第4章『仮面の戦士』 3
「みなさん!」
「アルセリア!良かった、無事だったんだな」
客室へ戻る途上、アルセリアはレイノス達と合流した。
アルセリアの無事に、ほっと安堵の表情を浮かべるレイノス。
「それにしても、そこらじゅうにうじゃうじゃいるわね」
リンがうんざりしたような表情でつぶやく。
レイノス達も、アルセリアも、合流するまでの間にすでに何体もの魔物を倒していた。
「…ネエ漆黒、この魔物タチ、ヘンじゃない?」
「お前もそう思うか、クノン」
「変ってどういうことだよ?」
一方、クノンとセネリオは現れた魔物のとある奇妙な点に気が付いていた。
レイノスは二人に何が変なのか聞いた。
「坊ちゃん、今ここは海の上だよネ?」
「ああ、そうだけど…それがどうかしたのか?」
「分からない?海の上になんでウルフやボアがいるのサ?」
「! 言われてみれば…」
クノンの説明に納得したレイノスは辺りに群がる魔物を眺める。
海の魔物の中に、明らかに陸の魔物が混じりこんでいる。
海上にいるはずなのに、このような魔物が上陸してくるなどありえなかった。
「どういうことかしら…」
「分かりません…」
リンとアルセリアも状況の異常さに戸惑っている様子だった。
「ともかく、乗客の避難を手伝いつつ、魔物を倒していくぞ」
セネリオの言葉に、一同は頷く。
奇妙な状況ではあるが、今は考察している場合ではない。
襲ってくる魔物を蹴散らしつつ、彼らは船の中を奔走した。
「はあ、はあ、はあ…これで大体倒したか?」
息を切らしながらレイノスは辺りを見回して言う。
「アトはこの倉庫の中ダケだけど…なんかイヤな感じ」
「ああ、おそらくかなり手強い魔物がいるはずだ」
クノンとセネリオは、倉庫の中にいる魔物の気配を感じ取っていた。
しかも、かなり強い魔物の気配だ。
「セリア、どうしたの?辺りをきょろきょろして」
「あ、その…ミステリアスさんがどうなったのか心配で」
「ミステリアスさん?」
「はい、実は皆さんと合流する前に…」
アルセリアは説明した。
レイノス達と合流する前に、甲板で例の仮面の男と出会ったこと。
そして、甲板に現れた魔物を一人で引き受けたことを。
「甲板には俺達も行ったけど、誰もいなかったよな?」
「ミステリアスさん、無事なんでしょうか…?」
レイノス達が甲板に行ったときは、ミステリアスはいなかった。
魔物にやられてしまったのか、今もどこかで戦っているのか…
行方の知れない仮面の男にアルセリアは不安を募らせ…
「俺がどうしたって?」
「え……うわっ!?ミステリアスさん!?」
…ていたところに、狙いすましたかのように、仮面の戦士・ミステリアス・ソルジャーは現れた。
唐突な登場に、アルセリアは驚きの声を挙げた。
「うわっ!?…はねえだろせっちゃん。せっかくお互い無事に再会したってのに」
「あ…す、すいません!でもよかったです無事で」
ミステリアスの無事に、喜びの表情を浮かべる
「あー、とりあえず自己紹介したいとこだが…今はそんなことしてる暇はねえよな」
「ああ…えっと、ミステリアスだったか?この倉庫の中に魔物の大ボスがいるみたいなんだ。手を貸してくれないか?」
「了解っと」
レイノスの協力要請に、ミステリアスは軽い口調で了承の意を伝えた。
暗い倉庫の中に、その魔物はいた。
船上にいた他のどの魔物たちよりも巨大で、一目でやばい相手だという事が分かる。
その魔物は、レイノス達の姿を見つけると、襲い掛かってきた。
2本の触手がレイノス達の方へと伸びていく。
一同はそれぞれその場から離れ、触手の攻撃を回避する。
「フォルネウスか…あの触手が邪魔だな」
魔物の正体に気づいたセネリオは、作戦を脳内で練る。
とりあえずあの2本の触手をどうにかしなければうかつに近づくことはできない。
だが、かといって触手にかかりきりになっていると…
「うわあああ!」
「レイノス!…ファーストエイド!」
レイノスが、フォルネウスのエアプレッシャーを食らい、リンがすかさず治癒術をかける。
そう、この魔物は譜術を使ってくる。
つまり、触手を相手取っている間も、本体の奴を放っておくわけにはいかないのだ。
分析を終えたセネリオは、指示を出した。
「前衛は触手の撃破に専念!リンは譜術で本体の敵を狙え!」
