第4章『仮面の戦士』 6
「ふあ〜あ…おはよう」
翌日。
目を覚ましたレイノスはホテルの食堂に向かう。
食堂にはすでに他のみんなが揃っていた。
「おほいよ〜、おほっひゃん」
「クノンさん、口にものを入れたまましゃべっちゃだめですよ」
朝食を口に入れたまま、クノンがしゃべる。
そんなクノンをアルセリアがたしなめる。
「さっき連絡があって、船の修理は終わったらしいわ。いつでも出航できるって」
「おお、そっか!それじゃあ飯食ったら早く港に行こうぜ」
「…お前以外はほとんど食べ終わっているがな」
船の修理が終わったというリンの言葉に、レイノスは喜ぶ。
しかし朝食を食べ終わっておらず出発の準備が一番遅れているのはレイノスであり、そんな彼にセネリオが皮肉気な呟きをぶつけるのであった。
朝食を食べ終わり、レイノス達はケテルブルクの街を出る。
「ふふふ、船では仕留めることは出来ませんでしたが、今度こそ…!」
そんな一行の様子を、怪しげな笑みを浮かべて見つめる影が一つ。
「行きなさい、ジャバウォック。彼らを仕留めるのです!」
「な、なんだこいつ!?」
突然現れた巨大な魔物に、レイノスは驚きの声をあげる。
「バカな、ジャバウォックだと!?こいつがこんなところに生息しているはずが…」
セネリオもまたその魔物に驚く。
このジャバウォックという魔物は、このシルバーナ大陸をさらに奥に行った猛吹雪地帯を住処としている魔物だ。
こんな所にいるはずがなかった。
「とにかくやるしかないヨ!三散華!」
「そういうこった…ツインバレット!」
クノンとミステリアスが先んじて攻撃を開始する。
二人に続く形で、他のメンバーたちも戦闘態勢にうつる。
「ウインドカッター!」
「雷神招!」
リンの譜術による風の刃がジャバウォックを切り裂く。
譜術に怯んだ敵に、アルセリアによる攻撃が命中する。
――FOF変化――
「襲爪雷斬!」
リンとアルセリアの攻撃によって発生した風のFOFの上に乗り、レイノスが技を放つ。
風属性を纏って変化した強力な一撃が、ジャバウォックに叩きこまれた。
連続攻撃を受けて倒れたジャバウォックだったが、すぐにまた起き上がって来る。
その上、レイノス達にさらなるピンチが訪れる。
「そんな、増援!?」
アルセリアが悲鳴に近い声で叫ぶ。
そう、ジャバウォックがさらに二体、現れたのだ。
「オカシイよ、一体ならともかく三体も…」
クノンも困惑の表情を浮かべる。
いつの間にか彼らは、三体のジャバウォックにより取り囲まれていた。
「おいどうするよセネリオ、さすがにこんな強敵を三体も相手にするなんて無茶だぜ」
「ち、仕方ない…カッシャーの部屋から奪ったこいつを使うか」
ミステリアスがセネリオにどうするのかと声をかける。
するとセネリオは、懐から何かを取り出す。
それは、中に怪しげな液体の入った小瓶だった。
「全員、俺の近くに集まれ!」
セネリオの指示に従い、みなはセネリオのもとに集まる。
「一か八かだ…それっ!」
セネリオが持っていた小瓶を地面に叩きつける。
すると、小瓶は音を立てて割れ…
次の瞬間、レイノス達の姿はその場から消えていた。
「こ、ここは港か?」
レイノスは辺りを見回す。
そこは間違いなく、昨日船を降りて入港した港、ケテルブルク港であった。
「わ、私達助かったの?」
リンもまた状況を把握できていない様子で辺りをきょろきょろと見回す。
先ほどまで戦っていたジャバウォックの姿は無い。
「お前達に話しておきたいことがある、船に乗るぞ」
そういうとセネリオは、船のあるほうへと向けて歩き出した。
レイノス達もセネリオたちの後を追い、すっかり修理が完了した船へと乗り込んだ。
「それで、話しておきたいことってなんなんだ?」
船の客室にて、レイノスがセネリオに訊ねる。
