第7章『救出大決戦』 8
「みゅみゅ!」
ハノンの強力な体当たり、ハノンアタックがシノン目がけて放たれる。
シノンはそれを、バックステップで回避する。
「ハノン…どうしても退いてくれないんだね」
シノンは、相変わらずうつろな目をしたハノンを見据えて言う。
先ほどから攻撃をかわしながら呼びかけ続けているが、ハノンの耳に届いている様子はなかった。
言葉で伝えても届かないのなら、自分の取るべき道は…
「分かった、私も覚悟を決めるよハノン。あなたが襲ってくるのをやめないなら…私は全力であなたを迎え撃つ」
そう言うとシノンは、チャクラムを構える。
「レイトラスト!」
放たれたチャクラムは、一直線にハノンのところへ向かっていき、
「孤月閃!」
チャクラムは、突如現れた人物の攻撃により弾かれ、シノンのもとへ戻っていった。
「せ、セリア!?」
「シノンさん、ハノンさん、どうしてお二人が戦っているんですか!?」
突然のアルセリアの乱入に驚きの声をあげるシノン。
一方のアルセリアは、どうして二人が戦っているのかとシノンを問い詰める。
「セリア、横に跳んで!」
「え!?」
「みゅみゅぅぅぅ!」
シノンの突然の指示に戸惑いの様子を見せるアルセリアだったが、突如こちらに炎を噴いてきたハノンを見て、あわてて回避に努める。
「は、ハノンさん!?」
「見ての通りだよ、ハノンはあのフォルクスって奴に操られちゃったの」
シノンはセリアに事情を説明すると、再びチャクラムを構えた。
「だからどいて。ハノンは私が全力で止めるから、セリアは向こうにいるクノンと一緒にフォルクスを倒してほしいの」
「シノンさん…」
シノンの言葉に、セリアはどうするべきか迷ったように逡巡したような様子を見せる。
「…あなたとハノンさんは、家族みたいなものなんでしょう?それなのに、どうして戦わないといけないんですか…!私は、私は…そんなの認めたくないです!」
「家族だって喧嘩くらいはするよ。それに、ハノンは家族である前に、私のパートナーだから…だからこそ、私自身の手で止めないといけないの。それが…魔獣使いとしての責任」
そういうとシノンはにこっと笑い、続けて言った。
「心配しないでセリア。戦うっていっても、あくまで止めるだけだから。これはハノンとハノンのパートナーの私の問題だから…セリアはハノンをもとに戻させるためにフォルクスを倒してよ」
「シノンさん…分かりました」
セリアは踵を返すと、フォルクスと戦うクノンのもとへと向かった。
それを見送ったシノンは、改めてハノンと対峙する。
「さあハノン、戦おっか」
「みゅう…」
「へへ、こうして戦うのは2年ぶりだね」
2年前、シノンは魔獣使いとしてのパートナーと認めてもらうため、ハノンと戦った。
まさかこうして、再び戦う時が来るとは思っても見なかった。
「あなたが全力で向かってくるなら、私も全力でそれに応える!勝負だよ、ハノン!」
「魔神拳!」
拳により地面に発生した衝撃破が、フォルクス目がけて襲ってくる。
フォルクスはそれをジャンプで回避すると、続けて詠唱を始めた。
「ストーンブラスト!」
フォルクスによって放たれた譜術により小粒のような石がクノンの頭上に降ってくるが、クノンはそれを難なく回避して見せる。
いや、回避というのは正確ではないかもしれない。
クノンはフォルクスに接近していた。
一瞬で間合いを詰められたフォルクスは、術発動直後の硬直により動けず、
「牙狼連濤打ァ!」
「がはああっ!」
クノンの攻撃を、もろに食らってしまった。
「くそ、やりますね」
「ハン、やっぱり六神将なんて絵空事だったんじゃなイ?漆黒の方がよっぽど強いヨ!」
「あ、あんな封印術で弱体化した裏切り者に、私が劣っているというのですか!?」
セネリオより格下と言われ、憤然とするフォルクス。
「クノンさん!」
と、そこへアルセリアが現れた。
「あれ、なんでここに?お坊ちゃまと一緒に先に行ったんジャなかったッケ?」
」それは…そ、それより、事情はシノンさんから聞きました!シノンさんに頼まれて
助っ人に来ました!」
