第二話 「疑い」
謎の少女と出会ってから一日が経った。そしてその日を境に、俺の見る夢は日に日に現実味を増していった。夢に出てくる主人公、ソラ。そのソラがいつも手に持っている大きな鍵。
あれは―――――何だ―――――?
「ソラ・・・。」
だんだん夢とは思えなくなってくるこの感じ。この感じは一体何なんだ。ソラ、お前、本当は―――――・・・。
仕度を済ませたロクサスが向かったのは、いつもの場所。そこには既にいつもの仲間、ハイネ、ピンツ、オレットの三人が揃っていて、何やら話し合っている。そのうちの一人、オレットが、入り口で佇むロクサスの存在に気が付くと、いつもと変わらぬ調子で声をかけた。
「おはよう、ロクサス。」
「あ―――――うん、おはよう。」
ロクサスは答えると、隅っこに座り三人の様子を見詰めた。表情から読み取れるが、楽しい話題ではなさそうだ。そうしてロクサスを交えた四人での話し合いが始まった。どうやら話の内容はここ最近街で騒動になっていた泥棒事件の事らしく、それについて討論している三人の表情はいつもより強張っている。
「街で色んなものが盗まれてるのは事実だし、サイファーとはながーい因縁があるから、俺達が犯人だと思うのは千歩譲って許してやってもいい。でもとにかく許せないのは―――――あいつら、俺達が犯人だってあちこちで言いふらしてるってことだ!おかげで世間様からは泥棒扱い!こんな腹立つことあるか!?」
成程、ハイネが異様に怒っているのはその為か。演説のような言葉を一気に吐き出すと、ハイネはいつも座っている木箱の上から飛び降りその拳を振り上げた。そうして言葉を続けると、今度はロクサスを振り返り、その青く純粋な瞳をじっと見つめる。
「ええっと―――――犯人を探そう。真犯人を見つければ誰もごちゃごちゃ言わないだろ?」
「そうだね、まずは私達の信用回復だよね。」
あまりちゃんと話を聞いていなかったロクサスが、ハイネの視線に慌てて一瞬体の動きを止めたのちに出した答えだった。ピンツとオレットは言わずもがな賛成したが、ハイネだけは違った。どうにかしてサイファーに一泡吹かせなければ気が済まないらしい。
ロクサスがハイネを説得しようと口を開いた瞬間、いきなりピンツの声が辺りに響き渡った。
「どうしたんだよ?」
ロクサスとの会話に水を差され、余計に不愉快になったハイネがピンツを振り返る。ピンツは小さなカメラを手にしたまま、彼らにとっての宝箱なる箱に視線を向けてただ茫然と立ち尽くしていた。彼を除く三人が宝箱に駆け寄り中を覗くと、そこにあるはずの“もの”がない。
「どういうこと?私達の・・・・・・が、ない・・・?」
そう口にした瞬間、オレットが喉を押さえつけ不安そうにロクサスを見詰める。どうやら盗まれたのはものだけじゃない。言葉までがなくなってしまっている。
「・・・これは確かにサイファーどころじゃないな。」
「まずは聞き込みだ。」
そうして走り出そうとしたロクサスが、ばったりと地に倒れこむ。足に力が入らない。そうして意識の朦朧とする中、頭に知らない男の低い声が響き渡った。
心が帰ってくる―――――目覚めはもうすぐだな。
どのくらい気を失っていたのかは分からない。けど気付いた時はピンツの心配そうな表情を伴った顔がじっと自分を見詰めていた。
「大丈夫?」
「あ、ああ。」
立ち上がって前に視線をやると、裏路地には日を背にこちらを見詰めているハイネとオレットの姿があった。
「一瞬、だったのか・・・?」
だいぶ気を失ってた気もするけど。
「オイ、ロクサス!早く来いよ!」
急かし立てるハイネの背を追うように、ロクサス達は走り出した。
