第9章『終わりは始まり』 2
翌日。
宿で朝食を済ませた一行は、街の外で待っている辻馬車のもとへ向かった。
街を救った英雄ともいえるレイノス達は、セントビナーの住人から惜しまれながら街を出た。
「歌のお姉ちゃん、行っちゃうの?」
「もっとお歌聞きたいよ〜」
子供たちが、スクルドとの別れに涙を流している。
「ごめんね、だけどお父さんやお母さんが心配してるから…帰って顔を見せてあげなきゃ」
「そっか…」
「またここに来たときは、お歌聞かせてあげるから…ね?」
「本当!?」
「うん、約束だよ」
「スクルド、子供たちに随分好かれてるな」
名残惜しそうにスクルドに手を振る子供たちを見ながらレイノスが呟く。
「昨日の夜も、スクルドの歌は好評だったしね」
リンは、レイノスと別れた後のことを思い出す。
街では賊が壊滅し街の人々が解放されたことを祝して祭が行われ、その祭でスクルドは歌うことになったのだった。
なんでもスクルドが捕まっていた時に、捕らえられた街の人に聞かせていた歌の評判がセントビナーの人々の間で広まり、急遽祭のプログラムとして予定が組まれることになったらしい。
「いきなりあんな大勢の中で歌うことになって、緊張したなあ」
「だが、いい歌だった」
「本当ですか!?セネリオさん」
セネリオに歌を褒められ、嬉しそうな様子を見せるスクルド。
ちなみにセネリオは、祭の前にも素振りの休憩中にスクルドに歌を聞かせてもらっていた。
スクルド曰く、「セネリオさんのことを想いながら歌った」らしい。
「じゃあね、みんな!バイバイ!」
「みゅうみゅう!」
セントビナーの街を出ると、シノンとハノンが一行に手を振る。
彼女たちはカイツールで船に乗らずとも歩いて帰れるのでここでお別れなのだ。
「俺もここでお別れだな」
そして、セネリオもここで別れるらしい。
もう少しこの周辺にとどまってクラノスに関する痕跡がないか調べるつもりのようで、シノンとハノンもついでにチーグルの森まで送ってくれるらしい。
「じゃあね、おチビちゃん。ハノン。元気でね」
「うん、クノン!その…色々と助けてくれて、ありがとね!」
「みゅみゅ!」
「セネリオさん、あの…御用があったら、うちの屋敷に寄っていってくださいね」
「クラノスは再びお前を狙ってくるかもしれないからな、気を付けることだ」
「はい!」
「それと、もしかしたら捕まっている間に身体になにか手を加えられているかもしれない。なにか変わったことがあれば、言ってくれ」
「セネリオ、スクルドの救出に手を貸してくれて、本当にサンキューな!」
レイノスが、セネリオに礼を言う。
「そのさ…俺、セネリオの事信じてるからさ。何かあったら、力を貸すからな!」
「レイノス…」
「クラノスの野望を止めるの、一人じゃ大変だろうし、何かあったら、また俺達を頼ってくれよな」
「…まあ、その日が来ないことを祈っている」
「みんな、まったねー!」
「みゅみゅ〜!」
辻馬車でカイツールへ向かった一行を、シノンとハノンが見送る。
セネリオは特に何も言わず、ただ辻馬車を見つめていた。
カイツールで船に乗ったレイノス達。
まず最初の目的地のグランコクマでは、リンと別れた。
「じゃ、じゃあな、リン」
「う、うん…またね」
レイノスとリンは、お互い顔を見合わせないままどちらも顔を真っ赤にしたまま別れた。
どちらも、昨日の夜のことを思い出しているのだ。
「そういえばお兄ちゃん、リンさんとキスしたんでしょ?」
「な、なあ!?」
リンと別れた後スクルドにそういわれ、あからさまに狼狽するレイノス。
「な、なんでお前、そのこと!?」
「だってリンさん、宿に帰った後お兄ちゃんのこと聞いたら、ものすごく真っ赤になるんだもん。それで『お兄ちゃんと何かあったの?』って聞いたら、『な、何にもないから!キスなんてしてないから!』なんて言うんだよ。あれじゃバレバレだよ」
「/////////」
「ふふ、お兄ちゃんまで真っ赤になっちゃって。妬けちゃうなあ♪」
「お、お前なあ!からかうなよ」
やがて船はダアト港へたどり着く。