「そっか、サンキュー♪…さ、これで2対1だよ、フォルクスクン♪」
「ち、さすがにこれは状況がまずいですね…」
フォルクスは懐から何かを取り出すと、それを地面に向けて投げつけた。
その瞬間、周囲は煙幕に包まれなにも見えなくなる。
「くそ、煙幕弾か!」
「な、なにも見えません!」
やがて煙幕が晴れると、そこにはフォルクスの姿はなかった。
「みゅみゅううううう!」
ハノンの口から発せられた炎を、シノンは回避する。
「焔!」
炎を纏ったナイフが、ハノン目がけて放たれるが、これもまたハノンは回避する。
「ノクターナルライト!」
続けて三本のナイフが、ハノン目がけて放たれた。
「みゅう!」
二本までは回避に成功したが三本目を回避しきれず、ハノンの身体がナイフの攻撃により転がる。
「レイトラスト!」
さらに続くチャクラムの攻撃。
しかし…
「みゅみゅっみゅ!」
「な!?」
体勢を整えたハノンは、ハノンアタックでチャクラムごとシノンに向けて攻撃を仕掛けた。
「きゃああああ!」
ハノンアタックの直撃を受けたシノンは吹き飛ばされるが、
「えいっ!」
「みゅっ!?」
吹き飛ばされつつも、ナイフを振って組み付いていたハノンを引き離す。
「へへ、やっぱりハノンは強いね」
「みゅう」
「…だけど、今のハノンじゃ私には勝てないよ。いつものハノンの方が…もっともっと強い」
今のハノンは、フォルクスに操られるままにただ黙々と戦うロボットみたいなものだった。
そんなハノンを相手に、シノンは負ける気などさらさらなかった。
「氷樹!」
氷をまとったナイフ。
かつてグラシャラボラス戦で敵の動きを止めたそれは、ハノンの動きを止める。
「みゅ、みゅ!」
ハノンは必死で動こうとするが、身体は動かない。
「もう一回だよ!氷樹!」
続けて放たれた氷のナイフに、ハノンの身体は完全に動かなくなり、もはや抵抗すら出来ない状態となった。
「これで終わりだよ、ハノン…今度は、操られてない状態で、本当の全力の勝負をしようね!」
――FOF変化――
「朧氷樹!」
「シノンさん!」
「二人とも、無事?」
アルセリアとクノンがやってきたのは、ちょうど決着がついた直後だった。
「セリア、クノン!フォルクスは!?」
「…すみません、シノンさん。煙幕弾で逃げられてしまいました」
「そんな…」
「みゅ……」
「ハノン!」
起き上がってきたハノンに、シノンは近づく。
「みゅううううう!」
が、そんなシノンにハノンは炎を浴びせてきて、シノンはそれを慌てて回避する。
一方のハノンは、炎を吐くと再び倒れた。
「ハノン…まだ苦しんでるんだね」
シノンは、倒れたハノンに、ゆっくりと歩いて近づいていく。
そして、思いっきり抱きしめた。
「みゅう!?」
「ハノン…もう苦しまないで。あなたに望まない戦いを強いる悪い人は、もういないんだから」
「みゅう、みゅう!」
必死に抱擁から逃れようと暴れるハノン。
しかしシノンは、がっしりとハノンを抱いて、離さない。
「お願いだよハノン、もとに戻って…!」
「みゅうううううう!」
ハノンは、炎を吐いた。
それは先ほどまでの戦闘とは比べ物にならないほどに、とても弱弱しい。
「熱っ!」
しかし、ハノンを胸に抱いていたシノンには、それはしっかりと届いた。
しかしそれでもシノンは、ハノンを離さず、むしろより一層強く抱きしめた。
「あなたはハノン、その名前の通りの無邪気な瞳を、もう一度取り戻して…!そして私と…シノン・エルメスと、もう一度パートナーになってよ!」
「みゅ…みゅ……う…?」
ハノンの瞳に、わずかに光が戻る。
シノンはそんなハノンをしっかりと見据えて、笑顔で言った。
「ハノン…大好きだよ!」
「みゅ…みゅう、みゅみゅう!みゅみゅう!」
ハノンが叫ぶ。
チーグルではないシノンたちにも、イントネーションからシノンの名前を呼んでいることを察した。
「ハノン、もとに戻ったんだね!」
「みゅう!」
シノンの言葉に、ハノンはその無邪気な光を取り戻した瞳で、元気よく答えた。
ハノンの強力な体当たり、ハノンアタックがシノン目がけて放たれる。