「ああ…おそらくだが、俺達はある人物に後をつけられている」
セネリオの言葉に、レイノス・リン・アルセリアは驚きの表情となるが、クノンとミステリアスは特に驚くこともなくセネリオの言葉を受け入れていた。
「ヤッパリね〜、ダアト港辺りから、なんか微妙にヤな気配を感じると思ったヨ」
どうやらクノンは、ダアト港で既にその気配について感づいていたらしい。
「私達の後をつけるって…もしかしてさっきの魔物や、船での襲撃と関係あるの?」
「ああ、おそらくな」
リンの推測をセネリオは肯定する。
船の魔物や先ほどのジャバウォックは、明らかに不審な点が多かった。
船の魔物の中には何故か海のモンスターと共に山や森に生息するモンスターが混じっており、猛吹雪地帯に住むジャバウォックが三体も現れた。
ジャバウォック一体だけなら群れからはぐれたとも考えられなくもないが、三体もいるとなるとやはり不自然であった。
「不自然な魔物の襲撃ね…まさかセネリオ、俺達の後をつけてるのは…」
ミステリアスは後をつけている人物に心当たりがあるようだ。
ミステリアスの言葉に、セネリオはコクリと頷くと、彼の言葉を引き継ぐ形で、答えた。
「お前の考えている通りだ、ミステリアス。俺達の後をつけているのは、第三師団師団長、フォルクス・ソレイユだ」
フォルクス・ソレイユ。
第三師団師団長で、変装の達人。さらに魔物を意のままに操る催眠術を得意とし、その特殊な能力ゆえに師団長に選ばれた。
チャクラムを武器とし、第二音素の譜術を得意とするが、本人の戦闘能力はそれほど高くなく、ゆえに師団長で唯一六神将に選ばれなかった。
そのためか部下からの信頼も薄く、本人の実力不相応な尊大な態度もあって神託の盾では嫌われている…
「…こんなところだ」
説明を終えたセネリオは、ふう、と息を吐く。
「つまり、船の魔物も、さっきのジャバウォックも、フォルクスの催眠術で操られてたってことか?」
レイノスの言葉にセネリオは頷く。
「奴は執念深いことで有名だ。おそらくこの先も妨害をしてくるだろう」
「へ、誰が邪魔してこようと関係ねえよ!ぶっ倒して、スクルドを取り戻す、それだけだ」
セネリオの警告に、レイノスは関係ないとばかりに威勢のいい言葉を放つ。
「とりあえず、また前みたいに船が襲われるかもしれないし、気をつけないとね」
リンの言葉に、一同はみな頷く。
第三師団師団長フォルクス・ソレイユ。
新たなる敵の存在に一同が警戒を抱く中、船は順調にグランコクマへと進んでいく。
そして一行を乗せた船は、魔物の襲撃を受けることなく無事にマルクトの首都・グランコクマへとたどり着くのであった。
スキット「謎の小瓶」
レイノス「そういやセネリオ、ジャバウォックの群れに囲まれたあの時、いったい何したんだよ?」
リン「変な小瓶が割れたと思ったら、港に着いてて…何が起こったの?」
セネリオ「あの小瓶は、地面に投げつけると一瞬で別の場所へ移動することができるものだ。六神将の一人、カッシャ―の発明だ」
アルセリア「一瞬で別の場所に…すごいですね」
セネリオ「移動の場所も、ある程度は使用者の意思が反映されるらしい。さすがに海を越えるほどの長距離移動は出来ないようだが」
レイノス「便利だなあ、それがあれば賊のやつらを追いかけるのも楽なんじゃないか?」
セネリオ「俺が持っているのはあの時使った一つだけだからな」
クノン「でもさ、それ使ってればオラクルを脱出する時も、封印術掛けられなかったんじゃないの?」
セネリオ「俺も使うのはさっきのが初めてだったからな。試作品だと聞いていたから、あの時は使うのに抵抗があった」
ミステリアス「その時使うのをしぶった結果が戦闘力の激減か…大きな代償を払っちまったもんだな」
セネリオ「言うな…結果的にあの場を切り抜けられたんだからいいだろ」