「皆さんと旅が出来て楽しかったです!またお会いしましょう!」
「じゃあな、お前等!まあ、そこそこに楽しかったぜ」
アルセリアとミステリアスとはそこで別れ、続いてシェリダン港へ。
「にゃひは〜、お坊ちゃま、御令嬢!シェリダンにも遊びにきてよネ!ギンジさんもノエルさんも待ってるからサ!蛆虫の作ったポンコツ音機関なんか目じゃないくらいにすごい奴に、乗せてあげるヨ!」
クノンとも別れ、レイノスとスクルドの二人となった。
目指すはバチカルだ。
「みんな、楽しい人だったね!」
「そうだな、こうして別れてみると寂しくなるな…」
「あ〜あ、私ももっとお話したかったけど、一緒にいられたのが少しの間だけで残念だな。セネリオさんやシノンちゃん、ハノンなんてたったの二日間だし」
「また会えるさ、きっと」
「…うん、そうだよね!またいつか、きっと!」
そして二人は、船の最終目的地であるバチカルに辿り着いた。
「あ!」
スクルドが声をあげる。
港に着くと、ルークとティアがいた。
自分達の帰還を、穏やかな表情で出迎えてくれていた。
「お父さん、お母さん…!」
スクルドが、目の前の両親の姿に涙を浮かべる。
やっと、やっと帰って来れたのだ。
「行こうぜ、スクルド」
「うん!」
レイノスはスクルドの手を取ると、一緒にルークとティアのもとへと走り出した。
―これは、真の平和を紡ぐ物語のほんの序章
―彼らの物語は、むしろこれから始まると言っていい
―しかし今は、この一つの旅の終わりに、祝福を
to be continued…
宿で朝食を済ませた一行は、街の外で待っている辻馬車のもとへ向かった。
街を救った英雄ともいえるレイノス達は、セントビナーの住人から惜しまれながら街を出た。
「歌のお姉ちゃん、行っちゃうの?」
「もっとお歌聞きたいよ〜」
子供たちが、スクルドとの別れに涙を流している。
「ごめんね、だけどお父さんやお母さんが心配してるから…帰って顔を見せてあげなきゃ」
「そっか…」
「またここに来たときは、お歌聞かせてあげるから…ね?」
「本当!?」
「うん、約束だよ」
「スクルド、子供たちに随分好かれてるな」
名残惜しそうにスクルドに手を振る子供たちを見ながらレイノスが呟く。
「昨日の夜も、スクルドの歌は好評だったしね」
リンは、レイノスと別れた後のことを思い出す。
街では賊が壊滅し街の人々が解放されたことを祝して祭が行われ、その祭でスクルドは歌うことになったのだった。
なんでもスクルドが捕まっていた時に、捕らえられた街の人に聞かせていた歌の評判がセントビナーの人々の間で広まり、急遽祭のプログラムとして予定が組まれることになったらしい。
「いきなりあんな大勢の中で歌うことになって、緊張したなあ」
「だが、いい歌だった」
「本当ですか!?セネリオさん」
セネリオに歌を褒められ、嬉しそうな様子を見せるスクルド。
ちなみにセネリオは、祭の前にも素振りの休憩中にスクルドに歌を聞かせてもらっていた。
スクルド曰く、「セネリオさんのことを想いながら歌った」らしい。
「じゃあね、みんな!バイバイ!」
「みゅうみゅう!」
セントビナーの街を出ると、シノンとハノンが一行に手を振る。
彼女たちはカイツールで船に乗らずとも歩いて帰れるのでここでお別れなのだ。
「俺もここでお別れだな」
そして、セネリオもここで別れるらしい。
もう少しこの周辺にとどまってクラノスに関する痕跡がないか調べるつもりのようで、シノンとハノンもついでにチーグルの森まで送ってくれるらしい。
「じゃあね、おチビちゃん。ハノン。元気でね」
「うん、クノン!その…色々と助けてくれて、ありがとね!」
「みゅみゅ!」
「セネリオさん、あの…御用があったら、うちの屋敷に寄っていってくださいね」
「クラノスは再びお前を狙ってくるかもしれないからな、気を付けることだ」
「はい!」
「それと、もしかしたら捕まっている間に身体になにか手を加えられているかもしれない。なにか変わったことがあれば、言ってくれ」
「セネリオ、スクルドの救出に手を貸してくれて、本当にサンキューな!」
