第5章『フォルクス・ソレイユ』 8
レイノス達が追う賊共はとある場所で人と会っていた。
エンゲーブのような人の多い場所ではない、あまり人の寄り付かないところだ。
彼らが会っていたのは、フードをかぶった一人の女商人だった。
「ファブレの令嬢はどこだ…?」
「へへ、心配しなくとも、傷一つなく連れてきてやったぜ」
下卑た笑いを見せる賊の頭は、腕に抱かれた少女・スクルドを差し出す。
スクルドは気を失っており、ぐったりと倒れている。
「あんたに渡された眠り薬で、ファブレの令嬢はぐっすりだ」
「確かに受け取った」
「へ、金になる話だったらいつでも持ってきてくれよな!ガハハハハハハ!」
賊の頭の下品な笑い声を気にすることなく、女商人はスクルドを受け取る。
「それでは、さらばだ」
「おい、ちょっと待て」
立ち去ろうとした商人を頭が呼び止め、女商人は振り向く。
「例の約束、確かだろうな」
「ああ、数日したらこの令嬢はお前たちに返す」
「…わざわざ高い金払ってさらわせたのを返すとは、何を考えてやがる?」
「その質問は契約内容に含まれていない」
女はそういうと、その場を立ち去った。
「け、依頼主とはいえ、愛想のない不気味な女だぜ」
「これで後は、こいつを連れ帰れば任務完了か」
女商人―その真の正体である第六師団師団長、グレイシア・ローグは呟く。
彼女はクラノスの命で賊からスクルドを回収しにきたのだった。
本来ならこれはフォルクスの役目だったのだが、スクルドを追う一行の追跡速度が予想外に速く、フォルクスは彼らの足止めで手いっぱいとなってしまったため、グレイシアが代わりに行う事となったのだ。
「全くフォルクス…余計な手間をかけさせてくれたものだな」
グレイシアは、フォルクスの無能ぶりを愚痴りつつ、カッシャ―からもらった小瓶で抱えたスクルドと共にその場から消えた。
「な……こ、これは!?」
一方、グレイシアに罵られていることなど知る由もないフォルクスは、目の前の状況に唖然としていた。
あれだけいた魔物が…ほとんど倒され、残っているのは数匹だけとなっていたのだ。
「ヤッホ〜♪犯人はゲンバに戻ってくるってヤツかな〜」
いち早くフォルクスの姿を目ざとく見つけたクノンが、腕をポキポキさせながら構える。
「フォルクス、今度は逃がさねえぞ!」
レイノスが、剣を構える。
「クラノスについて知っていること、話してもらうぞ」
セネリオもまたフォルクスに向けてラグネルとエタルドを向ける。
他のみんなも、魔物をあらかた片づけるとフォルクスと向き合っていた。
全員、疲労で息が上がっているが、まだ戦うだけの余力は残っていた。
「ふ、ふん!そんなボロボロで、これ以上何ができるというのですか!私が自らの手で引導を渡してやればいいだけのことです!」
そういうとフォルクスは、どこからか取り出したチャクラムを構え、戦闘態勢となった。
「グレイブ!」
セネリオの足元に、岩の槍がいくつも現れる。
しかしセネリオはその槍をジャンプでかわす。
「そこです!レイトラスト!」
跳躍により身動きの取れないセネリオに対し、今がチャンスとばかりにチャクラムを投げつける。
だがしかし、セネリオは空中でチャクラムを二本の剣で弾き飛ばす。
弾き飛ばされたチャクラムはフォルクスのもとへと戻り、セネリオは地面に着地する。
「俺に代わって六神将となると言ったな。その程度の実力で、よくもそのような言葉が吐けたものだな」
「な、なんですってえ…!」
「漆黒ばっかかまってちゃダメだよ♪」
そういってフォルクスに接近するのは、クノンだった。
超スピードで一気に間合いを詰めたクノンは、フォルクスに拳をぶつけようとする。
間一髪それをかわすフォルクスだったが、彼らの攻撃はまだ終わらない。
「フリップショット!」
「うお!?」
ミステリアスの銃弾がフォルクスの足下を撃ちぬき、足下から吹きあげてきた旋風によりフォルクスの身体が浮いた。
「孤月閃!」
「があああ!」
そこへアルセリアの月の軌道を描いた斬り上げが放たれ、フォルクスの身体がさらに高く空を飛ぶ。
「もう一つおまけだ!スパイラルショット!」
さらに続けて放たれるミステリアスの風を纏った弾丸。
「ウインドカッター!」
そこへ詠唱を終えたリンの譜術が、追い打ちをかけるようにフォルクスの身体を切り刻む。
「これでもくらええええ!!」
だが、彼らの攻撃はまだ終わらない。
空中を舞うフォルクス目がけて、レイノスが走る!
