CROSS12【二人の力】
「覚悟は良いか、アスナ!」
「もちろんよ、ディア!!」
俺とアスナ共々それぞれの武器を構え、戦おうとしていた。いざ武器を持って向かい合って見ると彼女からはやはり気迫を感じる。
「容赦しないからね!」
「フッ、こっちの台詞だ!!怪我するなよ!」
勝負開始のカウントダウンは近づいている。一体何故俺達が戦う事になったのかと言うと、
『なぁアスナ、一つ勝負してくれないか?』
『突然どうして?』
アスナの同行を了承したあと、俺は彼女に1VS1の勝負を申し込んだ。一段落した後なので流石に驚いている。
『旅に同行させる事に変わりは無いが、共に行動するに当たってその実力が気になる』
『だから勝負してそれを確かめると?』
俺は静かに頷いた。いくら共に行動すると言えど俺達はまだ初対面。どうやらアスナはこの次元ではかなり名の知れた人らしいのだが、当然この次元の事など俺は知らない為彼女の実力もわからない。
『なら、すぐに始めましょう。まずは場所を変えようか』
俺の提案をアスナはあっさりと了承してくれた。俺達はアークソフィアから少し離れた平原で決闘を行う事にした。ルールは先に相手に攻撃を当てた方の勝ち。そうして今に至ると言う訳である。
「お前の実力、調べさせてもらう!」
「OK、かかってきなさい!!」
カウントダウンが0になり、彼女との戦いが始まった。先手を打ったのは俺で、開始と共に走り出し、長剣の長いリーチを生かして連続攻撃を仕掛ける。
「っ!――っ!」
しかしそれをアスナは軽々と避けて見せた。予想してはいたが、とても身軽なようだ。そう言うやつは大体スピードタイプだと推測して俺は戦う事にした。
「(あの身のこなし、無駄が無いな……回避力が高いのか。)
ならば!」
相手がスピードタイプだと推測した上で取った戦法、それは重力魔法『グラビガ』により重力をねじ曲げる事で動きを制限してから一気に打つと言う物。
「くっ!これは!?」
「今だ!」
アスナがグラビガにより思うように動けない間に攻撃を当てようとするが、それは彼女のレイピアに跳ね返された。しかもそれはあまりにも早すぎた。グラビガでは押さえつけきれない程に。
「(なるほど……相当早いみたいだ。もしグラビガを使ってなければきっと目にも止まらぬ早さだっただろうな……)
やるな!」
「そっちも良い技持ってる見たいね。今度はこっちから行くよ!」
その言葉と共にあまりにもタイミングよくグラビガの影響が消えた。その隙を見計らってアスナが物凄いスピードでレイピアによる連続攻撃を仕掛けてきた。
「(っ!早すぎる!)
まだだ!」
「っ!」
攻撃の雨が止んだ所を見計らい俺はすぐに長剣を突きだしたが、紙一重の差で避けられた。
「(あれをかわすとは……)
これならどうだ!」
次に俺が取った行動は長剣をブーメランのようにして投げて攻撃すると言う物。物凄いスピードを出したがそれも避けられ、長剣が俺の手元に帰ってきた。ブーメランのように戻ってくるのをわかっていた上でやった攻撃だ。
「(あの攻撃スピードに、あの回避力……凄い!)」
俺は改めてこれから共に行動する仲間であるアスナの実力を知った。ここまで戦ってどちらも譲らない戦いを繰り広げており、悔しいが殆ど互角だった。
「(凄いよ……あのパワーにあの計算力、悔しいけど……私と互角!)」
だがそれはアスナも同じだった。戦いの中で俺と言う人間を知り、内心では互角である事に悔しさを覚えていたが、同時に満足そうな表情になった。
「アスナ、お前は強い。だが……」
「ディア、君は本当に凄い。でも……」
「「勝つのは俺(私)だ!!」」
その後激しい剣のぶつかり合いが何度も起こり、この決闘だけで軽く三時間は時間を使っている事に俺達は全く気づいていなかった。俺もアスナもこの戦いに夢中になっていた為仕方ないとは言えるが、ただ言える事はこの様な戦いが出来て最高に楽しいと言う事だ。アスナもいつの間にか笑顔になっていて戦いを楽しんでいる。
長く激しい戦いの末、勝ったのはアスナだった。お互いにその場に倒れ、息を切らしている。
「やった……勝っ…た!」
「フッ……あそこでまさか……あの一撃とは!まさに……外…道だな!」
「何よそれ?」
「俺の専売特許だ」
自信満々にそう言うと、アスナはクスクスと笑い、空を見上げた。
「ふぅ……良い汗かいたね……」
「あぁ……俺達ほぼ互角だったな」
俺も空を見上げてみると、あることに気がついた。
「なぁ……太陽ってさ、あんなに綺麗だったっけ?」
「本当だ……」
見上げたらそこには満天の青空に浮かぶ太陽があった。それは何時も見ている物と何ら変わらないのだが、今回は何故か何時もよりも綺麗に見えた。
「きっと……私達を称えてくれてるのね」
「そうだと良いな」
太陽の光に照らされ、平原に吹くそよ風がゆっくりと吹き抜ける中、俺達は立ち上がり、笑顔で言った。
「それじゃあ、宜しく頼むぜ。アスナ」
「こちらこそ宜しく、ディア」
こうして俺達はお互いに新たな絆を結び、それぞれのパートナーを探す為に旅立った。