CROSS23【行こう】
突如私達の前に現れたセラと言う少年は漆黒の影の存在を仄めかし、さらに自分達がこの事件の元凶だと主張した。セラは偽のリズを使い、アークソフィアを破壊しようとした。だが攻撃対象を私達に変え、偽リズに付け加えハートレス集団、そして偽者の私までもが襲い掛かってきた。
偽の私とはクラインが、偽リズとハートレス集団とは私がそれぞれ戦っている。
尚、今回限りだが偽者達をそれぞれの頭文字からとってQ、Lと呼ぶ事にする。
「喰らいやがれ!」
クラインが素早く刀を振るが、それをQは軽々とかわす。思えば私は何時もスピードと魔法を中心に戦っていた為、あのようなスピードは当然だろう。
その後も連続で攻撃し続けたクラインだが、その隙を突きQが黒いキーブレードを突き出し、クラインを吹っ飛ばした。
「うぉっ!?」
「クライン!!」
Qに吹っ飛ばされたクラインに気を取られている隙にLとハートレスが同時に攻めてきた。幸いその直前に気がつき、避ける事が出来た。
「自分から引き受けたは良いけど……やっぱり難しいね…」
持ち前の移動速度と攻撃速度を生かしてハートレス達を蹴散らしていくが、Lのメイスは避けるので精一杯だった。普段ならメイスのような武器なら坦々と避けられるのだが、今回は大量のハートレスも一緒なのでいつやられてもおかしくない状況だ。
「くっ……クライン!!」
何とか敵の攻撃を掻い潜り、回復魔法であるケアルガをクラインに使った。
「ありがとよ、クロナ!」
「うん、気を抜かないでね!」
再びお互いにそれぞれの配置に戻り、クラインは改めてQを攻撃し始める。私はとりあえず敵の主将を倒すよりも他の敵を倒した方が効率が良いと踏み、まずはハートレス達を全滅させる事にした。
「来て、ファラフェニックス!!」
自分の身体から力を解き放ち、それを具現化させる事で召喚出来る聖獣だが、私のそれは白い不死鳥とも言うべき姿をした『ファラフェニックス』だった。
「凍りつけ!」
ファラフェニックスより大量の氷の弾丸こと氷魔法『ブリザガ』が放たれ、氷の雨がハートレス達を一気に消し去った。
「すっげぇ……何なんだありゃ!?」
「これは聖獣!私達を助けてくれる力!」
ハートレスを消し去ったので残るは偽者二人のみ。ファラフェニックスが空から後ろに回り込み、私が正面から攻める。これでLを挟み撃ちにするつもりだったが、突然横槍が入りそれは阻止された。
「そんなっ!?」
横槍を入れたのはQだった。遠距離から氷の魔法であるブリザガを放ち、ファラフェニックスの気を引く事でLを助けたのだが、その行動によって隙が生まれてしまった。
「今だ!!」
Qが止まっている間にクラインが見事に切り裂き、Qは音もなく消滅した。
「よし、クロナ!加勢するぜ!!」
これで残るはL一人。こちらは私とクラインとファラフェニックスとで二人と一体。つまり3VS1でこちらが有利だ。
「この勝負、もらった!」
二人同時に走り出し、ファラフェニックスは空から攻撃を仕掛ける。
「せやっ!!」
「はぁっ!」
クライン、そしてファラフェニックスとの同時攻撃が成功し、Lもまた音もなく消滅した。
「……勝った?」
「……あぁ、勝ったな」
だが、アークソフィアの被害は予想以上に大きく、とても数日では直せそうに無かった。
「くそっ!あいつら許せねぇ!!時空歪めた上にリズを浚って、オマケに町をこんなにしやがって!!」
「漆黒の……影……」
聖獣ファラフェニックスを一旦消滅させ、私は一歩踏み出して言った。
「行こう、リズを……みんなを助けに!!」