第9章『終わりは始まり』 1
「ん、まあ、なかなかいいデータが集まったかな」
レイノスとゼウスの戦いを見届けたルージェニアは、レイノスに駆け寄るセネリオ達に見つからないように、シュレーの丘からの脱出の準備をしている。
(データによればレイノス・フォン・ファブレがオーバーリミッツを発動したのはあれが初めて…にもかかわらず、初めてのオーバーリミッツで秘奥義を、しかもあれだけ強力なのをぶっ放すとは…あまり甘く見ていい相手じゃないみたいだね)
まあ、剣の技量は封印術をかけられる前のセネリオはおろかカッシャーにすら劣るようなので、実力でいえばまだまだといった感じだが。
(レイノス・フォン・ファブレ…それにセネリオ、僕たちの邪魔をするっていうなら…容赦はしないよ)
いずれ戦うかもしれない相手たちの姿を一瞥すると、ルージェニアは姿を消した。
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「う…ううん?」
レイノス・フォン・ファブレは、ベッドの上で目を覚ました。
「レイノス!」
目の前にいるのは、目に涙をためた幼馴染の姿。
「リン、どうし…!?」
「バカ、バカ、レイノスのバカ!あんなボロボロになるまで無茶して…心配したんだから!」
どうしたんだ、と言おうとしたところでリンに抱きしめられる。
リンは、レイノスの胸で泣きじゃくりながらひたすらバカ、バカと連呼している。
「お、おい!そんなにバカバカ言う事ないだろ!?」
「な、なによう!私はただ、心配で…その」
「心配したのはこっちだっての!」
「はあ、まったくお兄ちゃんたら…せっかく二人きりにさせてあげたのに」
言い合いを続けていると、スクルドが呆れた様子で部屋に入ってきた。
さらにその後ろからは、セネリオ、アルセリア、クノン、ミステリアス、シノンが。
「スクルド!みんな!…ていうかあれ?俺、シュレーの丘にいたはずなのに、なんでベッドに?」
「ここはセントビナーの宿屋だ。そして今はもう夜だ」
自分がベッドの中にいることに疑問を覚えたレイノスに、セネリオが説明をする。
あの後、セントビナーのマルクト兵がやってきて、賊の残党は捕らえられ、賊によって捕まっていた人々は救出された。
ちなみに賊頭のゼウスとセネリオによって倒されたバックスは生きていたようで、マルクト兵に捕らえられている姿が確認された。
マクガヴァン元帥はカイツールまでの辻馬車を手配してくれ、明日には出発できるようだ。
「俺が寝てる間にそんなことが…てかリン、いつまで引っ付いてるんだよ!恥ずかしいだろ!」
「え…あ!ご、ごめん!」
顔を赤くしながらあわててパッと離れるリン。
「レイノスさん、外の空気を吸ってきたらどうですか?」
「え、ああそうだな」
アルセリアの提案を受け入れ、レイノスはベッドから出ると立ち上がる。
「じゃあ、その辺ちょっと散歩してくる」
「わ、私も行くわ!」
外へ出るレイノスを追って、リンも部屋から出る。
「むふふふ…仮面さん」
「おう、行こうぜクノン」
なにやら企んで居そうな表情(ミステリアスの表情は見えないが)でクノンとミステリアスが部屋を出る。
きっと二人をつけるつもりだろう。
「シノンさん、私たちは女性部屋に戻りましょうか」
「うん!行こう、ハノン!」
「みゅ!」
そういってアルセリア、シノン、ハノンも外に出る。
(スクルドさん、頑張ってくださいね♪)
「俺も外に出て素振りをしてくる」
そういってセネリオが部屋を出て行こうとすると、
「あ、私も行きます!」
スクルドがついてくる。
「…昼間もそういってついてきたが、素振りなんて見ていてもつまらないぞ?」
「そんなことないです!剣を振ってるセネリオさん、サマになっててとっても素敵ですよ!」
「まあ、ついてきたいというなら止めはしないが」
「ねえ、セネリオさん」
街の外へ向かう最中、スクルドがセネリオに声をかける。
「聞きたいことがあるんですが…いいですか?」
「なんだ?」
「その…セネリオさんって、恋人とかいないんですか!?」
「…なんだ、そんなことか」
「わ、私にとっては大事なことなんです!」
質問の内容に呆れた様子を見せるセネリオとは対照的に、スクルドは真剣だ。
「いない」
「本当ですか?シンシアさんって方とそういう仲だって噂を聞いたんですけど…」
「誰がどこでそんな噂を流しているのかは知らんが、あいつはただの幼馴染で、神託の盾の同期というだけだ。それ以上の関係ではない」
「そ、そうなんですか」
セネリオの話を聞き、ホッとするスクルド。
(それなら、私にもチャンスはあるよね?)
