第1章『旅立ち』 1
20年前、オールドラントは破滅する運命にあった。
しかし、その破滅の運命は英雄たちの活躍により覆された。
そのオールドラントを破滅の運命から解き放った英雄の名はルーク・フォン・ファブレ
奇しくもその息子が新たなるオールドラントの運命の渦に巻き込まれることとなる
――キムラスカ・ランバルディア王国 首都バチカル――
「双牙斬!」
朝の暖かな光がバチカルを包み込む中、キムラスカの一画に聳える豪華な屋敷の中庭で一人の少年が木刀を振るう。
その少年は炎のような赤く長い髪を風になびかせ、そしてサファイアの瞳からは真剣さが伝わってくる。そして少年は気合のこもる声を張り上げ、訓練用の人形へと習得して間もない技をぶつける。
少年の豪快な技に人形は吹っ飛び、鈍い音を立てて中庭を転がっていく。
練度こそまだないが、その太刀筋には才能を感じざるを得ない。
「まだまだだな…」
技のモーションで跳躍していた少年が着地し、大きく深呼吸する。
少年も今の技の具合にはそれなりに満足が行っていることが、その表情から伝わってくる。
その少年の満足そうな表情に反する厳しい批判の声が、少年の背後にかけられる。
その声の主は一連の光景を中庭の隅のベンチで少し眠そうな表情で見ていた、少年と同じ炎のような赤い髪をした男性
このキムラスカの一画に聳える豪華な屋敷、ファブレ邸の現当主・ルーク・フォン・ファブレだ。
「親父は黙ってろよ」
少年はルークの言葉に不機嫌そうな顔をする。
ルークを親父と呼ぶこの少年はレイノス・フォン・ファブレ
20年前の預言大戦でオールドラントの危機を救った英雄、ルークの実の息子だ。
顔も性格も実にルークによく似ていて、かつての彼と同じように剣術の稽古に夢中なのだ。
「稽古見てやってるのにその口の利き方はないだろ……」
「親父のはただの冷やかしだろ!!」
ルークはレイノスの態度に不平を漏らすがレイノスは、眠そうにベンチに腰掛け批判以外口にしない父親が稽古を見てやっているということを認めない。
ルークはそんな息子の姿に苦笑しつつも、ベンチから立ち上がり黙って中庭の報へと歩いていき、レイノスと少し距離をあけて向き合った。
「そこまで言うなら相手をしてやるよ」
そして、ルークは一言そういって、腰に下げていた訓練用の木刀を抜き構えを取った。
レイノスは待ってましたと言わんばかりに瞳を輝かせながら、構えを取った。
「さあ、レイノスどっからでもかかってこい……」
「行くぜ親父!!」
レイノスが構えを取り、真剣な眼差しになるとルークはそれを茶化すように挑発気味に先手を譲る。
レイノスがその挑発に乗ることなくルークを前に集中して神経を研ぎ澄ます。
そして、気合のこもる声を張り上げながら、レイノスは一気にルークとの間合いを詰めた。
レイノスとルークが実戦形式の訓練を始めて5分ほどが経過した。
流石はオールドラントを救った英雄の一人、ルークは完全に受け手に徹しながらもレイノスの攻撃を掠ることもなく完全に防御していた。
逆にレイノスは勢いよく攻めすぎたのか、疲れが出始め攻撃の手が緩み始めていた。
「どうしたレイノス、双牙斬見せてみろよ」
攻撃の手が緩んでいることを感じたルークはレイノスの渾身の斬撃を受け止め、力でレイノスごと弾き飛ばす。
レイノスはいきなりの反撃に焦りながらもなんとか体制を崩すことなく後退した。
そして、一端距離を開くと、ルークはまた軽く挑発するようにレイノスに『双牙斬』を出すように促す。
疲れが出始め集中が途切れかけていたこともあり、レイノスはその挑発に乗ってしまう。
「くらえ、双牙斬!!」
レイノスは雄叫びをあげながら、ルークへと接近し渾身の力を振り絞り『双牙斬』を繰り出した
だが、ルークは初撃をいとも簡単に回避し、続く二撃目は刀身を上手く反らすことで勢いを完全に受け流した。
「(しまった!!)」
空中で完全に無防備な状態となったレイノス相手にルークは木刀を横薙ぎに払った。
無論、空中のレイノスにルークの一撃を回避するすべなどなく、レイノスは軽く吹き飛ばされる。
そして、中庭先ほどの訓練用人形のように転がっていく。
「レイノス、あの体制からよく防御できたな」
悔しそうに服の汚れを払うレイノスに、ルークは歩み寄り褒め言葉をかける。
レイノスは確かにルークの攻撃を回避できなかった。
だが、レイノスはあの一瞬のうちにルークの攻撃に自らの木刀を合わせて防御をしていたのだ。
