CROSS9【見知らぬ港】
揺られる電車の中、俺、鳴上 悠は窓から見える景色に目を通しながら一年前の自分を思い返していた。
一年前、俺は両親の都合で稲羽市に一年間だけ住むと言う事で八十神高校に転校した。
その時はごく普通の学校生活が始まると思っていた。しかし、ある日突然、俺は非現実に足を踏み入れる事になった。それがマヨナカテレビとペルソナ。
いきなりペルソナ能力を得て混乱したり、謎が多かったが、八十神高校でのクラスメイトであり親友である陽介やテレビの世界で出会った謎の存在であるクマと約束した。テレビの世界の謎や稲羽市で起きている奇怪な事件の解明を。
なんか色々と語りすぎたな。俺は改めて窓の先の景色に目を写した。
「なにっ!?」
その景色は明らかに目慣れた物では無く、それこそテレビの世界に近いような光景だった。
「どうなってるんだ……?」
とここで電車が止まった。そこは稲羽市でもなく、俺がもといた都会でもなく、見知らぬ港だった。
「ここは……何処なんだ?何故電車はこんな所へ?」
本来この電車は港なんて通らないはず、そう疑問を抱いて運転士がいるかどうかを確認すると、運転士どころか他の乗客さえもいなかった。
「どうなってるんだ?独りでに電車がここへ来たとでも言うのか?」
様々な疑問に頭を悩ませながら港を歩いていると、また一つある事に気がついた。なんとこの港にすら人の気配が無いのだ。その上俺の足音以外の物音がまるでしない
「今この場にいるのは…俺一人?」
その時はそう思っていた。だがその瞬間何処からか黒い身体の見たことも無い化け物が何体か現れ、俺を取り囲んだ。
「何だ……こいつらは!?」
「君、伏せて!!」
突然聞こえた声に従い、一旦伏せると何処からともなく鍵のような不思議な剣を持った大きく、丸い耳が特徴的なネズミのような人が飛んできて、化け物の一体を倒した。
「あんたは!?」
「僕はミッキー。それより、今はこの状況を何とかしないと!」
ミッキーが先程化け物を倒すのに使用した剣を構えながら言う。本来なら俺も戦いたい所だが、ここはテレビの世界ではない。その為ペルソナ能力も使えない。だが、そんなことは言ってられなかった。
「早く逃げるんだ!」
「いや、俺も戦う!」
自称特別捜査隊の時のように右手を構え、何時もの体勢に入る。
「一か……八か……!」
目を閉じて祈り、握り潰すような感覚で右手を閉じると、何かが割れる音がした。そして俺の背後には、ペルソナ“イザナギ”の姿があった。
「やった!」
「…あれは!?」
俺のペルソナを見たミッキーは非常に驚いていた。