翌日。
目を覚ましたレイノスはホテルの食堂に向かう。
食堂にはすでに他のみんなが揃っていた。
「おほいよ〜、おほっひゃん」
「クノンさん、口にものを入れたまましゃべっちゃだめですよ」
朝食を口に入れたまま、クノンがしゃべる。
そんなクノンをアルセリアがたしなめる。
「さっき連絡があって、船の修理は終わったらしいわ。いつでも出航できるって」
「おお、そっか!それじゃあ飯食ったら早く港に行こうぜ」
「…お前以外はほとんど食べ終わっているがな」
船の修理が終わったというリンの言葉に、レイノスは喜ぶ。
しかし朝食を食べ終わっておらず出発の準備が一番遅れているのはレイノスであり、そんな彼にセネリオが皮肉気な呟きをぶつけるのであった。
朝食を食べ終わり、レイノス達はケテルブルクの街を出る。
「ふふふ、船では仕留めることは出来ませんでしたが、今度こそ…!」
そんな一行の様子を、怪しげな笑みを浮かべて見つめる影が一つ。
「行きなさい、ジャバウォック。彼らを仕留めるのです!」
「な、なんだこいつ!?」
突然現れた巨大な魔物に、レイノスは驚きの声をあげる。
「バカな、ジャバウォックだと!?こいつがこんなところに生息しているはずが…」
セネリオもまたその魔物に驚く。
このジャバウォックという魔物は、このシルバーナ大陸をさらに奥に行った猛吹雪地帯を住処としている魔物だ。
こんな所にいるはずがなかった。
「とにかくやるしかないヨ!三散華!」
「そういうこった…ツインバレット!」
クノンとミステリアスが先んじて攻撃を開始する。
二人に続く形で、他のメンバーたちも戦闘態勢にうつる。
「ウインドカッター!」
「雷神招!」
リンの譜術による風の刃がジャバウォックを切り裂く。
譜術に怯んだ敵に、アルセリアによる攻撃が命中する。
――FOF変化――
「襲爪雷斬!」
リンとアルセリアの攻撃によって発生した風のFOFの上に乗り、レイノスが技を放つ。
風属性を纏って変化した強力な一撃が、ジャバウォックに叩きこまれた。
連続攻撃を受けて倒れたジャバウォックだったが、すぐにまた起き上がって来る。
その上、レイノス達にさらなるピンチが訪れる。
「そんな、増援!?」
アルセリアが悲鳴に近い声で叫ぶ。
そう、ジャバウォックがさらに二体、現れたのだ。
「オカシイよ、一体ならともかく三体も…」
クノンも困惑の表情を浮かべる。
いつの間にか彼らは、三体のジャバウォックにより取り囲まれていた。
「おいどうするよセネリオ、さすがにこんな強敵を三体も相手にするなんて無茶だぜ」
「ち、仕方ない…カッシャーの部屋から奪ったこいつを使うか」
ミステリアスがセネリオにどうするのかと声をかける。
するとセネリオは、懐から何かを取り出す。
それは、中に怪しげな液体の入った小瓶だった。
「全員、俺の近くに集まれ!」
セネリオの指示に従い、みなはセネリオのもとに集まる。
「一か八かだ…それっ!」
セネリオが持っていた小瓶を地面に叩きつける。
すると、小瓶は音を立てて割れ…
次の瞬間、レイノス達の姿はその場から消えていた。
「こ、ここは港か?」
レイノスは辺りを見回す。
そこは間違いなく、昨日船を降りて入港した港、ケテルブルク港であった。
「わ、私達助かったの?」
リンもまた状況を把握できていない様子で辺りをきょろきょろと見回す。
先ほどまで戦っていたジャバウォックの姿は無い。
「お前達に話しておきたいことがある、船に乗るぞ」
そういうとセネリオは、船のあるほうへと向けて歩き出した。
レイノス達もセネリオたちの後を追い、すっかり修理が完了した船へと乗り込んだ。
「それで、話しておきたいことってなんなんだ?」
船の客室にて、レイノスがセネリオに訊ねる。