技の直後を狙った一撃にすぐに反応して防御する。
結局はルークの力に押され吹き飛ばされたとはいえ、明らかにレイノスのセンスを感じさせるものだった。
だが、結果は惨敗であり、レイノスは全く満足がいっている表情ではない。
レイノスのそんな負けん気の強さにルークは微笑み、彼の肩を叩いた。
「ちょっとルーク!!」
だが、その直後女性の声がルークを呼ぶ。
ルークはビクッと身を震わせ、背後を振り返る。
そこに立っていたのは、スタイルが良く腰のあたりまで髪を伸ばし、右目は前髪で隠れているが左目はレイノスと同じサファイアの瞳をした綺麗な女性だ。
「ティア」「母さん」
レイノスとルークはほぼ同時に返事をした。
そう、その女性はティア、ルークと同じくオールドラントの危機を救った英雄の一人だ。
現在は、ルークと結ばれ幸せな日々を過ごす、レイノスの母親だ。
「ルーク、いつも言ってるけど訓練なんだからもう少し手加減しなさい」
「わりぃ、つい熱が入っちまって……」
「もう……レイノス、肘の所擦り剥いてるわね、今治すから」
「いいって!これくらい放っておけば治るって!!」
ティアはルークに対し呆れたように溜息を吐き、レイノスの肘の辺りが擦り剥いていることに気づき、それを治そうとする。
だが、レイノスはこの程度の怪我はなんともないと、ティアの治療を拒否する。
「そう、じゃあレイノス、そろそろ朝食だからスクルドを起こしてきてくれる?」
「わかった」
ティアのその頼みを素直に聞き入れると、レイノスは小走りで屋敷のほうへと向かった。
だが、屋敷の扉の前でレイノスは止まり、ティアに説教を受けているルークの報へと振り返ると…
「親父、いつか絶対に親父より強くなるからな!!」
ルークに向かって拳を向けて一言宣言したレイノスは、屋敷の中へと入っていった。
スキット「絶対に」
レイノス「ちくしょう、また親父に勝てなかった。しかも親父はまだ本気出してる感じじゃねぇし……だけど、絶対いつか親父より強くなってやる!!」
しかし、その破滅の運命は英雄たちの活躍により覆された。
そのオールドラントを破滅の運命から解き放った英雄の名はルーク・フォン・ファブレ
奇しくもその息子が新たなるオールドラントの運命の渦に巻き込まれることとなる
――キムラスカ・ランバルディア王国 首都バチカル――
「双牙斬!」
朝の暖かな光がバチカルを包み込む中、キムラスカの一画に聳える豪華な屋敷の中庭で一人の少年が木刀を振るう。
その少年は炎のような赤く長い髪を風になびかせ、そしてサファイアの瞳からは真剣さが伝わってくる。そして少年は気合のこもる声を張り上げ、訓練用の人形へと習得して間もない技をぶつける。
少年の豪快な技に人形は吹っ飛び、鈍い音を立てて中庭を転がっていく。
練度こそまだないが、その太刀筋には才能を感じざるを得ない。
「まだまだだな…」
技のモーションで跳躍していた少年が着地し、大きく深呼吸する。
少年も今の技の具合にはそれなりに満足が行っていることが、その表情から伝わってくる。
その少年の満足そうな表情に反する厳しい批判の声が、少年の背後にかけられる。
その声の主は一連の光景を中庭の隅のベンチで少し眠そうな表情で見ていた、少年と同じ炎のような赤い髪をした男性
このキムラスカの一画に聳える豪華な屋敷、ファブレ邸の現当主・ルーク・フォン・ファブレだ。
「親父は黙ってろよ」
少年はルークの言葉に不機嫌そうな顔をする。
ルークを親父と呼ぶこの少年はレイノス・フォン・ファブレ
20年前の預言大戦でオールドラントの危機を救った英雄、ルークの実の息子だ。
顔も性格も実にルークによく似ていて、かつての彼と同じように剣術の稽古に夢中なのだ。
「稽古見てやってるのにその口の利き方はないだろ……」
「親父のはただの冷やかしだろ!!」
ルークはレイノスの態度に不平を漏らすがレイノスは、眠そうにベンチに腰掛け批判以外口にしない父親が稽古を見てやっているということを認めない。
ルークはそんな息子の姿に苦笑しつつも、ベンチから立ち上がり黙って中庭の報へと歩いていき、レイノスと少し距離をあけて向き合った。
「そこまで言うなら相手をしてやるよ」
そして、ルークは一言そういって、腰に下げていた訓練用の木刀を抜き構えを取った。
レイノスは待ってましたと言わんばかりに瞳を輝かせながら、構えを取った。
