アイスの思い出
俺とクロナは今日からキーブレードの調製も兼ねて特訓する事にした。時々みんなでするものとは違い、今回は俺とクロナの二人だけだ。今回は初回と言う事でお互いのキーブレードを入れ換えて戦っている。
「せやっ!」
「はぁ!」
お互いが攻撃を出し合い、ほぼ互角の勝負を繰り広げていた。今クロナの持っている俺のキーブレード、レイムチェーンは片手剣より一回り大きく、片手で扱えるには扱えるのだが、重量が多少ある。普段魔法とスピードで戦うクロナにはかなり扱いにくいだろう。一方俺の持っているクロナのキーブレード、シャインセイバーは片手剣並の大きさがあり、重量も軽い為連続攻撃に向いている。クロナならそれを生かして目にも止まらぬ早さで攻撃するのだろうが、レイムチェーンの重量に慣れていた俺に取っては大きな課題だった。
勝負の結果は結局クロナの勝ち。何故かはわからないが俺は何時もクロナに負けている気がする。だがどちらにせよお互いに疲れたのも事実なので一旦俺の家へ向かう事にした。
「はいこれ」
「ありがとう、レイ君」
家のリビングにある椅子に座るクロナに俺の大好物であるシーソルトアイスを一つ手渡した。俺はその隣に座って自分の分を食べ始めた。
「本当甘くてしょっぱいね……なんか新鮮な味」
「なんか前にも似たような台詞を聞いた気がするな……」
「そう言えばレイ君って、なんでアイスが好きなんだっけ?」
「あれ、話してなかったっけ?」
突然のクロナの質問に思わずキョトンとしてしまったが、俺はアイスに関する思い出を語る事にした。
「お母さんが生きてた頃、外の世界にお母さんが行った事があってさ。その時のお土産としてシーソルトアイスを買ってきてくれたんだ。それがとっても美味くて……今でも覚えてるよ。その後にナタ姉が頑張って我流のシーソルトアイスを作り、そのあとにお母さん達が亡くなった」
「……」
「だから、これはお母さんとの思い出なんだ。これを食べてるとあの頃を思い出す、だから毎日食べたくなる」
クロナの前なので笑顔で語ったつもりだったが、彼女の表情は何処か複雑だった。何と言うか、何かを思い詰めたような表情で
「……俺って、弱いかな?何時までも過去の事にすがって……」
「そんなことないよ、レイ君」
その続きを言おうとしたとき、クロナの言葉に遮られた。いつの間にかアイスを食べ終わっていた彼女の右手が俺の左手に優しく触れる。
「今でも亡くなったお母さんの事を大切に思ってる……偉いよレイ君は。だから弱くなんてない、それどころか強い!」
「クロナ……」
俺はまたクロナに勇気をもらった気がする。いや、気がするじゃないか。俺のお母さんが亡くなったのは俺がまだ幼い頃だったからこそ大切に思うのは自然なのだろうが、この年代でそんなことを言ったら世間からは笑われてしまうだろうと思いこれまで誰にも話していなかったが、今日初めて、しかも世界で一番大切な人に話せた。
どういう偶然かはわからないが、クロナのアイスの棒には当たりの字があった。
■作者メッセージ
遅くなりましたがここでお知らせです。
この度、クロスオーバー作品の連載を開始しました!と言っても知ってる人もいるかもしれませんが(笑)
クロスオーバー作品を作成していた為本編の更新が大分遅れてしまいましたが、本編ももうじき更新出来そうです!