セネリオの指示により、右の触手にレイノスとアルセリアが向かい、左の触手にクノンが向かう。
「ロックブレイク!」
そしてリンは、フォルネウスの動きを止めるべく譜術を放つ。
「ミステリアス、お前は銃使いのようだが…」
「分かってる。あの魔物の弱点は目だ。…ストロングバレット!」
2発の弾丸が、フォルネウスの目に向けて吸い込まれる。
「グギャアアアアアアアアアア!!」
弾丸が命中すると、フォルネウスは苦しそうな雄叫びをあげた。
「ほら、本体はなんとかしてやるから、お前も触手退治に行って来いよ」
「ああ」
「魔神双破斬!」
「雷神招!」
レイノスとアルセリアの技を受け、右の触手は完全に動かなくなる。
少し遅れて、左側の触手もクノンとセネリオによって撃破されたようだ。
「グギャアアアアアアア!!」
2本の触手が倒され、雄叫びをあげたフォルネウスは、目からレーザーを放つ。
一同は無数に放たれるレーザーを紙一重でかわしていく。
「きゃ…」
そんな中、一人レーザーから逃げ遅れたアルセリアは、慌てて斧を盾にし防御の姿勢を取る。
だが、レーザーの威力は強く、命中こそしなかったものの斧ごとアルセリアの身体を吹き飛ばしてしまう。
「大丈夫か、セリア」
「あ、ミステリアスさん…ありがとうございます」
アルセリアはにこっと笑ってミステリアスに礼を言うと、再び前線へと戻って行った。
(ありがとう、ねえ…)
一方ミステリアスは仮面の下で困惑の表情を浮かべていた。
無論、仮面をかぶっているためその表情は誰にも見えないが。
(礼を言われる筋合いなんてないんだけどな。俺なんかが…あの子に)
「くっそ、こいつしぶといぜ!」
なかなか倒れない本体のフォルネウスに、苛立ちを募らせるレイノス。
フォルネウスは打たれ強く、なかなか倒れてはくれないのだ。
ミステリアスの弾丸を何度も眼球に受けてもう視力など存在しないはずだが、それゆえに攻撃の狙いが大雑把で、逆に読みづらい。
「あ、そうだ!ねえお嬢ちゃん」
と、その時クノンがなにかを思いついたようで、アルセリアを呼ぶ。
「え、ええ!そ、そんなの危ないですよ」
「いいからいいから!思いっきりやっちゃってよ」
「う〜ん…分かりました!」
そういうとアルセリアは、クノンの身体を支える。
そして…
「はああああああああ!それ!」
クノンの身体を、フォルネウス目がけて投げた!
アルセリアの行動に一同が驚きで呆気にとられる中、クノンの身体はフォルネウスの目の前に落ちた。
そう…文字通り【目】の前にだ。
「お嬢ちゃん、ナイスコントロール!」
そう、これがクノンの作戦。
彼がアルセリアに出した指示は、自分をフォルネウスの目の前までぶん投げろというものだった。
目が弱点なら、直接その目を狙えばいい。
「さあて、カクゴはイイかな♪…掌底破!」
「ガ…ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
至近距離からの、強力な眼球への一撃に、フォルネウスはかつてないほどの雄叫びをあげる。
「しっぶといなあ…ダケド、今度こそ、これで終わりダヨ!砕心脚!…牙狼連濤打ァ!」
「ガ………ア………」
クノンのとどめの一撃に、フォルネウスはもはや雄叫びをあげる事すらできなくなり、そのまま完全に動かなくなった。
「いやあ、助かったぜ!ミステリアス!」
「なに、困ったときはお互いさまってやつだ」
ここはレイノス達の客室。
いるのは、レイノス・セネリオ・アルセリア、そしてミステリアスだ。
リンは負傷者の治療に行っており、クノンは魔物の襲撃により故障した船の修理を行っている。
「ところで、お前がレイノス・フォン・ファブレで間違いないよな?」
「へ、ああそうだけど…てか、なんで俺の名前…」
「ああ、実はロストロに頼まれてな」
「ロストロに?」
「ああ、これはあいつからお前宛の手紙だ」
そういって渡されたそれを、レイノスは読む。
『レイノス、ごきげんよう。あなた達の旅の平穏をお祈りします。
大事な妹さんを、助けてあげてください』
「ロストロ…」
導師の心遣いに、胸を打つレイノス。
手紙の続きを読む。
『…僕もあなた達の手伝いをしたいところなのですが、あいにくダアトをそう 簡単に離れるわけにもいきません。ですのでそちらに僕の付き人を送ります。
