―――そして、彼らに詫びの姿勢をしていたイリアドゥスは頭を上げて、一先ずの話を続ける。
「次はアイネアスたち。お願いするわ」
呼ばれた二人は楚々と立ち上がり、
「まあ、私たちはそこまで深いものではないからね」
「自慢にもならないですけれど…」
別段の皮肉ではないが、アイネアスらは気楽な様子で言う。気楽な調子で舞台の部屋へとさっさと入った。
イリアドゥス、レプキアの力によって産まれた半神は全員が全員、人間のような血の繋がりは無い。
彼らは人間と同様に赤子から生み出され、幼年へ、最終的にはそれぞれ『適した外見年齢』へと成長する。
だから、ベルフェゴルのような老人から、シーノやヴェリシャナのような少年少女の外見年齢まで彼らはその姿を在り続けてきた。
そして、この二人に関しては、強いて端的に言えば、アイネアスとサイキの夫婦は他の組のようなものではなく、『産まれた瞬間から夫婦の半神』として存在している。
「――思えば、サイキとはずっと一緒だったな」
遠い過去、産まれた二人はシェルリアたちが居た世界で育っていった。
これは他の半神にも当てはまる事で、それぞれが持つ神性を高め、理解し、成長するためのものであった。
アイネアスらは更に特別な半神でもあった。レプキアにより、シェルリアたちの居る世界の神とも呼べる3柱の女神『オリジン』の因子を組み込んでいるのだ。
ゆえに彼らは、詩を謳い、その神性を顕現させることが出来る(アイネアスは謳う時のみ、サイキと同化し、謳い・発動が出来る)
そんな中、身体成長、精神成長を完了し、適した年齢外見に至った二人はこの世界のいくつかの問題に憂いを感じていた。
この世界は地上での生活ができず、3つの『塔』にそれぞれ文明を発展させていった事、限られた領域でしか生きられない、まさに狭き箱庭。
『想いを詩に変える力』を持つ『女性』たちの冷遇・不遇さ(3つ『塔』によってそれぞれ大きく異なるが)。
とある塔では『女性』たちの権威が高まりすぎて、種族間の差別が大きく問題になっている事。
限られた大地、種族間の多すぎる問題にアイネアス、サイキらは完全な第三者として憂い、ある決断を決する。
「『彼ら』の望む世界、安寧の大地へと導こう」
かくして、アイネアスとサイキは3つの塔の各地を巡り、『新たな理想郷』へと旅立つ『彼ら』を招いた。
無論、すぐに集ったわけではなかった。まさしく戦いのような日々を越え、二人の元に『彼ら』は集ってくれた。
半神キルレストの助力から箱舟モノマキアで『彼ら』を乗せ、異界の海で二人は詩を紡いだ。
想うは理想郷、願うは安寧に満ちた大地と世界。『彼ら』の願いと二人の想いを謳いあげた。
そして、誕生したのが『ビフロンス』。
「為すべきことを為す――とても難しいのですね」
完成した世界で、二人は心のそこからそう想った。
彼らは夫婦――愛し合うものたちの姿をその中で再認識した。
「――此処からの眺めはやはりいい、な」
ビフロンスを完成させ、町を造り、城を建てた中にある塔の頂きで、アイネアスたちは眺める風景を眺めた。
此処から眺める風景は全てを見渡せるから、二人はお気に入りの場所になっていた。
「はい…創ってよかった……本当に」
彼の言葉にサイキの喜びに震えた涙声に寄り添う。
そうして彼は感慨深く、話を続ける。
「彼らを知り、私は知った。これが愛することなのだと。夫婦というものの意味もそうだ」
最初から対として、夫婦として在った彼らでは気づけなかった真実。
「夫婦…」
「―――改めて、契りを交えようと思ってな」
そういって彼は懐に収めていたものを取出し、彼女に見せる。
「!」
それは指輪だった。金に鈍く光るそれを見せ、アイネアスは照れながら、言葉を続けた。
「愛する夫婦はこうして契りの証を渡す」
指輪を彼女の指にはめ、微笑を浮かべ、満足げに頷いた。
「……嬉しいわ、本当に」
「ああ。そうだと嬉しい」
他愛ない会話を交え、しばらく沈黙が包んだ。
そして、アイネアスは口火を切る。
「サイキ。実は、話したいことが他にもある」
「はい、何でしょうか……?」
口火を切った彼の表情は先の人の温かみに満ちた穏やかなものだったのが、今ある彼は冷徹のそれだった。
威圧すら漂う雰囲気にわずかにサイキは気押される。
その様子に小さく苦笑を浮かべつつ、話を続けた。
「ここを創って、ここでの日々を過ごしてきてずっと思い続けたことだ。―――この温もりは元居た世界の情勢では味わえないものだ。
それどころか、こうして結ばれる意味すら奪われてしまう―――此処へ集ったものたちの為にも、救い出
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