第6章『森を駆ける少女』 3
レイノス達は、雄叫びのする方向へと歩いていく。
近づくにつれ魔物の声はどんどん大きくなっていく。
そして…たどり着いた。
「こいつは…グラシャラボラス。この辺りには生息していないはずの魔物だ」
セネリオが魔物の正体を見抜き、本来はここにいるはずのない魔物だと一同に説明する。
「てことはやっぱこいつもフォルクスの…」
「ああ、間違いないだろう」
レイノスの言葉にセネリオは頷き、肯定する。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
魔物――グラシャラボラスは、レイノス達の姿を見つけると、一際大きな絶叫をあげて威嚇してくる。
「来るみたいだな…それじゃ戦闘と行こうぜ!ストロングバレット!」
ミステリアスが強力な弾丸をぶつける。
銃撃の直撃を受けたグラシャラボラスだが、まるで効いていないかのように微動だにする様子はない。
「掌底破!」
「崩襲撃!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「うわッ!」
「きゃあ!」
ミステリアスに続いて攻撃を仕掛けたクノンとアルセリアだったが、やはりグラシャラボラスは微動だにせず、雄叫びと共に二人に向けて突進を仕掛けてきた。
「ち……レイノス、この魔物は物理攻撃に強い。俺とお前は今回は後ろに下がるぞ。ミステリアスも今回は譜術を中心に頼む」
「ああ、分かった!ウインドスラッシュ!」
レイノスがさっそく譜術を放つ。
が、これまた効いている様子はない。
「…話は最後まで聞け。こいつは闇と風への耐性を持っているから、今の譜術は大したダメージはない」
「わ、悪かったよ!ファイアボール!」
気を取り直して別の譜術を発動させるレイノス。
「ストーンザッパー!」
「ロックブレイク!」
セネリオとミステリアスが続けて譜術を放ち、二人の術により地のFOFが発生する。
「それ、もらい♪」
――FOF変化――
「連牙弾!!」
「グルゥ…」
高速で放たれるクノンの拳。
FOF技による強力な一撃に物理攻撃に強いグラシャラボラスもうめき声を出し怯んだ様子を見せる。
「もう一発だ!ファイアボール!」
その間にレイノスは再び詠唱を終えて譜術を放つ。
先ほど放ったファイアボールと合わせて今度は火のFOFが出来上がる。
――FOF変化――
「爆砕炎舞!!」
火のFOFに飛び込んだアルセリアが、強力な一撃を畳み込んだ。
「グギャアアアア…」
続けて放たれた強力な一撃に悲鳴を上げるグラシャラボラス。
「ち…なかなかタフそうだ。こいつは長引きそうだ…」
敵のタフさに舌打ちしつつ、セネリオは再び譜術を放つために詠唱を開始した。
「くそ、リンがいれば…」
譜術を中心に戦う幼馴染がいないことにレイノスもまた悪態をつくが、いないものは仕方がない。
ともかく目の前の魔物を倒す為、レイノスもまた譜術の詠唱を始めた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ファーストエイド!」
リンは怪我をしている男性に治癒術をかける。
「ファーストエイド!」
続いて隣にいる女性にも治癒術をかける。
そのそばでは、幼い少女とチーグルが心配そうにその二人の男女を見つめる。
少女の名はシノン・エルメス。チーグルの名はハノン。
二人の男女はシノンの両親だ。
「…ふう、これで大丈夫。ひどい怪我だったから動くのはまだ無理だけど」
「ありがとう!リン!」
シノンはリンの身体に飛びつき、抱きしめる。
リンはそんなシノンの頭を撫でてやる。
「お嬢ちゃん、助かったワイ」
「どうもありがとうございました。私達のパートナーにも、お願いできるかしら」
シノンの両親もリンに対してそれぞれ礼を言う。
シノンの母親に促されて、リンは二人がパートナーとする魔物にも治癒術を掛ける。
治癒した瞬間に襲ってこないだろうかと内心ヒヤヒヤしたものだが、そんなことは全くなく、2匹の魔物は傷が癒えるとそれぞれのパートナーに心配そうに駆け寄る。
シノンの父親はそんな近寄ってきたパートナーの魔物の頭を撫でてやりながら、立ち上がろうとするが…
「ぐ!?」
「パパ!」
「ダメです動いちゃ!酷い怪我なんですから安静にしてないと!」
痛みに顔を歪ませて倒れる父親にシノンが駆け寄る。
そしてリンもそんな彼を介抱しつつ動いては駄目だと注意を促す。