捜査は始まった。まずは被害者に手当たり次第聞き込みをしていくしかないのだが、どうにもその被害者は商店街の人ほとんど全員らしい。溜息をついた一行がまず最初に向かったのは、アイテム屋を営むウォーレスのところ。
「よう、ロクサス。お前があんなことするなんてな・・・。」
「泥棒は俺達じゃないよ!」
返答を聞くや否や、ウォーレスはわずかに首を振って見せる。何を盗まれたのか聞いてみても、本当は知ってるくせにの一点張りだ。そうしてまわされた先は、アクセサリー屋のジェシー。しかし、そこでもやはり態度は変わらず、得られた情報もこれといってなかった。
肩をすくめて四人が向かったのは、おなじみの駄菓子屋。エルミナおばあさんは温厚な性格だし、昨日もアイスを売ってくれたから、何か知っていることを話してくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に駄菓子屋へ行くと、そこには昨日と同じようにクローネがアイスを手におばあさんと話をしていた。ハイネが勢いよく立ち止まる。
「おや、ハイネ。シーソルトアイスかい?」
「あ・・・・・・じゃなくて・・・っ。」
「おばあさんが盗まれたものを教えて欲しいんだ。」
まともに話せないハイネに代わり、ロクサスが尋ねる。店の端で首を傾げながらこちらを見詰めているクローネは、口からアイスを離して、一行の一番端にいたハイネに話しかけた。
「・・・泥棒事件の事?」
「えっ・・・、まぁ、な。犯人じゃないのに犯人扱いされてたまったもんじゃないからな!」
クローネはしばらくハイネを見詰めていたが、その目線をピンツ、オレットと順に巡らせると口を開いた。
「空き地に噂を撒き散らしてる人がいるよ。よかったら犯人捜し、手伝おうか?」
「俺達が犯人じゃないって信じてくれんのか?」
「うん、何となくそう思うから。」
ハイネの話が終わると同時に、ロクサスとおばあさんの話も終わったらしい。クローネを含めた五人はおばあさんに頭を下げると、皆空き地を目指して走り出した。
あれは―――――何だ―――――?
「ソラ・・・。」
だんだん夢とは思えなくなってくるこの感じ。この感じは一体何なんだ。ソラ、お前、本当は―――――・・・。
仕度を済ませたロクサスが向かったのは、いつもの場所。そこには既にいつもの仲間、ハイネ、ピンツ、オレットの三人が揃っていて、何やら話し合っている。そのうちの一人、オレットが、入り口で佇むロクサスの存在に気が付くと、いつもと変わらぬ調子で声をかけた。
「おはよう、ロクサス。」
「あ―――――うん、おはよう。」
ロクサスは答えると、隅っこに座り三人の様子を見詰めた。表情から読み取れるが、楽しい話題ではなさそうだ。そうしてロクサスを交えた四人での話し合いが始まった。どうやら話の内容はここ最近街で騒動になっていた泥棒事件の事らしく、それについて討論している三人の表情はいつもより強張っている。
「街で色んなものが盗まれてるのは事実だし、サイファーとはながーい因縁があるから、俺達が犯人だと思うのは千歩譲って許してやってもいい。でもとにかく許せないのは―――――あいつら、俺達が犯人だってあちこちで言いふらしてるってことだ!おかげで世間様からは泥棒扱い!こんな腹立つことあるか!?」
成程、ハイネが異様に怒っているのはその為か。演説のような言葉を一気に吐き出すと、ハイネはいつも座っている木箱の上から飛び降りその拳を振り上げた。そうして言葉を続けると、今度はロクサスを振り返り、その青く純粋な瞳をじっと見つめる。
「ええっと―――――犯人を探そう。真犯人を見つければ誰もごちゃごちゃ言わないだろ?」
「そうだね、まずは私達の信用回復だよね。」