彼、ミステリアス・ソルジャーは強くて信頼のおける僕の友です。
彼が、あなた達の助けになることを。
そして、あなた達の旅が無事に終わることを、改めてダアトから祈っています。
ロストロ・タトリン』
「まあ、そういうわけで俺はロストロに頼まれてお前たちを追いかけてきたわけだ」
「そっか…歓迎するぜ、ミステリアス!」
「よろしくお願いします、ミステリアスさん!」
レイノスはミステリアスの同行を快く了承する。
アルセリアも特に異論はないようだ。
しかし…
「そっちの黒い男は俺の事、歓迎してくれねえみたいだな…」
「教会の人間だというなら、俺の正体にも気づいているんだろう?」
「ああ、そうだな。…まさかこんな形で出会うとは思わなかった。セネリオ・バークハルス」
そういうとミステリアスは、セネリオに銃を向ける。
対するセネリオはミステリアスを睨んだまま動かない。
一触即発の状態に、レイノスとアルセリアは困惑の表情で両者を見守る。
「…な〜んてな、これから旅しようって奴を撃つ気はねえよ」
そういって、ミステリアスは銃をしまった。
「…俺を見逃すのか?」
「まあ、俺だって神託の盾がなんとなくキナ臭い状況なのは察してるからな。お前が神託の盾を出てったのも、そういうことだろ?」
「………」
「…だんまりか、まあいいさ。よろしく頼むぜ、セネリオさんよ」
スキット「気楽にいこうぜ!」
レイノス「全く、ヒヤヒヤしたぜ」
ミステリアス「はは、驚かせちまったな」
アルセリア「でも、丸く収まってよかったです」
セネリオ「………」
ミステリアス「はっはっは!そんな怖い顔してねえでもっと気楽にいこうぜ!」
セネリオ「………」
レイノス「気にするなよミステリアス。セネリオがしかめっ面なのはいつものことだし」
セネリオ「………悪かったな」
「アルセリア!良かった、無事だったんだな」
客室へ戻る途上、アルセリアはレイノス達と合流した。
アルセリアの無事に、ほっと安堵の表情を浮かべるレイノス。
「それにしても、そこらじゅうにうじゃうじゃいるわね」
リンがうんざりしたような表情でつぶやく。
レイノス達も、アルセリアも、合流するまでの間にすでに何体もの魔物を倒していた。
「…ネエ漆黒、この魔物タチ、ヘンじゃない?」
「お前もそう思うか、クノン」
「変ってどういうことだよ?」
一方、クノンとセネリオは現れた魔物のとある奇妙な点に気が付いていた。
レイノスは二人に何が変なのか聞いた。
「坊ちゃん、今ここは海の上だよネ?」
「ああ、そうだけど…それがどうかしたのか?」
「分からない?海の上になんでウルフやボアがいるのサ?」
「! 言われてみれば…」
クノンの説明に納得したレイノスは辺りに群がる魔物を眺める。
海の魔物の中に、明らかに陸の魔物が混じりこんでいる。
海上にいるはずなのに、このような魔物が上陸してくるなどありえなかった。
「どういうことかしら…」
「分かりません…」
リンとアルセリアも状況の異常さに戸惑っている様子だった。
「ともかく、乗客の避難を手伝いつつ、魔物を倒していくぞ」
セネリオの言葉に、一同は頷く。
奇妙な状況ではあるが、今は考察している場合ではない。
襲ってくる魔物を蹴散らしつつ、彼らは船の中を奔走した。
「はあ、はあ、はあ…これで大体倒したか?」
息を切らしながらレイノスは辺りを見回して言う。
「アトはこの倉庫の中ダケだけど…なんかイヤな感じ」
「ああ、おそらくかなり手強い魔物がいるはずだ」
クノンとセネリオは、倉庫の中にいる魔物の気配を感じ取っていた。
しかも、かなり強い魔物の気配だ。
「セリア、どうしたの?辺りをきょろきょろして」
「あ、その…ミステリアスさんがどうなったのか心配で」
「ミステリアスさん?」
「はい、実は皆さんと合流する前に…」
アルセリアは説明した。
レイノス達と合流する前に、甲板で例の仮面の男と出会ったこと。
そして、甲板に現れた魔物を一人で引き受けたことを。
「甲板には俺達も行ったけど、誰もいなかったよな?」
「ミステリアスさん、無事なんでしょうか…?」
レイノス達が甲板に行ったときは、ミステリアスはいなかった。
