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第T話  白濁セシ存在

気がつけば、俺は白い部屋の中にいた、何処までも白く、清浄な空間に。

取り合えずその部屋を歩き回ってみると、端の方に黒いモノがあるのを見つける。

近づいてそのモノを観察すると、それは一本の剣のようなモノだった。

柄には鋭く尖った石突のような物がついていて、持ち手は長く、両手で持っても充分余るほどだ。

鍔に当たるところは無くてそのまま刀身となっている。刀身は先端から大きく湾曲していて幅もかなりある。刃は片刃で、見るからに切れ味が良さそうだ。

よく見ると剣の背の部分に持ち手のような物が有り、相手の攻撃を受けるときにその部分を持つようになっているようだ。

不意に、それに手を伸ばして持ち上げてみた。自分でも何故かは分からない。

見た目に反してそれは軽く、妙に手に馴染んだ。そして、自然に剣を振るい始めた。

左から右へと剣を振るい、その動きに逆らわずに今度は下から上へと跳ね上げて踊るように、無心に振った。

振るい、振るい、振るい、振るい、振るい、振るい、振るい……………倒れた。

だって、滅茶苦茶疲れたんだもん……

体勢を直し、一息突きながら俺は改めて周りを見渡す。

よく考えれば、なぜ自分がこの場所にいるのかまったく分からない。

どうしているのか、思いだそうとするが、








「あれ、何で思い出せないんだ?ってか、俺は………誰なんだ」

何も記憶が無いのだ。綺麗さっぱり、塵埃の欠片のような記憶ですら。

気がついてからは全身を寒気と恐怖が襲う。

嘗ての自分が分からない、つまりは今の人格が本物の【自分】なのかが分からないのだ。

恐ろしかった、只ひたすらに恐ろしかった。

もし、次の瞬間にも本来の人格が戻って来て今の人格が消えたら?

今の人格が本来の人格を喰い潰して生まれた人格だとしたら?

暗い考えが頭を埋めつくし、呼吸が速くなってゆく。

過呼吸による息苦しさのためなのか、徐々に白い部屋が黒く塗り潰されて




















俺はその黒【やみ】に呑み込まれた。
12/07/05 08:46更新 / イクサリオン改め、ポスケ

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