CROSS18【光の影】
「キリス、お帰り」
「あ、あぁ……」
謎の少年に無茶をするなと言われ、キリスは漆黒の影の城に帰ってきていた。謎の少年はもうすでに気にしていないようだが、キリスは罪悪感を感じているのか少し話しづらそうだ。
「……全く、君は昔からせっかちなんだから……」
その時、中々椅子から降りなかった謎の少年がついに立ち上がり、その姿を現した。それはあまりにも独特な茶色の髪型で、瞳が金色かつ額から影が指していた。そう、言うなればもう一人のレイ、いや、それこそシャドウのようだった。あえて言うならシャドウレイと言う所か。
「悪い……」
「そんなに気にしなくて良いよ。それより、今はゆっくり休んで」
「あぁ、そうさせてもらうよ。だが一つ聞かせてくれ。何故エスナをシールボードに送ったんだ?あそこの研究員達は皆優秀だぞ?」
キリスはあのとき完全には納得していなかった。いくら機械に強いエスナでも優秀な研究員が勢揃いのシールボードに果たしてエスナを送る必要があるのか、キリスにはわからなかった。
「あそこにはね、ある人を捕らえてあるんだ」
「ある人?」
シャドウレイがさらっと口にした言葉にキリスは疑問を抱く。キリスはシャドウレイとは一番仲がよく、漆黒の影のメンバーでシャドウレイに敬語を使わないのは彼のみであり、故によく話しているのだが、知識が多少時代遅れな為シールボードに囚われている人の存在を知らなかった。
「“妖精剣士”だよ。彼女は良い実験体になりそうだからね」
「“シャドウコピー”か?」
「あぁ、シャドウコピーは対象とした相手の偽者を作る事が出来る。それが果たして現代に生きる人にも適応するのか実験したいからね。今頃始まってると思うよ」
彼ら漆黒の影には幾つか共通能力があり、その内が対象とした相手の偽者を形成するシャドウコピー。その能力がこの交わった時空の存在でも適応するかはまだわからない為、シャドウレイは実験体として妖精剣士を捕らえたのだ。
「となると、すでに?」
「あぁ、彼女の偽者は今頃数体は出来てると思うよ」
「楽しみになってきたな……」
「お楽しみは……これからでっすよ……」
シャドウレイは再び椅子に座り、空中に浮かぶモニターを見た。そこには砂漠の中心に佇む漆黒の影の拠点、シールボードの姿があった。