――FOF変化――
「襲爪雷斬!!」
上空から放たれた雷を伴ったレイノスの斬撃。
それは確かにフォルクスへと届き、
「ぐはあああああああああああああああああああああああああ!!」
フォルクスの雄叫びが、辺りにこだました。
「ちぃ…状況が不利のようですね。ここは撤退するとしましょうか」
「逃がすか!」
ミステリアスが三度フォルクス目がけて銃弾を放つ。
ミステリアスの銃弾を、今回はなんとかジャンプでかわすフォルクス。
そして、タイミングを見計らったかのように鳥系モンスターがジャンプしたフォルクスの前に現れ、彼を背中に乗せた。
「この場は逃げさせてもらいます。今回は不覚を取りましたが、次は負けませんよ!」
「待て!フォルクス!」
レイノスが叫ぶが、待てと言われて待つバカなどおらず、フォルクスの姿は遠ざかっていく。
「本物のアランは、チーグルの森にいますよ。助けたかったらどうぞご自由に」
そう言い残すと、フォルクスの姿は完全に見えなくなってしまった。
一行は、とりあえずすぐ近くのエンゲーブに足を踏み入れた。
「…ひとまず、今日はここで一泊しよう」
村についてそう言葉を発したのは、セネリオだ。
「…アランを助けなくて、いいのかよ?」
やや不満そうに、レイノスが言う。
フォルクスの言葉を信じるなら、彼らが最初に会ったのは本物のアランであり、彼は現在チーグルの森に置き去りにされているという事だ。
チーグルの森には魔物もいるため、早く保護しなければ危険だ。
「言いたいことは分かる。だが今は休むことが先決だ。俺やお前だけじゃない。他のやつらもさっきまでの戦闘で相当消耗している」
「だけど…」
「お坊ちゃん、漆黒の言う通りだよ。あのフォルクスとかいうヤツ、相当ワル知恵働くみたいだしサ、ワザワザボク達に居場所を知らせたって事は、また今までみたいに魔物を用意して待ってるに違いないヨ」
「だからこそ、今日はしっかり休んで、明日確実にアランを助けるんだ」
「ぐう…」
セネリオに続き、クノンやミステリアスにも諭され、レイノスは返答に窮する。
「大丈夫よレイノス。アランさんもスクルドも、きっと助けられる」
「無理は禁物です。今は無事を信じて、身体を休めましょう」
「リン…アルセリア……。分かったよ」
リンやアルセリアにも説得され、ようやくレイノスは渋々ながらも納得した。
そして一行は、宿屋に向かった。
ちなみに少し前までこの宿屋には3人の六神将が宿泊していたのだが、彼らは素性を隠して宿泊していた為、一行がそのことに気づくことはなかった。
スキット「フォルクスの力、六神将の力」
レイノス「にしてもフォルクスの奴、師団長って割に大したことなかったな」
セネリオ「あいつは変装や魔物を操る力などの特殊能力を買われて師団長になったからな。本人の実力はあの程度だ」
リン「六神将は、あれよりもずっと強いの?」
セネリオ「ああ、今の俺達では束になっても敵わないだろう」
ミステリアス「ああそうだな、俺たち全員で一人を相手にしても、たぶん勝てない」
アルセリア「そんなに強いんですか!?」
クノン「ウワァ…どんな化け物だよ」
レイノス「六神将か…封印術を掛けられてる今のセネリオでさえ相当強いってのに、上には上がいるんだな」
エンゲーブのような人の多い場所ではない、あまり人の寄り付かないところだ。
彼らが会っていたのは、フードをかぶった一人の女商人だった。
「ファブレの令嬢はどこだ…?」
「へへ、心配しなくとも、傷一つなく連れてきてやったぜ」
下卑た笑いを見せる賊の頭は、腕に抱かれた少女・スクルドを差し出す。
スクルドは気を失っており、ぐったりと倒れている。
「あんたに渡された眠り薬で、ファブレの令嬢はぐっすりだ」
「確かに受け取った」
「へ、金になる話だったらいつでも持ってきてくれよな!ガハハハハハハ!」