「さあ、レイノスどっからでもかかってこい……」
「行くぜ親父!!」
レイノスが構えを取り、真剣な眼差しになるとルークはそれを茶化すように挑発気味に先手を譲る。
レイノスがその挑発に乗ることなくルークを前に集中して神経を研ぎ澄ます。
そして、気合のこもる声を張り上げながら、レイノスは一気にルークとの間合いを詰めた。
レイノスとルークが実戦形式の訓練を始めて5分ほどが経過した。
流石はオールドラントを救った英雄の一人、ルークは完全に受け手に徹しながらもレイノスの攻撃を掠ることもなく完全に防御していた。
逆にレイノスは勢いよく攻めすぎたのか、疲れが出始め攻撃の手が緩み始めていた。
「どうしたレイノス、双牙斬見せてみろよ」
攻撃の手が緩んでいることを感じたルークはレイノスの渾身の斬撃を受け止め、力でレイノスごと弾き飛ばす。
レイノスはいきなりの反撃に焦りながらもなんとか体制を崩すことなく後退した。
そして、一端距離を開くと、ルークはまた軽く挑発するようにレイノスに『双牙斬』を出すように促す。
疲れが出始め集中が途切れかけていたこともあり、レイノスはその挑発に乗ってしまう。
「くらえ、双牙斬!!」
レイノスは雄叫びをあげながら、ルークへと接近し渾身の力を振り絞り『双牙斬』を繰り出した
だが、ルークは初撃をいとも簡単に回避し、続く二撃目は刀身を上手く反らすことで勢いを完全に受け流した。
「(しまった!!)」
空中で完全に無防備な状態となったレイノス相手にルークは木刀を横薙ぎに払った。
無論、空中のレイノスにルークの一撃を回避するすべなどなく、レイノスは軽く吹き飛ばされる。
そして、中庭先ほどの訓練用人形のように転がっていく。
「レイノス、あの体制からよく防御できたな」
悔しそうに服の汚れを払うレイノスに、ルークは歩み寄り褒め言葉をかける。
レイノスは確かにルークの攻撃を回避できなかった。
だが、レイノスはあの一瞬のうちにルークの攻撃に自らの木刀を合わせて防御をしていたのだ。
技の直後を狙った一撃にすぐに反応して防御する。
結局はルークの力に押され吹き飛ばされたとはいえ、明らかにレイノスのセンスを感じさせるものだった。
だが、結果は惨敗であり、レイノスは全く満足がいっている表情ではない。
レイノスのそんな負けん気の強さにルークは微笑み、彼の肩を叩いた。
「ちょっとルーク!!」
だが、その直後女性の声がルークを呼ぶ。
ルークはビクッと身を震わせ、背後を振り返る。
そこに立っていたのは、スタイルが良く腰のあたりまで髪を伸ばし、右目は前髪で隠れているが左目はレイノスと同じサファイアの瞳をした綺麗な女性だ。
「ティア」「母さん」
レイノスとルークはほぼ同時に返事をした。
そう、その女性はティア、ルークと同じくオールドラントの危機を救った英雄の一人だ。
現在は、ルークと結ばれ幸せな日々を過ごす、レイノスの母親だ。
「ルーク、いつも言ってるけど訓練なんだからもう少し手加減しなさい」
「わりぃ、つい熱が入っちまって……」
「もう……レイノス、肘の所擦り剥いてるわね、今治すから」
「いいって!これくらい放っておけば治るって!!」
ティアはルークに対し呆れたように溜息を吐き、レイノスの肘の辺りが擦り剥いていることに気づき、それを治そうとする。
だが、レイノスはこの程度の怪我はなんともないと、ティアの治療を拒否する。
「そう、じゃあレイノス、そろそろ朝食だからスクルドを起こしてきてくれる?」
「わかった」
ティアのその頼みを素直に聞き入れると、レイノスは小走りで屋敷のほうへと向かった。
だが、屋敷の扉の前でレイノスは止まり、ティアに説教を受けているルークの報へと振り返ると…
「親父、いつか絶対に親父より強くなるからな!!」
ルークに向かって拳を向けて一言宣言したレイノスは、屋敷の中へと入っていった。
スキット「絶対に」
レイノス「ちくしょう、また親父に勝てなかった。しかも親父はまだ本気出してる感じじゃねぇし……だけど、絶対いつか親父より強くなってやる!!」
■作者メッセージ
というわけで第一話、いろいろ添削しつつも再投下です!
一応第10話くらいまでは昔この小説がまだGAYMにあったころにノートに内容を書き写してたので、しばらくはそれを頼りに書いていきます
一応第10話くらいまでは昔この小説がまだGAYMにあったころにノートに内容を書き写してたので、しばらくはそれを頼りに書いていきます