(セネリオさん…絶対にあなたを振り向かせて見せます!)
「あの、ね…レイノス、さっきはああいったけど、その…ありがとう」
「へ?」
「私を助けてくれて…あんなに必死に戦ってくれて……すごく嬉しかった」
「べ、別に大したことねーよ」
「ううん、そんなことない!私、あの時レイノスがゼウスにとどめを刺した時、目を覚ましてたんだけど…レイノス、秘奥義が使えるようになったんだね」
「へ?秘奥義?」
リンの話を聞いて、レイノスはポカンとしている。
あの時はとにかく必死で、自分がなにをやっていたのかはっきりと思い出せなかった。
「セネリオが言うにはあの時レイノスが使ったのは超振動らしいけど…すごくかっこよかったよ」
そういってリンは、レイノスの腕をとり、ギュッと抱きしめた。
「り、リン?」
レイノスはドギマギしながらリンの顔を見る。
なんていうか今、リンがものすごく可愛く見える。
いや、元々美人ではあるが、今日は一段と綺麗に見えるのだ。
「そ、その…レイノス!」
そういってリンは、グイッとレイノスの方に顔を近づける。
そうしてリンの顔はどんどんと近づいていき…
チュ
「!!??」
「ん……」
レイノスの唇が、リンの唇によって塞がれる。
レイノスは驚きつつも、抵抗することなくそれを受け入れた。
初めてのキスは、とてもやわらかくて、心地よくて…なんだかとても夢心地だった。
やがてリンは唇を離した。
「そ、その!これは今日のお礼だから!深い意味なんてないから!」
「そ、そっか…はは、そうだよな」
「じゃ、じゃあ私は先に部屋に戻ってるね!おやすみ、レイノス!」
リンは、足早に宿屋へ戻って言った。
残されたレイノスは、顔を真っ赤にしながらその場にボーっと立っていた。
スキット「目撃者」
クノン「お、お〜〜〜〜〜!」
ミステリアス「リン、とうとうやったな」
クノン「でも、どうせあそこまでいったならそのまま告っちゃえば良かったのに〜」
ミステリアス「はは、まあいいもん見れたし、今日の所はこれでよしとしようぜ!」
レイノスとゼウスの戦いを見届けたルージェニアは、レイノスに駆け寄るセネリオ達に見つからないように、シュレーの丘からの脱出の準備をしている。
(データによればレイノス・フォン・ファブレがオーバーリミッツを発動したのはあれが初めて…にもかかわらず、初めてのオーバーリミッツで秘奥義を、しかもあれだけ強力なのをぶっ放すとは…あまり甘く見ていい相手じゃないみたいだね)
まあ、剣の技量は封印術をかけられる前のセネリオはおろかカッシャーにすら劣るようなので、実力でいえばまだまだといった感じだが。
(レイノス・フォン・ファブレ…それにセネリオ、僕たちの邪魔をするっていうなら…容赦はしないよ)
いずれ戦うかもしれない相手たちの姿を一瞥すると、ルージェニアは姿を消した。
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「う…ううん?」
レイノス・フォン・ファブレは、ベッドの上で目を覚ました。
「レイノス!」
目の前にいるのは、目に涙をためた幼馴染の姿。
「リン、どうし…!?」
「バカ、バカ、レイノスのバカ!あんなボロボロになるまで無茶して…心配したんだから!」
どうしたんだ、と言おうとしたところでリンに抱きしめられる。
リンは、レイノスの胸で泣きじゃくりながらひたすらバカ、バカと連呼している。
「お、おい!そんなにバカバカ言う事ないだろ!?」
「な、なによう!私はただ、心配で…その」
「心配したのはこっちだっての!」
「はあ、まったくお兄ちゃんたら…せっかく二人きりにさせてあげたのに」
言い合いを続けていると、スクルドが呆れた様子で部屋に入ってきた。
さらにその後ろからは、セネリオ、アルセリア、クノン、ミステリアス、シノンが。
「スクルド!みんな!…ていうかあれ?俺、シュレーの丘にいたはずなのに、なんでベッドに?」
「ここはセントビナーの宿屋だ。そして今はもう夜だ」
自分がベッドの中にいることに疑問を覚えたレイノスに、セネリオが説明をする。
あの後、セントビナーのマルクト兵がやってきて、賊の残党は捕らえられ、賊によって捕まっていた人々は救出された。
ちなみに賊頭のゼウスとセネリオによって倒されたバックスは生きていたようで、マルクト兵に捕らえられている姿が確認された。
マクガヴァン元帥はカイツールまでの辻馬車を手配してくれ、明日には出発できるようだ。
「俺が寝てる間にそんなことが…てかリン、いつまで引っ付いてるんだよ!恥ずかしいだろ!」
「え…あ!ご、ごめん!」
