CROSS14【難しいモノ】
「……うっ……」
目を開けたらそこは見慣れぬ部屋だった。俺――ライガはその部屋のベッドで寝ていたようだ。
「あっ、気がついた!?」
「君は……?」
何時からいたのかはわからないが、薄い茶色の髪の短い高校生くらいの少女が声をかけてきた。その少女は緑色のジャージを着ていて意外と活気なイメージがあった。
「君、道に倒れてたんだよ。中々目を覚まさないから心配でさぁ」
「君が、助けてくれたのか……?」
「君じゃなくて“里中 千枝”。覚えた?」
「うん、覚えたよ。里中さん」
「千枝で良いかんね!」
どうやら俺はこの緑色のジャージが特徴的な少女、千枝に助けられたようだ。しかし俺達の世界で千枝みたいな人をこれまで見た事が無い。だとするとここは俺達とは違う次元なのだろう。
「なぁ千枝……ここは何処なんだ?」
「それが私にもわからないんだ……確かみんなで雪子の家に泊まってたんだけど……あっ、みんなは!?」
「多分、それ心当たりがある」
俺は千枝に鈴神が言っていた話をした。最初は簡単に信じてもらえなかったが、千枝に何があったのかを聞いてみると、どうやら天城屋旅館と言う稲羽市の旅館に友達みんなで泊まっていたらしく、晩飯を食べ終わった所で突然赤い髪の少女がレイピアを持って現れ、彼女が巨大な化け物を呼ぶと突然旅館ごとみんな吹き飛ばされ、いつの間にか自分はこの見知らぬ町に来ていたと言う。俺達のいるこの部屋はどうやらその町の宿の一室らしい
「ってなると……そいつが時空を歪めて私達が引き離されたって事?」
「そう言う事になるな……それに千枝達を襲撃した赤い髪の女性……妙に気になるな」
「後、そいつモンスターみたいなの出してたけど……なんかペルソナみたいなんだよね……」
「ペルソナだって?確か鳴冠も言ってた!」
「鳴冠って?」
俺は自身が出会った鳴冠と言う少年について話した。そいつがリズを狙って襲撃してきた事、その際にペルソナと言う物を出した事、その力で俺達を離れ離れにしたこと。
「なぁ、そもそもペルソナって何なんだ?」
「簡単に言うと……もう一人の自分かな?」
「もう一人?自分?」
「完全には理解出来てないかもだけどさ、私達はみんな弱い自分を認めて、ペルソナを得てきたの。認めたくない一面とか、そう言うのがシャドウって言う化け物に変わって……それを認めて初めて一緒に戦ってくれるペルソナが来てくれる」
「認めたくない一面、か。難しいよな……」
俺はたった今千枝から聞いたペルソナとシャドウについてふと考えてみた。シャドウとは自分の認めたくない一面その物、つまりもう一人の自分。それを受け入れる事でそれは自身の力となり、ペルソナになる。ペルソナとシャドウは呼び方が違うだけで実は同じ。そう、心の持ち様によってペルソナにもシャドウにもなりうる自分が自分の中に何人もいる。それらを完全に認めきるのは誰だって難しい。実際俺にもそんな一面があるから、こう言う事は深く考えてしまう。
「とりあえず、俺はこれから離れた仲間を探しに行くけど、千枝はどうする?」
「なら、私もついてくよ。戦える仲間がいた方が心強いじゃん?」
俺は強く頷いた。そもそも千枝も俺と目的が同じであるため、共に行動しない理由はなかった。今俺達のいるこの町である程度準備を調え、町を出た。
町を出ると広いジャングルが広がっていた。それこそ先程千枝の思い出話の中に語られていたテレビの世界のように。あれから千枝は俺にペルソナとの出会いの話をしてくれて、テレビの世界の事も理解出来た。話を聞く限りだとペルソナはテレビの世界でしか出せないようだが、この歪んだ時空ならもしかしたらテレビの世界同様出せるのではないかと俺達は踏んでいる。
暫く歩いていると大きな湖を発見した。こんな広いジャングルにこんなものがあるとは思わなかった。
「ライガ、この辺りで休憩にしよう?」
「そうだな、大分歩いたし」
湖の近くまで歩いていこうとしたその時、突如白い光が発生し、いつの間にか俺達の前に白い髪と目、白い服を着た少年が二本の剣を持って立っていた。
「お前は!?」
「全くリーダーは……何故もっと早く動かない?ゆっくりやってちゃ前みたいに失敗するだけだ……」
白い髪の少年は何かを呟くように愚痴を吐きながらこちらに歩いてきた。
「……我らの計画の邪魔になる可能性があるものは、容赦なく壊せば良い!!」
そう言って白い髪の少年は突然俺達に斬りかかってきた。俺達はそれを避け、千枝が少年に言った。
「あんたいきなり現れて何すんのよ!!せめて名乗るくらいしたらどうなの!?」
「俺はキリス。悪いがお前達にはここで消えてもらう!」
何かに苛ついているような態度のキリスは二本の剣を構え、俺達はこの謎の少年と戦う事になった