「じゃが…ワイが、この森を守ってやらんと!こんなところで、じっとしとくわけには…グッ!」
「それでもだめです!」
なおも立ち上がろうとするシノンの父親に、リンは断固として動いてはダメだと言い張る。
「あの魔物は私たちが倒します。だから今は休んでてください!」
真剣な表情でリンはそう言い切る。
そんなリンの瞳をしばらくじっと見つめたシノンの父親は…
「外から来たモンに頼るんは気が引けるが…あの魔物の事、お願いしてもいいか?」
「はい!任せてください!」
―グギャアアアアア!―
魔物の雄叫びは止まない。
レイノス達と別れてから結構な時間が経過しているが、未だに倒せていない様子を見ると苦戦しているのかもしれない。
「私も行ってきます!絶対に安静にしていてくださいね!」
そういってリンはチーグルの巣穴を脱出する。
そしてレイノス達の所へ向かおうとして…
「待って!」
少女の声に呼び止められた。
「シノンちゃん」
「私とハノンも連れて行って!」
「みゅみゅぅ!」
声をかけてきたのは、シノンであった。
シノンは自分も戦うと言い、ハノンもそれに応えるように威勢のいい声を出す。
「で、でも…」
「大丈夫、足手まといにはならないから!私達だって、この森で育ってきたんだもん!パパ達に代わって、退治してみせるんだから!」
「みゅ!」
「…分かった。一緒に行きましょう!」
こうしてシノンとハノンを伴ったリンは、レイノス達のもとへ急いだ。
スキット「魔獣使いとしての矜持」
シノン「…じゃあ、やっぱりあの魔物、パパ達が言ってたように、操られてたんだ」
リン「ええ、たぶんね。フォルクスって奴が放った魔物だと思うわ」
シノン「許せないよ。魔物を操って従わせるなんて」
ハノン「みゅみゅ!」
リン「私は魔獣使いってよく知らないんだけど…シノンちゃんのお父さんやお母さんとパートナーの魔物達に、強い信頼と絆を感じたわ。あれが…魔獣使いなのね」
シノン「そうだよ!私達魔獣使いとパートナーの魔物は、お互いを強く認め合ってる大切な相棒なの」
ハノン「みゅう!」
リン「フォルクスの操る魔物とは全然違うのね…」
シノン「当たり前だよ!魔物を無理やり従わせるなんて、酷いよ…」
近づくにつれ魔物の声はどんどん大きくなっていく。
そして…たどり着いた。
「こいつは…グラシャラボラス。この辺りには生息していないはずの魔物だ」
セネリオが魔物の正体を見抜き、本来はここにいるはずのない魔物だと一同に説明する。
「てことはやっぱこいつもフォルクスの…」
「ああ、間違いないだろう」
レイノスの言葉にセネリオは頷き、肯定する。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
魔物――グラシャラボラスは、レイノス達の姿を見つけると、一際大きな絶叫をあげて威嚇してくる。
「来るみたいだな…それじゃ戦闘と行こうぜ!ストロングバレット!」
ミステリアスが強力な弾丸をぶつける。
銃撃の直撃を受けたグラシャラボラスだが、まるで効いていないかのように微動だにする様子はない。
「掌底破!」
「崩襲撃!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「うわッ!」
「きゃあ!」
ミステリアスに続いて攻撃を仕掛けたクノンとアルセリアだったが、やはりグラシャラボラスは微動だにせず、雄叫びと共に二人に向けて突進を仕掛けてきた。
「ち……レイノス、この魔物は物理攻撃に強い。俺とお前は今回は後ろに下がるぞ。ミステリアスも今回は譜術を中心に頼む」
「ああ、分かった!ウインドスラッシュ!」
レイノスがさっそく譜術を放つ。
が、これまた効いている様子はない。
「…話は最後まで聞け。こいつは闇と風への耐性を持っているから、今の譜術は大したダメージはない」
「わ、悪かったよ!ファイアボール!」
気を取り直して別の譜術を発動させるレイノス。
「ストーンザッパー!」
「ロックブレイク!」
セネリオとミステリアスが続けて譜術を放ち、二人の術により地のFOFが発生する。
「それ、もらい♪」
――FOF変化――
「連牙弾!!」
「グルゥ…」
高速で放たれるクノンの拳。
FOF技による強力な一撃に物理攻撃に強いグラシャラボラスもうめき声を出し怯んだ様子を見せる。
「もう一発だ!ファイアボール!」