賊の頭の下品な笑い声を気にすることなく、女商人はスクルドを受け取る。
「それでは、さらばだ」
「おい、ちょっと待て」
立ち去ろうとした商人を頭が呼び止め、女商人は振り向く。
「例の約束、確かだろうな」
「ああ、数日したらこの令嬢はお前たちに返す」
「…わざわざ高い金払ってさらわせたのを返すとは、何を考えてやがる?」
「その質問は契約内容に含まれていない」
女はそういうと、その場を立ち去った。
「け、依頼主とはいえ、愛想のない不気味な女だぜ」
「これで後は、こいつを連れ帰れば任務完了か」
女商人―その真の正体である第六師団師団長、グレイシア・ローグは呟く。
彼女はクラノスの命で賊からスクルドを回収しにきたのだった。
本来ならこれはフォルクスの役目だったのだが、スクルドを追う一行の追跡速度が予想外に速く、フォルクスは彼らの足止めで手いっぱいとなってしまったため、グレイシアが代わりに行う事となったのだ。
「全くフォルクス…余計な手間をかけさせてくれたものだな」
グレイシアは、フォルクスの無能ぶりを愚痴りつつ、カッシャ―からもらった小瓶で抱えたスクルドと共にその場から消えた。
「な……こ、これは!?」
一方、グレイシアに罵られていることなど知る由もないフォルクスは、目の前の状況に唖然としていた。
あれだけいた魔物が…ほとんど倒され、残っているのは数匹だけとなっていたのだ。
「ヤッホ〜♪犯人はゲンバに戻ってくるってヤツかな〜」
いち早くフォルクスの姿を目ざとく見つけたクノンが、腕をポキポキさせながら構える。
「フォルクス、今度は逃がさねえぞ!」
レイノスが、剣を構える。
「クラノスについて知っていること、話してもらうぞ」
セネリオもまたフォルクスに向けてラグネルとエタルドを向ける。
他のみんなも、魔物をあらかた片づけるとフォルクスと向き合っていた。
全員、疲労で息が上がっているが、まだ戦うだけの余力は残っていた。
「ふ、ふん!そんなボロボロで、これ以上何ができるというのですか!私が自らの手で引導を渡してやればいいだけのことです!」
そういうとフォルクスは、どこからか取り出したチャクラムを構え、戦闘態勢となった。
「グレイブ!」
セネリオの足元に、岩の槍がいくつも現れる。
しかしセネリオはその槍をジャンプでかわす。
「そこです!レイトラスト!」
跳躍により身動きの取れないセネリオに対し、今がチャンスとばかりにチャクラムを投げつける。
だがしかし、セネリオは空中でチャクラムを二本の剣で弾き飛ばす。
弾き飛ばされたチャクラムはフォルクスのもとへと戻り、セネリオは地面に着地する。
「俺に代わって六神将となると言ったな。その程度の実力で、よくもそのような言葉が吐けたものだな」
「な、なんですってえ…!」
「漆黒ばっかかまってちゃダメだよ♪」
そういってフォルクスに接近するのは、クノンだった。
超スピードで一気に間合いを詰めたクノンは、フォルクスに拳をぶつけようとする。
間一髪それをかわすフォルクスだったが、彼らの攻撃はまだ終わらない。
「フリップショット!」
「うお!?」
ミステリアスの銃弾がフォルクスの足下を撃ちぬき、足下から吹きあげてきた旋風によりフォルクスの身体が浮いた。
「孤月閃!」
「があああ!」
そこへアルセリアの月の軌道を描いた斬り上げが放たれ、フォルクスの身体がさらに高く空を飛ぶ。
「もう一つおまけだ!スパイラルショット!」
さらに続けて放たれるミステリアスの風を纏った弾丸。
「ウインドカッター!」
そこへ詠唱を終えたリンの譜術が、追い打ちをかけるようにフォルクスの身体を切り刻む。
「これでもくらええええ!!」
だが、彼らの攻撃はまだ終わらない。
空中を舞うフォルクス目がけて、レイノスが走る!