シノンはそれを、バックステップで回避する。
「ハノン…どうしても退いてくれないんだね」
シノンは、相変わらずうつろな目をしたハノンを見据えて言う。
先ほどから攻撃をかわしながら呼びかけ続けているが、ハノンの耳に届いている様子はなかった。
言葉で伝えても届かないのなら、自分の取るべき道は…
「分かった、私も覚悟を決めるよハノン。あなたが襲ってくるのをやめないなら…私は全力であなたを迎え撃つ」
そう言うとシノンは、チャクラムを構える。
「レイトラスト!」
放たれたチャクラムは、一直線にハノンのところへ向かっていき、
「孤月閃!」
チャクラムは、突如現れた人物の攻撃により弾かれ、シノンのもとへ戻っていった。
「せ、セリア!?」
「シノンさん、ハノンさん、どうしてお二人が戦っているんですか!?」
突然のアルセリアの乱入に驚きの声をあげるシノン。
一方のアルセリアは、どうして二人が戦っているのかとシノンを問い詰める。
「セリア、横に跳んで!」
「え!?」
「みゅみゅぅぅぅ!」
シノンの突然の指示に戸惑いの様子を見せるアルセリアだったが、突如こちらに炎を噴いてきたハノンを見て、あわてて回避に努める。
「は、ハノンさん!?」
「見ての通りだよ、ハノンはあのフォルクスって奴に操られちゃったの」
シノンはセリアに事情を説明すると、再びチャクラムを構えた。
「だからどいて。ハノンは私が全力で止めるから、セリアは向こうにいるクノンと一緒にフォルクスを倒してほしいの」
「シノンさん…」
シノンの言葉に、セリアはどうするべきか迷ったように逡巡したような様子を見せる。
「…あなたとハノンさんは、家族みたいなものなんでしょう?それなのに、どうして戦わないといけないんですか…!私は、私は…そんなの認めたくないです!」
「家族だって喧嘩くらいはするよ。それに、ハノンは家族である前に、私のパートナーだから…だからこそ、私自身の手で止めないといけないの。それが…魔獣使いとしての責任」
そういうとシノンはにこっと笑い、続けて言った。
「心配しないでセリア。戦うっていっても、あくまで止めるだけだから。これはハノンとハノンのパートナーの私の問題だから…セリアはハノンをもとに戻させるためにフォルクスを倒してよ」
「シノンさん…分かりました」
セリアは踵を返すと、フォルクスと戦うクノンのもとへと向かった。
それを見送ったシノンは、改めてハノンと対峙する。
「さあハノン、戦おっか」
「みゅう…」
「へへ、こうして戦うのは2年ぶりだね」
2年前、シノンは魔獣使いとしてのパートナーと認めてもらうため、ハノンと戦った。
まさかこうして、再び戦う時が来るとは思っても見なかった。
「あなたが全力で向かってくるなら、私も全力でそれに応える!勝負だよ、ハノン!」
「魔神拳!」
拳により地面に発生した衝撃破が、フォルクス目がけて襲ってくる。
フォルクスはそれをジャンプで回避すると、続けて詠唱を始めた。
「ストーンブラスト!」
フォルクスによって放たれた譜術により小粒のような石がクノンの頭上に降ってくるが、クノンはそれを難なく回避して見せる。
いや、回避というのは正確ではないかもしれない。
クノンはフォルクスに接近していた。
一瞬で間合いを詰められたフォルクスは、術発動直後の硬直により動けず、
「牙狼連濤打ァ!」
「がはああっ!」
クノンの攻撃を、もろに食らってしまった。
「くそ、やりますね」
「ハン、やっぱり六神将なんて絵空事だったんじゃなイ?漆黒の方がよっぽど強いヨ!」
「あ、あんな封印術で弱体化した裏切り者に、私が劣っているというのですか!?」
セネリオより格下と言われ、憤然とするフォルクス。
「クノンさん!」
と、そこへアルセリアが現れた。
「あれ、なんでここに?お坊ちゃまと一緒に先に行ったんジャなかったッケ?」
」それは…そ、それより、事情はシノンさんから聞きました!シノンさんに頼まれて
助っ人に来ました!」
「そっか、サンキュー♪…さ、これで2対1だよ、フォルクスクン♪」
「ち、さすがにこれは状況がまずいですね…」