顔を赤くしながらあわててパッと離れるリン。
「レイノスさん、外の空気を吸ってきたらどうですか?」
「え、ああそうだな」
アルセリアの提案を受け入れ、レイノスはベッドから出ると立ち上がる。
「じゃあ、その辺ちょっと散歩してくる」
「わ、私も行くわ!」
外へ出るレイノスを追って、リンも部屋から出る。
「むふふふ…仮面さん」
「おう、行こうぜクノン」
なにやら企んで居そうな表情(ミステリアスの表情は見えないが)でクノンとミステリアスが部屋を出る。
きっと二人をつけるつもりだろう。
「シノンさん、私たちは女性部屋に戻りましょうか」
「うん!行こう、ハノン!」
「みゅ!」
そういってアルセリア、シノン、ハノンも外に出る。
(スクルドさん、頑張ってくださいね♪)
「俺も外に出て素振りをしてくる」
そういってセネリオが部屋を出て行こうとすると、
「あ、私も行きます!」
スクルドがついてくる。
「…昼間もそういってついてきたが、素振りなんて見ていてもつまらないぞ?」
「そんなことないです!剣を振ってるセネリオさん、サマになっててとっても素敵ですよ!」
「まあ、ついてきたいというなら止めはしないが」
「ねえ、セネリオさん」
街の外へ向かう最中、スクルドがセネリオに声をかける。
「聞きたいことがあるんですが…いいですか?」
「なんだ?」
「その…セネリオさんって、恋人とかいないんですか!?」
「…なんだ、そんなことか」
「わ、私にとっては大事なことなんです!」
質問の内容に呆れた様子を見せるセネリオとは対照的に、スクルドは真剣だ。
「いない」
「本当ですか?シンシアさんって方とそういう仲だって噂を聞いたんですけど…」
「誰がどこでそんな噂を流しているのかは知らんが、あいつはただの幼馴染で、神託の盾の同期というだけだ。それ以上の関係ではない」
「そ、そうなんですか」
セネリオの話を聞き、ホッとするスクルド。
(それなら、私にもチャンスはあるよね?)
(セネリオさん…絶対にあなたを振り向かせて見せます!)
「あの、ね…レイノス、さっきはああいったけど、その…ありがとう」
「へ?」
「私を助けてくれて…あんなに必死に戦ってくれて……すごく嬉しかった」
「べ、別に大したことねーよ」
「ううん、そんなことない!私、あの時レイノスがゼウスにとどめを刺した時、目を覚ましてたんだけど…レイノス、秘奥義が使えるようになったんだね」
「へ?秘奥義?」
リンの話を聞いて、レイノスはポカンとしている。
あの時はとにかく必死で、自分がなにをやっていたのかはっきりと思い出せなかった。
「セネリオが言うにはあの時レイノスが使ったのは超振動らしいけど…すごくかっこよかったよ」
そういってリンは、レイノスの腕をとり、ギュッと抱きしめた。
「り、リン?」
レイノスはドギマギしながらリンの顔を見る。
なんていうか今、リンがものすごく可愛く見える。
いや、元々美人ではあるが、今日は一段と綺麗に見えるのだ。
「そ、その…レイノス!」
そういってリンは、グイッとレイノスの方に顔を近づける。
そうしてリンの顔はどんどんと近づいていき…
チュ
「!!??」
「ん……」
レイノスの唇が、リンの唇によって塞がれる。
レイノスは驚きつつも、抵抗することなくそれを受け入れた。
初めてのキスは、とてもやわらかくて、心地よくて…なんだかとても夢心地だった。
やがてリンは唇を離した。
「そ、その!これは今日のお礼だから!深い意味なんてないから!」
「そ、そっか…はは、そうだよな」
「じゃ、じゃあ私は先に部屋に戻ってるね!おやすみ、レイノス!」
リンは、足早に宿屋へ戻って言った。
残されたレイノスは、顔を真っ赤にしながらその場にボーっと立っていた。
スキット「目撃者」
クノン「お、お〜〜〜〜〜!」
ミステリアス「リン、とうとうやったな」
クノン「でも、どうせあそこまでいったならそのまま告っちゃえば良かったのに〜」
ミステリアス「はは、まあいいもん見れたし、今日の所はこれでよしとしようぜ!」
■作者メッセージ
戦い終了後、イベント。
うにゃああああああああ!
やっちゃったあああああ!
うん、ここのレイノスとリンのイベントはどうするかかなり真剣に悩みましたが、思い切ってやっちゃいましたよ、うん
次回がたぶん、第一部最終回になると思います!
うにゃああああああああ!
やっちゃったあああああ!
うん、ここのレイノスとリンのイベントはどうするかかなり真剣に悩みましたが、思い切ってやっちゃいましたよ、うん
次回がたぶん、第一部最終回になると思います!