その間にレイノスは再び詠唱を終えて譜術を放つ。
先ほど放ったファイアボールと合わせて今度は火のFOFが出来上がる。
――FOF変化――
「爆砕炎舞!!」
火のFOFに飛び込んだアルセリアが、強力な一撃を畳み込んだ。
「グギャアアアア…」
続けて放たれた強力な一撃に悲鳴を上げるグラシャラボラス。
「ち…なかなかタフそうだ。こいつは長引きそうだ…」
敵のタフさに舌打ちしつつ、セネリオは再び譜術を放つために詠唱を開始した。
「くそ、リンがいれば…」
譜術を中心に戦う幼馴染がいないことにレイノスもまた悪態をつくが、いないものは仕方がない。
ともかく目の前の魔物を倒す為、レイノスもまた譜術の詠唱を始めた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ファーストエイド!」
リンは怪我をしている男性に治癒術をかける。
「ファーストエイド!」
続いて隣にいる女性にも治癒術をかける。
そのそばでは、幼い少女とチーグルが心配そうにその二人の男女を見つめる。
少女の名はシノン・エルメス。チーグルの名はハノン。
二人の男女はシノンの両親だ。
「…ふう、これで大丈夫。ひどい怪我だったから動くのはまだ無理だけど」
「ありがとう!リン!」
シノンはリンの身体に飛びつき、抱きしめる。
リンはそんなシノンの頭を撫でてやる。
「お嬢ちゃん、助かったワイ」
「どうもありがとうございました。私達のパートナーにも、お願いできるかしら」
シノンの両親もリンに対してそれぞれ礼を言う。
シノンの母親に促されて、リンは二人がパートナーとする魔物にも治癒術を掛ける。
治癒した瞬間に襲ってこないだろうかと内心ヒヤヒヤしたものだが、そんなことは全くなく、2匹の魔物は傷が癒えるとそれぞれのパートナーに心配そうに駆け寄る。
シノンの父親はそんな近寄ってきたパートナーの魔物の頭を撫でてやりながら、立ち上がろうとするが…
「ぐ!?」
「パパ!」
「ダメです動いちゃ!酷い怪我なんですから安静にしてないと!」
痛みに顔を歪ませて倒れる父親にシノンが駆け寄る。
そしてリンもそんな彼を介抱しつつ動いては駄目だと注意を促す。
「じゃが…ワイが、この森を守ってやらんと!こんなところで、じっとしとくわけには…グッ!」
「それでもだめです!」
なおも立ち上がろうとするシノンの父親に、リンは断固として動いてはダメだと言い張る。
「あの魔物は私たちが倒します。だから今は休んでてください!」
真剣な表情でリンはそう言い切る。
そんなリンの瞳をしばらくじっと見つめたシノンの父親は…
「外から来たモンに頼るんは気が引けるが…あの魔物の事、お願いしてもいいか?」
「はい!任せてください!」
―グギャアアアアア!―
魔物の雄叫びは止まない。
レイノス達と別れてから結構な時間が経過しているが、未だに倒せていない様子を見ると苦戦しているのかもしれない。
「私も行ってきます!絶対に安静にしていてくださいね!」
そういってリンはチーグルの巣穴を脱出する。
そしてレイノス達の所へ向かおうとして…
「待って!」
少女の声に呼び止められた。
「シノンちゃん」
「私とハノンも連れて行って!」
「みゅみゅぅ!」
声をかけてきたのは、シノンであった。
シノンは自分も戦うと言い、ハノンもそれに応えるように威勢のいい声を出す。
「で、でも…」
「大丈夫、足手まといにはならないから!私達だって、この森で育ってきたんだもん!パパ達に代わって、退治してみせるんだから!」
「みゅ!」
「…分かった。一緒に行きましょう!」
こうしてシノンとハノンを伴ったリンは、レイノス達のもとへ急いだ。
スキット「魔獣使いとしての矜持」
シノン「…じゃあ、やっぱりあの魔物、パパ達が言ってたように、操られてたんだ」
リン「ええ、たぶんね。フォルクスって奴が放った魔物だと思うわ」
シノン「許せないよ。魔物を操って従わせるなんて」
ハノン「みゅみゅ!」
リン「私は魔獣使いってよく知らないんだけど…シノンちゃんのお父さんやお母さんとパートナーの魔物達に、強い信頼と絆を感じたわ。あれが…魔獣使いなのね」
シノン「そうだよ!私達魔獣使いとパートナーの魔物は、お互いを強く認め合ってる大切な相棒なの」
ハノン「みゅう!」
リン「フォルクスの操る魔物とは全然違うのね…」
シノン「当たり前だよ!魔物を無理やり従わせるなんて、酷いよ…」