは少しためらいながら口を開く。
「俺は……アレが夢でなければ、俺は止められなかった」
「どういう事だ?」
その回答は、ある意味つじつまが合うが、現状からはつじつまが合わない答えだった。なにせ、レオンは『気を失っているだけ』であり、外傷は無かったのだ。
「俺は、レオンが引き金を引いて倒れる所でアイツの所に到着したんだ。俺が駆け寄った時には、確かに絨毯に血が流れ切っていて、口から脳天に銃弾が貫通していた」
絶賛混乱中のシドに、クラウドはなおも追い打ちをかけるように話す。
「今のレオンに、その傷は無い」
「エリクサーでも使ったのか!?」
「即死にエリクサーなんて使っても無駄だ。それに、俺はエリクサーを持っていない」
高級品であるエリクサーをクラウドが持っていない、まったく
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