「ああ…おそらくだが、俺達はある人物に後をつけられている」
セネリオの言葉に、レイノス・リン・アルセリアは驚きの表情となるが、クノンとミステリアスは特に驚くこともなくセネリオの言葉を受け入れていた。
「ヤッパリね〜、ダアト港辺りから、なんか微妙にヤな気配を感じると思ったヨ」
どうやらクノンは、ダアト港で既にその気配について感づいていたらしい。
「私達の後をつけるって…もしかしてさっきの魔物や、船での襲撃と関係あるの?」
「ああ、おそらくな」
リンの推測をセネリオは肯定する。
船の魔物や先ほどのジャバウォックは、明らかに不審な点が多かった。
船の魔物の中には何故か海のモンスターと共に山や森に生息するモンスターが混じっており、猛吹雪地帯に住むジャバウォックが三体も現れた。
ジャバウォック一体だけなら群れからはぐれたとも考えられなくもないが、三体もいるとなるとやはり不自然であった。
「不自然な魔物の襲撃ね…まさかセネリオ、俺達の後をつけてるのは…」
ミステリアスは後をつけている人物に心当たりがあるようだ。
ミステリアスの言葉に、セネリオはコクリと頷くと、彼の言葉を引き継ぐ形で、答えた。
「お前の考えている通りだ、ミステリアス。俺達の後をつけているのは、第三師団師団長、フォルクス・ソレイユだ」
フォルクス・ソレイユ。
第三師団師団長で、変装の達人。さらに魔物を意のままに操る催眠術を得意とし、その特殊な能力ゆえに師団長に選ばれた。
チャクラムを武器とし、第二音素の譜術を得意とするが、本人の戦闘能力はそれほど高くなく、ゆえに師団長で唯一六神将に選ばれなかった。
そのためか部下からの信頼も薄く、本人の実力不相応な尊大な態度もあって神託の盾では嫌われている…
「…こんなところだ」
説明を終えたセネリオは、ふう、と息を吐く。
「つまり、船の魔物も、さっきのジャバウォックも、フォルクスの催眠術で操られてたってことか?」
レイノスの言葉にセネリオは頷く。
「奴は執念深いことで有名だ。おそらくこの先も妨害をしてくるだろう」
「へ、誰が邪魔してこようと関係ねえよ!ぶっ倒して、スクルドを取り戻す、それだけだ」
セネリオの警告に、レイノスは関係ないとばかりに威勢のいい言葉を放つ。
「とりあえず、また前みたいに船が襲われるかもしれないし、気をつけないとね」
リンの言葉に、一同はみな頷く。
第三師団師団長フォルクス・ソレイユ。
新たなる敵の存在に一同が警戒を抱く中、船は順調にグランコクマへと進んでいく。
そして一行を乗せた船は、魔物の襲撃を受けることなく無事にマルクトの首都・グランコクマへとたどり着くのであった。
スキット「謎の小瓶」
レイノス「そういやセネリオ、ジャバウォックの群れに囲まれたあの時、いったい何したんだよ?」
リン「変な小瓶が割れたと思ったら、港に着いてて…何が起こったの?」
セネリオ「あの小瓶は、地面に投げつけると一瞬で別の場所へ移動することができるものだ。六神将の一人、カッシャ―の発明だ」
アルセリア「一瞬で別の場所に…すごいですね」
セネリオ「移動の場所も、ある程度は使用者の意思が反映されるらしい。さすがに海を越えるほどの長距離移動は出来ないようだが」
レイノス「便利だなあ、それがあれば賊のやつらを追いかけるのも楽なんじゃないか?」
セネリオ「俺が持っているのはあの時使った一つだけだからな」
クノン「でもさ、それ使ってればオラクルを脱出する時も、封印術掛けられなかったんじゃないの?」
セネリオ「俺も使うのはさっきのが初めてだったからな。試作品だと聞いていたから、あの時は使うのに抵抗があった」
ミステリアス「その時使うのをしぶった結果が戦闘力の激減か…大きな代償を払っちまったもんだな」
セネリオ「言うな…結果的にあの場を切り抜けられたんだからいいだろ」