CROSS4【ペルソナVS聖獣】
「結果は、赤チームの勝利ですね」
「つっても、ほぼリズのお陰みたいなもんだけどな」
鈴神はボウリング場の戦いに関心するが、ダークがそれにさらに付け足す。確かに彼女は見た目からは考えられないほど凄かった。おまけにとても楽しそうな表情で、多少先程の事は気にしていながらも平然としていた。
結果はリズのお陰で赤チームが勝利、二位が緑チーム、最下位が青チームとなっている。
「さて、ボウリングも終わった事だし、」
「はい、リズさん…辛いかもしれませんが、話してもらえませんか?こちらもわからない事が多いので」
「うん……」
普段は冷静かつドライな鈴神でも流石にリズの事を心配しているようだ。鈴神の目は『無理に話さなくても良い』と訴えているようだったが、それでもリズは話してくれた。
「あれは、アークソフィアで新しい店を開いた後の事だった……」
それからと言うもののリズの回想で殆どの時間を使った。リズはどうやら本当に先程言っていた武具店を営んでいたらしく、アークソフィアと言う聞き慣れない町でそれを開いたらしい。
そこで何故か自身の鍛冶の腕も落ちていて、途方に暮れていた所何者かが現れ、そいつに気絶させられた。
それからは俺達も知っての通り、あの闇色の空から落ちてきたと言う。気絶させられてからこの世界にやって来るまでの間の事は一切覚えていないらしく、リズの話の中にはスキルだとかプレイヤーなどの日常的には聞かないワードが幾つか確認出来た。
「なるほど……その人の外見は覚えてますか?」
「えっと確か……私の知り合いに似てたような気が………
駄目、思い出せない」
「…これはあくまで仮説に過ぎないのですが」
とここで鈴神が自身の意見を述べた。
「恐らくリズさんは、この“次元”の人ではありません」
「それはどういう事なんだ?」
「ディアさん、言葉の通りですよ。この世にはたくさんの世界がありますが、それら纏めて一つの“次元”です
次元は一つではなく、幾つか種類が存在していて、それぞれが決して交わる事は無いのですが……」
「それが何かの拍子に交わってしまったって事か?」
「そうですライガさん、でなければ他の次元から人が来るなんてあり得ない。リズさん、先程言っていたプレイヤーとスキルと言うのはどう言った言葉なのですか?」
「えーと、貴方達本当に知らないの?」
困惑するリズの様子を見て鈴神は瞳を光らせ、ゆっくりと頷いた。
「やはり、話が噛み合っていない。つまり他の次元から来たと言うのは、間違いでは無いでしょう」
「と言う事はリズさんは本当に……?」
紫音が信じられないと言うような表情でリズを見た。当のリズも今自分の身に起こっている事に混乱している。
「っ!もしかしてリズを気絶させたやつは!」
「そう、恐らくリズさんを連れ去り、この次元へ落としたのでしょう」
クロナの意見は鈴神にも賛同された。リズを気絶させここに落としたやつは一体何が目的なんだろうか?そんな事を考えていると、突如ボウリング場の入り口から爆発音が聞こえた。
「何だっ!?」
入り口方面へ向かってみると、そこには黒い服に身を包んだ高校生くらいの少年がいた。薄い黒髪の下に隠れたその瞳からは明らかに普通でない物を感じる。
「やはりな、キリスが捕らえた“器”とはお前か」
「お前は誰だ!」
ダークが先行し、キーブレードが変化した姿である太刀で攻撃を仕掛けるも、謎の少年が出したあるものによって簡単に弾かれた。
「ペルソナ!」
聞き慣れない言葉と共に少年の背後に黒と紫色を基調とした謎の剣士が現れた。それはまるで日本神話に出てくるイザナギのような風格を持ち、その剣でダークを簡単に吹っ飛ばした。
「ぐはっ!」
「ダーク!!」
ダークのダメージは相当深刻であり、すぐに立ち直るのは難しそうだ。
「お前は一体…?それにそれは!?」
「俺の名は『鳴冠 悠治』そしてこれは“ペルソナ”」
謎の少年鳴冠、そして鳴冠が出したペルソナと言う存在。俺達の使う聖獣とは似ているようで違う性質のようだ。
「くっ!」
俺も負けじと自らの力を外に放出し、それによって白いグリフォンのようなモンスターを呼んだ。これが聖獣であり、俺の聖獣、色の神エルシオンである。
「それが聖獣か……」
「知ってたのか……」
「あぁ、リーダーから聞いていたからな」
「リーダー……?」
「さて、器は渡してもらう」
鳴冠が確かにリズを指して言った。クロナはその時あることに気がつき、キーブレードを構え前線に出て言った。
「まさか、貴方がリズを浚った犯人!?」
「どうかな……?やれ、Dクイザナギ!」
Dクイザナギと呼ばれた鳴冠のペルソナが俺達に襲いかかる。
「迎え撃て、エルシオン!」
キーブレードを出し、エルシオンに飛び乗りDクイザナギと激突した。俺が上から切りつけ、エルシオンが受け止め、その隙にクロナが下から連続攻撃をしているが、やつのペルソナには一切ダメージが無い。
「この程度か……ならそろそろ」
聖獣とペルソナの激突により完全にここが崩壊し、鳴冠のペルソナが剣先に闇色をした不思議なエネルギーを集め、それを解き放った。
「この次元も、一つとなる」
その言葉を最後に鳴冠の姿が見えなくなると、上空に紫色のブラックホールのような物が現れ、俺達はそれに吸い込まれてしまった。
「「「うわぁあ!!」」」
「レイ君っ!」
「クロナ!!」
クロナ、そして仲間達がどんどんブラックホールに消えていき、俺とリズも少しずつ吸い込まれていく。
「リズっ!!手を伸ばして!!」
「レイ!!」
間一髪リズの手を取った俺はリズと共にブラックホールの中へ吸い込まれていった。