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KH 1-06

 金髪金目。浅黒い肌にその髪と目はよく目立った。
 闇の中にいても十二分な存在感を放つ。その強い覇気を見せつけられてソラは納得した。
 ハートレスの王。闇の王。この街の雰囲気を最も強く吸い込んだ――――魔的なまでに王者。

「……王様……直々に?ここまで?」

「我が衛兵を蹴散らしたんだ。それなりのもてなしをせねばなるまい。――――なぁ?」

 闇の王が階段を降りる。左半身を隠す外衣がゆらゆらと揺らめき、露出していた右腕を無造作に掲げた。
 掌から何かが吐き出された。
 それは、一本の杖だった。特別な目立つ装飾は見られない。簡素で――――それ故に、扱いやすさと攻撃能力を保証した打撃武器だ。

「……こいつは俺に任せて!」

 身を翻し、ソラは闇の王にキーブレードを向けた。横目でちらりとセキを見る。

「待てよ。こっちの黒い奴、お前の追いかけているやつだろ。それを――――」

「セキにあいつの相手はできないよ。そんなことさせられない。おまえ、あいつが出てきた時からさ……震えてるだろ」

 セキは片腕を抱く。震えている。すぐ近くに炎がある。寒いわけではない。

「……すまない」

「こわがることは良いことだよ。心が健康な証拠だ…………って、前に友だちが言ってたんだ」

「心が……」

「ヒスイ、ちゃんと取り返せよ」

「……わかった」

「まったく……薄情だとは思わないのかな、君は」

 杖を携え、闇の王は階段を降りてくる。階段を打つ靴音が心臓の鼓動のように場を満たしている。
 ソラはキーブレードを握り、半身後退した。

「おもうもんか……俺が行けって言ったんだぞ」

「違いない。相違ない。矛盾ない。――――では、光の勇者に今一度問おう。この私を討ち倒し、その手に勝利を掴む自信はありや?」

「そんなことはわからない……!」

「ほう」

「それでも!やらなきゃいけないんだ……約束を守る為に」

「約束……てめぇとアレにその必然が?ねぇだろ、んなもん」

「確かに、俺はセキのこともビビのこともまだよく知らないよ。ヒスイとなんか話してさえいない。
 ――――でもさ。ヒツゼンって、なんだ?」

「僕に問うか。なかなか器が大きいな、光の勇者は。では、答えてあげよう。
 それは見返り……欲望と言い換えてもいい。キミになにかプラスはあるのか?」

「セキ達のつながりを取り戻せる。おまえに取られた全てをさ」

「つながり。絆。なるほど、実に光の勇者らしい。さながらおまえはこの因果の鎖、その中心のようだ」

「……は……?」

「それは世界を支える一本の大樹、幾重もの因果の鎖を編みあわせるそれは、蜘蛛の巣のようだな。…………勇者、おまえは蜘蛛か?」

「――――」

 ソラは絶句した。
 会話にならない――――いや。それ以上に。

 この一連の会話の中で、ハザードは何度一人称を変えただろう。まるで台本を朗読する役者のようだ。一小節ごと、息づく度にハザードは形を変えていく。見たとおりの姿かたちとは違う。伝わってくる雰囲気。オーラとでも言えばいいのか。心の色が定まらないのだ。
 さながらそれは、万華鏡のように、コロコロと回り、巡り、変化を続ける。
 得体の知れない異質感。それが爆発する。

 なんだ?いったい、今自分の目の前にいるコレは――――?

「…………俺の通り名を思い出してくれたか?
 闇の王、
 ハートレスの王、
 亡者の皇帝、
 禁断の果実、
 ワールドドミネータ、
 秘密の名、
 混沌なる者、
 吸血鬼…………さて、どれを聞いたかは知らないが、つまり私はこういうものだ。
 ――――無貌の王。余はその名を最も好ましく思う」

 無貌の王。
 貌の無い王。
 それは、すなわち――――誰かであり、誰でもない。ということ。しかし王である。
 それは、つまり。
 存在しないもの。存在しない王。
 ありえない。しかしどうして、その無慈悲で不条理な名乗り上げには説得力がある。

「ハザードとかいう『通称』も正直気に入らん。わたしを災害かなにかのように。――――こんな美少女を相手に、なぁ?」

 ハザードの、【無貌の王】の手がソラに触れた。口から手を突っ込まれて心臓を鷲掴みにされたような、そんな圧力が全身を押しつぶす。
 【無貌の王】は不敵に笑った。ソラの頬から手を離す。

「恐れ入る。さすが光の世界に名を馳せるキーブレードの勇者というところか。これだけの『猛毒』を浴びて、ピンピンしている」

「はっ……!?」

 猛毒?
 浴びた。ということは……どういうことだ。
 空気に混ぜて吸わせたということか?それとも触れたのは接触感染が目的なのか?
 いずれにせよ、既に浴びて――――しかし、ソラは無事だ。

「強く、そして歪みのないココロをしている。実に素
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