魔物にやられてしまったのか、今もどこかで戦っているのか…
行方の知れない仮面の男にアルセリアは不安を募らせ…
「俺がどうしたって?」
「え……うわっ!?ミステリアスさん!?」
…ていたところに、狙いすましたかのように、仮面の戦士・ミステリアス・ソルジャーは現れた。
唐突な登場に、アルセリアは驚きの声を挙げた。
「うわっ!?…はねえだろせっちゃん。せっかくお互い無事に再会したってのに」
「あ…す、すいません!でもよかったです無事で」
ミステリアスの無事に、喜びの表情を浮かべる
「あー、とりあえず自己紹介したいとこだが…今はそんなことしてる暇はねえよな」
「ああ…えっと、ミステリアスだったか?この倉庫の中に魔物の大ボスがいるみたいなんだ。手を貸してくれないか?」
「了解っと」
レイノスの協力要請に、ミステリアスは軽い口調で了承の意を伝えた。
暗い倉庫の中に、その魔物はいた。
船上にいた他のどの魔物たちよりも巨大で、一目でやばい相手だという事が分かる。
その魔物は、レイノス達の姿を見つけると、襲い掛かってきた。
2本の触手がレイノス達の方へと伸びていく。
一同はそれぞれその場から離れ、触手の攻撃を回避する。
「フォルネウスか…あの触手が邪魔だな」
魔物の正体に気づいたセネリオは、作戦を脳内で練る。
とりあえずあの2本の触手をどうにかしなければうかつに近づくことはできない。
だが、かといって触手にかかりきりになっていると…
「うわあああ!」
「レイノス!…ファーストエイド!」
レイノスが、フォルネウスのエアプレッシャーを食らい、リンがすかさず治癒術をかける。
そう、この魔物は譜術を使ってくる。
つまり、触手を相手取っている間も、本体の奴を放っておくわけにはいかないのだ。
分析を終えたセネリオは、指示を出した。
「前衛は触手の撃破に専念!リンは譜術で本体の敵を狙え!」
セネリオの指示により、右の触手にレイノスとアルセリアが向かい、左の触手にクノンが向かう。
「ロックブレイク!」
そしてリンは、フォルネウスの動きを止めるべく譜術を放つ。
「ミステリアス、お前は銃使いのようだが…」
「分かってる。あの魔物の弱点は目だ。…ストロングバレット!」
2発の弾丸が、フォルネウスの目に向けて吸い込まれる。
「グギャアアアアアアアアアア!!」
弾丸が命中すると、フォルネウスは苦しそうな雄叫びをあげた。
「ほら、本体はなんとかしてやるから、お前も触手退治に行って来いよ」
「ああ」
「魔神双破斬!」
「雷神招!」
レイノスとアルセリアの技を受け、右の触手は完全に動かなくなる。
少し遅れて、左側の触手もクノンとセネリオによって撃破されたようだ。
「グギャアアアアアアア!!」
2本の触手が倒され、雄叫びをあげたフォルネウスは、目からレーザーを放つ。
一同は無数に放たれるレーザーを紙一重でかわしていく。
「きゃ…」
そんな中、一人レーザーから逃げ遅れたアルセリアは、慌てて斧を盾にし防御の姿勢を取る。
だが、レーザーの威力は強く、命中こそしなかったものの斧ごとアルセリアの身体を吹き飛ばしてしまう。
「大丈夫か、セリア」
「あ、ミステリアスさん…ありがとうございます」
アルセリアはにこっと笑ってミステリアスに礼を言うと、再び前線へと戻って行った。
(ありがとう、ねえ…)
一方ミステリアスは仮面の下で困惑の表情を浮かべていた。
無論、仮面をかぶっているためその表情は誰にも見えないが。
(礼を言われる筋合いなんてないんだけどな。俺なんかが…あの子に)
「くっそ、こいつしぶといぜ!」
なかなか倒れない本体のフォルネウスに、苛立ちを募らせるレイノス。
フォルネウスは打たれ強く、なかなか倒れてはくれないのだ。
ミステリアスの弾丸を何度も眼球に受けてもう視力など存在しないはずだが、それゆえに攻撃の狙いが大雑把で、逆に読みづらい。
「あ、そうだ!ねえお嬢ちゃん」
と、その時クノンがなにかを思いついたようで、アルセリアを呼ぶ。
「え、ええ!そ、そんなの危ないですよ」
「いいからいいから!思いっきりやっちゃってよ」
「う〜ん…分かりました!」
そういうとアルセリアは、クノンの身体を支える。
そして…
「はああああああああ!それ!」
クノンの身体を、フォルネウス目がけて投げた!
