CROSS16【見知らぬ荒野】
「……ねぇ、ねぇってば!」
「くっ………」
何処からか声がする。だがそれが何処から聞こえて誰の声なのかはわからず、俺は暗闇の中にいた。
「起きてよダーク!」
「っ!」
目を開いたときそこは見知らぬ荒野だった。どうやらさっきまで気絶していたらしく、先程の声はフィオの物だったようだ。
「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だぜ。それよりもさ、ここ何処だ?」
なんつーかわからないが、少なくとも俺――ダークとフィオは見知らぬ場所に飛ばされてしまったようだ。
「わからない、それに僕達以外の仲間は何処にも見当たらない……」
「ちっ、相棒達は無事なのか……?」
相棒、すなわちレイやその仲間達はいま何処にいるのだろう。それが一番気になったが、次に俺が気を置いたのは俺達の状況についてだった。今俺達は見知らぬ荒野におり、右も左もわからないままだ。
「……今は何にも、わからないね」
「あぁ……」
その時、ずっと遠くの方から叫び声がした。何か異変を察知した俺達は急いでその方向へと走った。
「っ!ハートレス!!」
そこには数十体のハートレスに襲撃されている黒髪で赤色の服がとても似合う高校生くらいの少女がいた。俺はとっさにキーブレードが変化した姿である太刀を取り出し、彼女に攻撃を仕掛けようとするハートレスの前に立ちふさがったが、
「ふがっ!!」
案の定、と言うか無様すぎるほどにハートレスの攻撃が俺の顔面に当たった。当然そのまま倒れ、遅れてフィオもアローガンを構えてやって来た。
「だ、大丈夫……?」
「いっつ〜……!カッコよく庇うはずがどうしてこうなった!」
「あ、大丈夫みたいだね」
全く見知らぬ時空へ来てもやはり俺の扱いは変わらなかった。何故かはわからないが、俺はメンバーの中で一番いじられる事が多く、大抵一番酷い目にあっている。それがこの時空でも健在だとは正直思わなかった。
「そっちこそ大丈夫かよ?」
「えぇ、ありがとう。貴方達は?」
「俺はダーク」
「僕はフィオ!」
「私は天城 雪子って言うの、宜しくね」
お互い一通り挨拶を済ませると、フィオが自らの力を放出し、聖獣を呼び出した。フィオの聖獣は無数の腕を持つ狙撃者こと『白銀のシュラ』である。
「行けぇっ!」
フィオの号令で無数の手が握っている銃から弾丸が放たれ、数の多かったハートレスが一気にその数を減らした。
が……
「ちょっ、まっ、うおっ!?」
その内一つが間違って俺の方に飛んできてしまい、そのまま足を挫いてしまった。
「あ……ごめん」
「“ごめん”で済ます事かよ!?」
やはり俺の扱いの悪さが災いし、何かと被害に遭ってしまう俺だが、それを見た雪子が何故か可笑しいくらいに笑いだした。
「ぷっ……はははは!今ダークに思いっきり当たってたし……ふふ…!」
「わ、笑うな!!」
「いや、ダーク突っ込む所違うと思うよ」
フィオは雪子が笑いのツボがずれてるとでも言いたげな表情でお手上げのポーズをした。その時フィオの背後にハートレスが数体現れたのが見えたので、とっさにそれらを切り裂いた。
「大丈夫か、フィオ!?」
「うん、ダークにしてはやるね!」
「“俺にしては”は余計だ!!」
「それより、来るよ!!」
雪子はいつの間にかその手に扇を持っており、戦う気満々だ。俺達は雪子と共にハートレスと戦う事になった。