――FOF変化――
「襲爪雷斬!!」
上空から放たれた雷を伴ったレイノスの斬撃。
それは確かにフォルクスへと届き、
「ぐはあああああああああああああああああああああああああ!!」
フォルクスの雄叫びが、辺りにこだました。
「ちぃ…状況が不利のようですね。ここは撤退するとしましょうか」
「逃がすか!」
ミステリアスが三度フォルクス目がけて銃弾を放つ。
ミステリアスの銃弾を、今回はなんとかジャンプでかわすフォルクス。
そして、タイミングを見計らったかのように鳥系モンスターがジャンプしたフォルクスの前に現れ、彼を背中に乗せた。
「この場は逃げさせてもらいます。今回は不覚を取りましたが、次は負けませんよ!」
「待て!フォルクス!」
レイノスが叫ぶが、待てと言われて待つバカなどおらず、フォルクスの姿は遠ざかっていく。
「本物のアランは、チーグルの森にいますよ。助けたかったらどうぞご自由に」
そう言い残すと、フォルクスの姿は完全に見えなくなってしまった。
一行は、とりあえずすぐ近くのエンゲーブに足を踏み入れた。
「…ひとまず、今日はここで一泊しよう」
村についてそう言葉を発したのは、セネリオだ。
「…アランを助けなくて、いいのかよ?」
やや不満そうに、レイノスが言う。
フォルクスの言葉を信じるなら、彼らが最初に会ったのは本物のアランであり、彼は現在チーグルの森に置き去りにされているという事だ。
チーグルの森には魔物もいるため、早く保護しなければ危険だ。
「言いたいことは分かる。だが今は休むことが先決だ。俺やお前だけじゃない。他のやつらもさっきまでの戦闘で相当消耗している」
「だけど…」
「お坊ちゃん、漆黒の言う通りだよ。あのフォルクスとかいうヤツ、相当ワル知恵働くみたいだしサ、ワザワザボク達に居場所を知らせたって事は、また今までみたいに魔物を用意して待ってるに違いないヨ」
「だからこそ、今日はしっかり休んで、明日確実にアランを助けるんだ」
「ぐう…」
セネリオに続き、クノンやミステリアスにも諭され、レイノスは返答に窮する。
「大丈夫よレイノス。アランさんもスクルドも、きっと助けられる」
「無理は禁物です。今は無事を信じて、身体を休めましょう」
「リン…アルセリア……。分かったよ」
リンやアルセリアにも説得され、ようやくレイノスは渋々ながらも納得した。
そして一行は、宿屋に向かった。
ちなみに少し前までこの宿屋には3人の六神将が宿泊していたのだが、彼らは素性を隠して宿泊していた為、一行がそのことに気づくことはなかった。
スキット「フォルクスの力、六神将の力」
レイノス「にしてもフォルクスの奴、師団長って割に大したことなかったな」
セネリオ「あいつは変装や魔物を操る力などの特殊能力を買われて師団長になったからな。本人の実力はあの程度だ」
リン「六神将は、あれよりもずっと強いの?」
セネリオ「ああ、今の俺達では束になっても敵わないだろう」
ミステリアス「ああそうだな、俺たち全員で一人を相手にしても、たぶん勝てない」
アルセリア「そんなに強いんですか!?」
クノン「ウワァ…どんな化け物だよ」
レイノス「六神将か…封印術を掛けられてる今のセネリオでさえ相当強いってのに、上には上がいるんだな」
■作者メッセージ
今回はフォルクス戦でした。
次回からチーグルの森…もうすぐシノンに会える〜♪
次回からチーグルの森…もうすぐシノンに会える〜♪