あまりちゃんと話を聞いていなかったロクサスが、ハイネの視線に慌てて一瞬体の動きを止めたのちに出した答えだった。ピンツとオレットは言わずもがな賛成したが、ハイネだけは違った。どうにかしてサイファーに一泡吹かせなければ気が済まないらしい。
ロクサスがハイネを説得しようと口を開いた瞬間、いきなりピンツの声が辺りに響き渡った。
「どうしたんだよ?」
ロクサスとの会話に水を差され、余計に不愉快になったハイネがピンツを振り返る。ピンツは小さなカメラを手にしたまま、彼らにとっての宝箱なる箱に視線を向けてただ茫然と立ち尽くしていた。彼を除く三人が宝箱に駆け寄り中を覗くと、そこにあるはずの“もの”がない。
「どういうこと?私達の・・・・・・が、ない・・・?」
そう口にした瞬間、オレットが喉を押さえつけ不安そうにロクサスを見詰める。どうやら盗まれたのはものだけじゃない。言葉までがなくなってしまっている。
「・・・これは確かにサイファーどころじゃないな。」
「まずは聞き込みだ。」
そうして走り出そうとしたロクサスが、ばったりと地に倒れこむ。足に力が入らない。そうして意識の朦朧とする中、頭に知らない男の低い声が響き渡った。
心が帰ってくる―――――目覚めはもうすぐだな。
どのくらい気を失っていたのかは分からない。けど気付いた時はピンツの心配そうな表情を伴った顔がじっと自分を見詰めていた。
「大丈夫?」
「あ、ああ。」
立ち上がって前に視線をやると、裏路地には日を背にこちらを見詰めているハイネとオレットの姿があった。
「一瞬、だったのか・・・?」
だいぶ気を失ってた気もするけど。
「オイ、ロクサス!早く来いよ!」
急かし立てるハイネの背を追うように、ロクサス達は走り出した。
捜査は始まった。まずは被害者に手当たり次第聞き込みをしていくしかないのだが、どうにもその被害者は商店街の人ほとんど全員らしい。溜息をついた一行がまず最初に向かったのは、アイテム屋を営むウォーレスのところ。
「よう、ロクサス。お前があんなことするなんてな・・・。」
「泥棒は俺達じゃないよ!」
返答を聞くや否や、ウォーレスはわずかに首を振って見せる。何を盗まれたのか聞いてみても、本当は知ってるくせにの一点張りだ。そうしてまわされた先は、アクセサリー屋のジェシー。しかし、そこでもやはり態度は変わらず、得られた情報もこれといってなかった。
肩をすくめて四人が向かったのは、おなじみの駄菓子屋。エルミナおばあさんは温厚な性格だし、昨日もアイスを売ってくれたから、何か知っていることを話してくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に駄菓子屋へ行くと、そこには昨日と同じようにクローネがアイスを手におばあさんと話をしていた。ハイネが勢いよく立ち止まる。
「おや、ハイネ。シーソルトアイスかい?」
「あ・・・・・・じゃなくて・・・っ。」
「おばあさんが盗まれたものを教えて欲しいんだ。」
まともに話せないハイネに代わり、ロクサスが尋ねる。店の端で首を傾げながらこちらを見詰めているクローネは、口からアイスを離して、一行の一番端にいたハイネに話しかけた。
「・・・泥棒事件の事?」
「えっ・・・、まぁ、な。犯人じゃないのに犯人扱いされてたまったもんじゃないからな!」
クローネはしばらくハイネを見詰めていたが、その目線をピンツ、オレットと順に巡らせると口を開いた。
「空き地に噂を撒き散らしてる人がいるよ。よかったら犯人捜し、手伝おうか?」
「俺達が犯人じゃないって信じてくれんのか?」
「うん、何となくそう思うから。」
ハイネの話が終わると同時に、ロクサスとおばあさんの話も終わったらしい。クローネを含めた五人はおばあさんに頭を下げると、皆空き地を目指して走り出した。