何度目かの金属音と火花が闇に溶ける。
ソラはキーブレードを両手に握り、肩を上下させていた。
【無貌の王】が軽いステップで後退する。無造作に振るう【無貌の王】のキーブレードはヒュンヒュンと鋭く風を切り裂いた。
「――――どうしたのかなぁ、光の勇者。俺を倒し、勝利を掴もうとはしないのかい」
「うるさい……!」
「余裕ってもんがないねぇ……それじゃあ……少しサービスをしてあげようか。んん?」
やはり無造作に、【無貌の王】はキーブレードを振り回した。空間にドス黒い鍵穴が現れ、【無貌の王】はそれを回す。
すると、上空にぽっかりと黒闇の大穴がねじあけられた。
その奥から見えるのは無数の眼光。無数の闇。無数のハートレス。
「慈悲だ。適当に落ちてきた分を倒し切れば見逃してやろう。我の前から蜘蛛の子のように散るが良い」
「ふざけるなっ……!」
「その勇猛さ、実に良い。ああ、素晴らしい。勇者。貴様のその強い心は私の胸にも感じ入るところがある。
お前は最高にして至上のマリオネットだ。――――さぁ、存分に踊るがいい、道化。動かぬのなら、まずはその靴に火を付けようか?」
にたりと笑う【無貌の王】。その前で、上空の大穴からひとつ、またひとつと黒い塊が落ちてくる。手足が生え、闇に映える眼光が一斉にソラを突き刺した。
歯噛みするソラをよそに【無貌の王】は歌う。バラード調の落ち着いた歌。指揮棒のようにキーブレードを振るい、それに応じるように周辺には音符が踊った。
――――なるほど。ソラは迫るハートレスの軍団に身じろぎしながら納得した。
【無貌の王】は戦いの場になど、出てきてはいないのだ。最初から本人もそう言っていたように。
だからこそ、その言葉には緩い。戦っているにもかかわらず、その挙動はどこかへらっとしている。
さながらここは劇場だ。役者が踊り、歌い、演じ、表現する場所。【無貌の王】にとって、この場はまさしく舞台なのだ。
ソラは【無貌の王】が演出する舞台の端役の一人に過ぎない。操り人形《マリオネット》と揶揄した理由はそれだ。それほどに――――眼中にない。
【無貌の王】は奇妙なほど、ソラという存在を――――勇者と特別視しながらも尚――――無造作なもの、差し障りないものと見なしている。
まるで、ソラ以外の勇者を――――それも、ソラよりも強いキーブレードの勇者を知っているかのような振る舞い。
なら、とソラは左拳を解く。俄然負けられない。ソラのこのキーブレードは、同時にリクのものでもあったもの。このキーブレードを蔑まれることは、ふたり同時に馬鹿にされているのと同義だった。
【無貌の王】を打ち倒す理由がまた一つ増えた。
そしてこの逆境。ソラはヘトヘトで、敵はわんさか。
――――しのごの言ってはいられない。
ありったけをぶちまける。まだ終わるわけにはいかない。
なぜなら――――切り札は未だ、この手の中に。
「力を……貸してくれ……!」
左手に握るのは、サラサ貝のお守りだ。しかしカイリから預かったものとは違う。この世界に来た際、あの黒ずくめの少女から渡された品だ。
出来るはずだ。そう念じ入る。彼女が渡したのはこれら二品。であるならば。
これをキーチェーンに見立て――――どうだ?
白いキーブレードが、ソラの手に収まった――――やった!
「へへっ……!」
右手のキーブレードを肩に置き、左手の白いキーブレードをまっすぐ伸ばす。
にじり寄るハートレス達の動きが止まった。このキーブレードの意味はよく理解しているのだ。
さぁ、反撃だ――――!
重く、鋭く踏み込んだ。魔法力との組み合わせで体を一気に加速。すれ違いざまに一番近いハートレスに一太刀を浴びせた。
周囲のハートレスは未だ反応できていない。キーブレードの柄からキーチェーンに握りなおし、二段目の踏み込み。ソニックの領域にまで達するソラのスピードを捉えきれず、ハートレスはキーブレードに切り裂かれ、黒い煙に散っていく。
瞬く間に【無貌の王】との距離が縮む。未だ歌い指揮する【無貌の王】まで5メートルを切った。
「いくぞ――――!」
二条のソニックが【無貌の王】の両肩を打った。
【無貌の王】の指揮と歌がぴたりと止む。キーブレードをがくりと落とし、二太刀を同時に見舞ったソラをじろりと見やった。
「急に元気になったものね。そのトゥー・ハンド……気に入らない。
それにわたしの情けに泥を塗るなんて……あなた、ちょっと礼儀ってものを知るべきなんじゃないの?」
「なにが礼儀だ……!人の心を弄んで!」
「――――弁えよ。小癪なだけの小童が、畏れ多くもこの我に礼を説くなどと!」
「偉そうにばかりして!それでも王様かよ」
「尊大、傲慢、い
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