ビフロンスの城下町を中心に例えると北にアイネアスの城、南に森が広がっている。
昼間の陽光が木漏れ日となって森に彩をつけている。
森の奥に隠されたようにある小さな湖が広がっており、そこにその風景を肴に数人の男女がシートを広げて小さなパーティをしていた。
「こういうのは初めて…だな」
そのうちの一人、ハオスがやや照れた様子で呟いた。このパーティの主賓は彼であった。
詰まる所の彼の歓迎会という風変わりなものだった。先の奪還戦、激しい戦闘とは別で死闘を繰り広げ、死した二人――フェイトとカナリア――の融合、変異した存在。
そんな彼を最初は戸惑った仲間であった睦月たちだったが、奪還戦を終え、小さな暇を得た今、ちゃんとしたものを、と睦月らが企画して、開催したのだ。
「なーに、今日はお前のためのパーティだ。緊張しなくていいさ」
朗らかなに笑った睦月がジュースの注いだ紙コップを片手に続けて言った。
「親睦会みたいなものだ。愉しめばいい」
参加したアビス、皐月に加えて、少ない人数で祝うのも寂しいものだとゼロボロス、シンメイ、半神シュテンがやや強引に参加してきたのだ。
しかし、勝手に自前で酒を用意して、お互いに楽しく宴を満喫し始める。
「なあ、ハオス」
「はい、何ですか?」
宴の最中、睦月が声をかけてきた。その表情は真剣みのある引き締めた表情で何か大切な話があるのではないかと、朗らかに笑んで見せたハオスも真面目な姿勢をとる。
「フェイトとカナリアは、俺たちに何か言ってなかったか? 覚えていたら、いいんだけど」
「……いえ」
ハオスの記憶は二人の記憶がごちゃ混ぜに溶け合い、曖昧なものになっている。明確な記憶は睦月、皐月、アビス、永遠城にいるジェミニたちくらいのみで、細かな事は薄れていた。
だが、そんな曖昧な記憶にたった一つ、刻まれた言葉があった。
「『手紙』……」
「手紙?」
「はい。フェイトさんが何かを書いて、それをジェミニ渡した――その一部分しか思い出せないんですが、確かに手紙でした」
「そうか……悪ぃな、ささ呑め呑め」
睦月は短く自身の話題を区切り、ハオスに自身が用意した蜂蜜酒を新しい紙コップに注ぎ、手渡す。
自身は自分の手にある蜂蜜酒入り紙コップを一息に飲みながら、その手紙が何を意味するのか黙して思考を廻る。
既に永遠城は現在、ジェミニの回復や決戦の折には巨大で邪魔になるだけという観点でタルタロスに駐留させている。
アビスが既に永遠城との連絡を繋ぎ、ジェミニとの通信に成功している事を先日知った。
「…うぷ。アビス、ちょっといいか?」
「なに?」
皐月と会話していた彼女は不思議そうに振り向いた。
「後でジェミニに通信したいんだ。話す事ができた」
「ええ、構わないけど……どうかしたの?」
「何も。さ、お前も飲んでみろよ、蜂蜜酒〜。うまいぞ〜」
睦月がけらけらと笑い、アビスは呆れて追求をやめる。そんな二人のやり取りをハオスはじっと見据え、皐月も苦笑いを浮かべながら見ていた。
一方の押しかけ参加した彼らはシュテンが酔いに任せて愉快に踊りや歌を披露して、ゼロボロスとシンメイも酒を片手に静かな会話を交えていた。
「こういうのも悪くないな」
「そうじゃの」
二人して酒を酌み交わす事は竜泉郷でもしていた事であった。今回は押しかけながらも睦月らと交えての多数の宴は始めてであった。
ふと、シンメイは杯に満ちた酒に自身の表情が映るのを見る。どうも何か考え込んでいる様子であると客観し、ゼロボロスを見やる。
その横顔の視線は賑やかに振舞うシュテンたちへ向かれて、小さく朗らかに笑んでいた。
「……のう、ゼロボロス」
「なんだ?」
普段の声音と違った雰囲気に怪訝に振り向く彼にシンメイは言葉を続ける。
「ヴァイロンの事、どうするつもりじゃ」
その問いかけを聞いたゼロボロスは僅かに表情を曇らせ、
「どう、というと」
「今回の事件、偶然にもおぬしにとっては奇異な縁となったじゃろう。
もし……この事件が終わっておぬし等はどうするつもり、ということじゃ」
「ふむ」
手に持つ杯の酒を軽く飲み干し、一つため息を零し、ハッキリとシンメイへ答えた。
「知らんな」
「……やれやれじゃ、心配してやったわらわが馬鹿じゃあないか」
苦笑を浮かべ、自分の杯の酒を飲み込んで、けらけらと笑った。
その様子を見たゼロボロスも笑みをつくり、酒を注ぎ込んで、言う。
「あの時、俺は死ぬ事に躊躇は無かった。攻撃が届く寸前……想っちまった。……『お前を独りにしてしまう』ってな」
「おぬし……」
「そう―――俺は、アンタと生きていきたい。そう、想うようになった。だから、アイ
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