アルセリアの行動に一同が驚きで呆気にとられる中、クノンの身体はフォルネウスの目の前に落ちた。
そう…文字通り【目】の前にだ。
「お嬢ちゃん、ナイスコントロール!」
そう、これがクノンの作戦。
彼がアルセリアに出した指示は、自分をフォルネウスの目の前までぶん投げろというものだった。
目が弱点なら、直接その目を狙えばいい。
「さあて、カクゴはイイかな♪…掌底破!」
「ガ…ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
至近距離からの、強力な眼球への一撃に、フォルネウスはかつてないほどの雄叫びをあげる。
「しっぶといなあ…ダケド、今度こそ、これで終わりダヨ!砕心脚!…牙狼連濤打ァ!」
「ガ………ア………」
クノンのとどめの一撃に、フォルネウスはもはや雄叫びをあげる事すらできなくなり、そのまま完全に動かなくなった。
「いやあ、助かったぜ!ミステリアス!」
「なに、困ったときはお互いさまってやつだ」
ここはレイノス達の客室。
いるのは、レイノス・セネリオ・アルセリア、そしてミステリアスだ。
リンは負傷者の治療に行っており、クノンは魔物の襲撃により故障した船の修理を行っている。
「ところで、お前がレイノス・フォン・ファブレで間違いないよな?」
「へ、ああそうだけど…てか、なんで俺の名前…」
「ああ、実はロストロに頼まれてな」
「ロストロに?」
「ああ、これはあいつからお前宛の手紙だ」
そういって渡されたそれを、レイノスは読む。
『レイノス、ごきげんよう。あなた達の旅の平穏をお祈りします。
大事な妹さんを、助けてあげてください』
「ロストロ…」
導師の心遣いに、胸を打つレイノス。
手紙の続きを読む。
『…僕もあなた達の手伝いをしたいところなのですが、あいにくダアトをそう 簡単に離れるわけにもいきません。ですのでそちらに僕の付き人を送ります。
彼、ミステリアス・ソルジャーは強くて信頼のおける僕の友です。
彼が、あなた達の助けになることを。
そして、あなた達の旅が無事に終わることを、改めてダアトから祈っています。
ロストロ・タトリン』
「まあ、そういうわけで俺はロストロに頼まれてお前たちを追いかけてきたわけだ」
「そっか…歓迎するぜ、ミステリアス!」
「よろしくお願いします、ミステリアスさん!」
レイノスはミステリアスの同行を快く了承する。
アルセリアも特に異論はないようだ。
しかし…
「そっちの黒い男は俺の事、歓迎してくれねえみたいだな…」
「教会の人間だというなら、俺の正体にも気づいているんだろう?」
「ああ、そうだな。…まさかこんな形で出会うとは思わなかった。セネリオ・バークハルス」
そういうとミステリアスは、セネリオに銃を向ける。
対するセネリオはミステリアスを睨んだまま動かない。
一触即発の状態に、レイノスとアルセリアは困惑の表情で両者を見守る。
「…な〜んてな、これから旅しようって奴を撃つ気はねえよ」
そういって、ミステリアスは銃をしまった。
「…俺を見逃すのか?」
「まあ、俺だって神託の盾がなんとなくキナ臭い状況なのは察してるからな。お前が神託の盾を出てったのも、そういうことだろ?」
「………」
「…だんまりか、まあいいさ。よろしく頼むぜ、セネリオさんよ」
スキット「気楽にいこうぜ!」
レイノス「全く、ヒヤヒヤしたぜ」
ミステリアス「はは、驚かせちまったな」
アルセリア「でも、丸く収まってよかったです」
セネリオ「………」
ミステリアス「はっはっは!そんな怖い顔してねえでもっと気楽にいこうぜ!」
セネリオ「………」
レイノス「気にするなよミステリアス。セネリオがしかめっ面なのはいつものことだし」
セネリオ「………悪かったな」
■作者メッセージ
船上の戦い決着、そしてミステリアスの加入です
ちなみにアルセリアとミステリアスの術技は外伝の方に既に書き込んでます
ちなみにアルセリアとミステリアスの術技は外伝の方に既に書き込んでます