「……うぅ……」

朦朧とする意識の中、目を開けたらそこは身に覚えの無い宿の中だった。私――クロナはいつの間にかベッドに寝かされており、ベッドから降りるとドアをノックする音が聞こえた。

「何方ですか？」
「おぉ、目が覚めたのか！？」

その声の主は慌ててドアを開け、部屋に入ってきた。その人は一言で言ってしまえば野武士面と言う印象の男性だった。

「ふぅ、ここ三日くらい目が覚めないんで心配したぜ」
「もしかして、貴方が助けてくれたのですか？」
「そう！俺、クラインって言うんだ。宜しくな」
「私はクロナ・アクアスと申します。クラインさん、宜しくお願いします」
「クラインで良いぜ」

野武士面の彼、クラインと握手し、ここの事を教えてもらった。どうやらここはアークソフィアと言う町らしく、私がいた世界とは全然違うみたい。

「そう言えばクライン、私は何故ここにいるのですか？」
「確か、三日前に俺が一人でクエストやってる時にお前さんが倒れてるのが見えて、急いでここまで運んできたんだ。それから今日まで寝たきりだったって事さ」
「そうですか………」

クラインがクエストと言う物をやっている最中に倒れている私を見つけたとなると、あのとき鳴冠に襲われ、彼が発生させたブラックホールに吸い込まれた先がここと言う事になる。

「そう言えば、ここで何か変わった事はありませんか？」
「ん？何でそんなこと聞くんだよ？」
「もしかしたら私が何でここにいるのかわかるかもしれないんです」
「うーん、変わった事か……そういや最近行方不明のプレイヤーが多いんだよな」
「行方不明ですか？」
「あぁ、キリトって言う俺のダチが最近行方を眩ましててさ。そう言えばそれ以前にリズベットって言うやつも行方不明になっててさ、しかも数日前にはアスナまでもいなくなっちまった」
「合計三人ですか……えっ？」

今クラインが言っていた行方不明者の中に明らかに聞き覚えのある名前がある事に気がついた。

「今、リズベットって言った！？」
「お、おう……それがどうかしたのか？」
「クライン、私の話をよく聞いて！」

普段親しくない人間や歳上には敬語を使うようにしているがあまりにも興奮していた為忘れてしまった。私はクラインにこれまでに起こった事や鈴神さんの仮説、推察を話した。

「つまり、キリトもリズもアスナも……その影響でって事か？」
「三人目の事はどうかわからないけど、リズとキリトは間違いないと思うわ。だって私達の所にリズが来たんだもの、しかも行方不明になるタイミングがあまりにも出来すぎてる」
「……だな。その話、信じるぜ」
「ありがとうクライン！」

クラインは何かを納得したのか、私の話を信じてくれた。流石に三人も同時に行方不明になるのはおかしいと思ったのだろう。

「それにその話が本当なら、アスナは二人を探しに行ったのかもな」
「そうかもね」
「って言うか、いつの間にか敬語じゃなくなってんぞ？」
「あっ……」
「まぁ、その方が可愛いけどよ」
「も、もう！！」

暫くお互いに今わかるだけの情報交換をしたあと、私は出来る限りの準備はをしてこのアークソフィアを立つ事にした。

「行くのか？」
「えぇ、私も探すモノがあるから」
「お前、似てるな」
「へっ？」

クラインは私の事を誰と似ていると言ったのか、それは彼にしかわからない。クラインは少し悩んだ後、私にこう言った。

「よし、俺も連れてってくれ！」
「え？」
「だってよ、時空の歪みだとか次元が交わったとかそう言う細かいの無視で、ダチを放っておける訳ねーだろ？」
「………それもそうね」

仲間達を探す旅にクラインも同行する事になった。この先険しい道のりである事は間違いないので、戦力が増えるのはかなり心強い。

だがその時、アークソフィアの方から謎の爆発音が響いた。

「な、何だ！？」
「わからない、けど嫌な予感がする！行くよクライン！！」
「お、おう！！」

アークソフィアから響いた爆発音。その正体は一体何なのか、すぐに知る事になる。