フォルクスは懐から何かを取り出すと、それを地面に向けて投げつけた。
その瞬間、周囲は煙幕に包まれなにも見えなくなる。
「くそ、煙幕弾か!」
「な、なにも見えません!」
やがて煙幕が晴れると、そこにはフォルクスの姿はなかった。
「みゅみゅううううう!」
ハノンの口から発せられた炎を、シノンは回避する。
「焔!」
炎を纏ったナイフが、ハノン目がけて放たれるが、これもまたハノンは回避する。
「ノクターナルライト!」
続けて三本のナイフが、ハノン目がけて放たれた。
「みゅう!」
二本までは回避に成功したが三本目を回避しきれず、ハノンの身体がナイフの攻撃により転がる。
「レイトラスト!」
さらに続くチャクラムの攻撃。
しかし…
「みゅみゅっみゅ!」
「な!?」
体勢を整えたハノンは、ハノンアタックでチャクラムごとシノンに向けて攻撃を仕掛けた。
「きゃああああ!」
ハノンアタックの直撃を受けたシノンは吹き飛ばされるが、
「えいっ!」
「みゅっ!?」
吹き飛ばされつつも、ナイフを振って組み付いていたハノンを引き離す。
「へへ、やっぱりハノンは強いね」
「みゅう」
「…だけど、今のハノンじゃ私には勝てないよ。いつものハノンの方が…もっともっと強い」
今のハノンは、フォルクスに操られるままにただ黙々と戦うロボットみたいなものだった。
そんなハノンを相手に、シノンは負ける気などさらさらなかった。
「氷樹!」
氷をまとったナイフ。
かつてグラシャラボラス戦で敵の動きを止めたそれは、ハノンの動きを止める。
「みゅ、みゅ!」
ハノンは必死で動こうとするが、身体は動かない。
「もう一回だよ!氷樹!」
続けて放たれた氷のナイフに、ハノンの身体は完全に動かなくなり、もはや抵抗すら出来ない状態となった。
「これで終わりだよ、ハノン…今度は、操られてない状態で、本当の全力の勝負をしようね!」
――FOF変化――
「朧氷樹!」
「シノンさん!」
「二人とも、無事?」
アルセリアとクノンがやってきたのは、ちょうど決着がついた直後だった。
「セリア、クノン!フォルクスは!?」
「…すみません、シノンさん。煙幕弾で逃げられてしまいました」
「そんな…」
「みゅ……」
「ハノン!」
起き上がってきたハノンに、シノンは近づく。
「みゅううううう!」
が、そんなシノンにハノンは炎を浴びせてきて、シノンはそれを慌てて回避する。
一方のハノンは、炎を吐くと再び倒れた。
「ハノン…まだ苦しんでるんだね」
シノンは、倒れたハノンに、ゆっくりと歩いて近づいていく。
そして、思いっきり抱きしめた。
「みゅう!?」
「ハノン…もう苦しまないで。あなたに望まない戦いを強いる悪い人は、もういないんだから」
「みゅう、みゅう!」
必死に抱擁から逃れようと暴れるハノン。
しかしシノンは、がっしりとハノンを抱いて、離さない。
「お願いだよハノン、もとに戻って…!」
「みゅうううううう!」
ハノンは、炎を吐いた。
それは先ほどまでの戦闘とは比べ物にならないほどに、とても弱弱しい。
「熱っ!」
しかし、ハノンを胸に抱いていたシノンには、それはしっかりと届いた。
しかしそれでもシノンは、ハノンを離さず、むしろより一層強く抱きしめた。
「あなたはハノン、その名前の通りの無邪気な瞳を、もう一度取り戻して…!そして私と…シノン・エルメスと、もう一度パートナーになってよ!」
「みゅ…みゅ……う…?」
ハノンの瞳に、わずかに光が戻る。
シノンはそんなハノンをしっかりと見据えて、笑顔で言った。
「ハノン…大好きだよ!」
「みゅ…みゅう、みゅみゅう!みゅみゅう!」
ハノンが叫ぶ。
チーグルではないシノンたちにも、イントネーションからシノンの名前を呼んでいることを察した。
「ハノン、もとに戻ったんだね!」
「みゅう!」
シノンの言葉に、ハノンはその無邪気な光を取り戻した瞳で、元気よく答えた。
■作者メッセージ
というわけで、クノン&シノンパートはこれにて一端終幕
次回からは別の場所の戦いに移っていきますね
次回からは別の場所の戦いに移っていきますね