レイノスが、セネリオに礼を言う。
「そのさ…俺、セネリオの事信じてるからさ。何かあったら、力を貸すからな!」
「レイノス…」
「クラノスの野望を止めるの、一人じゃ大変だろうし、何かあったら、また俺達を頼ってくれよな」
「…まあ、その日が来ないことを祈っている」
「みんな、まったねー!」
「みゅみゅ〜!」
辻馬車でカイツールへ向かった一行を、シノンとハノンが見送る。
セネリオは特に何も言わず、ただ辻馬車を見つめていた。
カイツールで船に乗ったレイノス達。
まず最初の目的地のグランコクマでは、リンと別れた。
「じゃ、じゃあな、リン」
「う、うん…またね」
レイノスとリンは、お互い顔を見合わせないままどちらも顔を真っ赤にしたまま別れた。
どちらも、昨日の夜のことを思い出しているのだ。
「そういえばお兄ちゃん、リンさんとキスしたんでしょ?」
「な、なあ!?」
リンと別れた後スクルドにそういわれ、あからさまに狼狽するレイノス。
「な、なんでお前、そのこと!?」
「だってリンさん、宿に帰った後お兄ちゃんのこと聞いたら、ものすごく真っ赤になるんだもん。それで『お兄ちゃんと何かあったの?』って聞いたら、『な、何にもないから!キスなんてしてないから!』なんて言うんだよ。あれじゃバレバレだよ」
「/////////」
「ふふ、お兄ちゃんまで真っ赤になっちゃって。妬けちゃうなあ♪」
「お、お前なあ!からかうなよ」
やがて船はダアト港へたどり着く。
「皆さんと旅が出来て楽しかったです!またお会いしましょう!」
「じゃあな、お前等!まあ、そこそこに楽しかったぜ」
アルセリアとミステリアスとはそこで別れ、続いてシェリダン港へ。
「にゃひは〜、お坊ちゃま、御令嬢!シェリダンにも遊びにきてよネ!ギンジさんもノエルさんも待ってるからサ!蛆虫の作ったポンコツ音機関なんか目じゃないくらいにすごい奴に、乗せてあげるヨ!」
クノンとも別れ、レイノスとスクルドの二人となった。
目指すはバチカルだ。
「みんな、楽しい人だったね!」
「そうだな、こうして別れてみると寂しくなるな…」
「あ〜あ、私ももっとお話したかったけど、一緒にいられたのが少しの間だけで残念だな。セネリオさんやシノンちゃん、ハノンなんてたったの二日間だし」
「また会えるさ、きっと」
「…うん、そうだよね!またいつか、きっと!」
そして二人は、船の最終目的地であるバチカルに辿り着いた。
「あ!」
スクルドが声をあげる。
港に着くと、ルークとティアがいた。
自分達の帰還を、穏やかな表情で出迎えてくれていた。
「お父さん、お母さん…!」
スクルドが、目の前の両親の姿に涙を浮かべる。
やっと、やっと帰って来れたのだ。
「行こうぜ、スクルド」
「うん!」
レイノスはスクルドの手を取ると、一緒にルークとティアのもとへと走り出した。
―これは、真の平和を紡ぐ物語のほんの序章
―彼らの物語は、むしろこれから始まると言っていい
―しかし今は、この一つの旅の終わりに、祝福を
to be continued…
■作者メッセージ
ついに、第一部完結!
いやあ、第一部だけで一年以上かかって、これからリアルが忙しくなってくるっていうのに、最終完結はいつになるやら…
ゼウス戦後のセントビナーでの出来事は、なんか書き足りない感じがあるので機会があったら外伝の方にでも書こうかなあとか考えてます
ともかく!これにて第一部スクルド奪還編は終了です!
この小説は完結とし、新たな小説ページを作成して第二部開始としたいと思います!
では、第二部でまたお会いしましょう!
いやあ、第一部だけで一年以上かかって、これからリアルが忙しくなってくるっていうのに、最終完結はいつになるやら…
ゼウス戦後のセントビナーでの出来事は、なんか書き足りない感じがあるので機会があったら外伝の方にでも書こうかなあとか考えてます
ともかく!これにて第一部スクルド奪還編は終了です!
この小説は完結とし、新たな小説ページを作成して第二部開始としたいと思います!
では、第二部でまたお会いしましょう!