CROSS25【二人の罪悪感】
「くっ……」
――どうやら暫く気を失っていたようで、同じくキリト君も気を失って倒れていたが、俺――レイとほぼ同時に目が覚めたようだ。
「レイ……リズは?」
「キリスに連れ去られたみたいだ」
「そんな……」
同じ時空の仲間を守れなかった事に罪悪感を覚えているのか、キリト君の表情が重くなる。だがすぐにキリト君の視線はまだ倒れているユイに行った。
「ユイ!しっかりしろ!」
「ん……?あ、パパ。おはようございます……」
「良かった、あいつには何もされてないみたいだね」
「パパ、その人は誰ですか?」
「あぁ……えっと、どう説明すれば良いのかな?」
キリト君は少々ぎこちなさそうにユイにこれまでに起きた事を説明した。そう言えば何故ここにユイがいるのか、それはキリスがキリト君に自分達があらゆる次元から人を呼び寄せられる事を証明する為の糧としてここへ呼び出された。その時には気を失っており、どれだけの時が経ったのかはわからないが今に至ると言う事である。
「なるほど……わかりました」
「え?何がだ?」
「実は先程からシステムが……いえ、この世界がおかしな事になっているんです」
「システム?」
「あぁ、ユイは元々カーディナルシステムって言うSAOのプログラムの一つのような物で、故にユイ自身もそのお陰で様々な事が出来るんだが……」
つまりユイは厳密には人間でもキリト君の言うようなプレイヤーと言う物でもないと言う事か。
「でもユイ、おかしくなったのはSAOだけじゃ無いのか?」
「それが、私自身も機能が幾つか制限されていて、SAOと言う仮想空間自体が消滅したようです」
「えっ!?」
「厳密には消滅と言うよりも他の世界と融合して仮想空間では無くなったと言う表現が正しいです。なのでSAOが消えても私達が消えないのかと」
何となく話が見えてきた。つまりSAOと言う仮想空間が漆黒の影により時空の歪みに巻き込まれ、俺達の時空と交わったせいで別の世界となり、実質SAOは消滅した事になる。だが厳密には消えていないのでカーディナルシステムであるユイもアバターであるキリト君もそのまま残ってしまったと言う事になる。つまり、この交わった時空の中では二人とも本物の身体と同じ状態と言う事。
「くっ、大変な事になったな」
「キリト君、こうなったら何がなんでも漆黒の影を倒そう!そして俺達の時空を救うんだ!」
「……迷ってる暇は無さそうだな」
「私も、お二人のバックアップなら出来ます。頑張りましょう!」
こうして俺とキリト君、そしてユイの三人で旅をする事になった。ユイは先程の話からわかる通りバックアップ向きの能力であり、俺の仲間で言う鈴神のようなポジションと言う事になる。
砂漠と平原の境目辺りの道を歩いていると、突然やつらが現れた。
ハートレスだ。しかもあのときキリスが言っていたシャドウと言うやつも何体か紛れて存在している。
「敵11体です!耐えてください!!」
「うん!」
「うおぉ!!」
敵の数が多いため、俺は守りを優先し、キリト君は二刀流を駆使して攻撃に徹した。
その時、敵の一体の攻撃がユイにその矛先を向けた。
「危ないユイっ!!」
間一髪、キーブレードの先端が届き攻撃を弾いてユイを守る事に成功した。
「ナイスだレイ!」
「おう!ユイちゃん、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます!」
通常ならユイちゃんを戦闘に出すなどあり得ない話だが、あのまま置いていく事はまず無理、しかもキリト君は今実質アバターでは無くなっている為SAOでのスキルと言う物の幾つかが使えなくなっており、システムによるサポートとやらも当然無い。しかも相手は全く未知の敵ばかりなのでユイのようなバックアップ向きの味方は必須となるのだ。
「ユイちゃん、やっぱり下がった方が!」
「大丈夫です!」
彼女には申し訳ないが、ユイちゃんは共に戦う事を了承してくれた。
「レイさん、あの敵は光の攻撃が弱点です!」
「光だね?ならっ!」
勢いよく飛び上がり、空中から光の魔法であるホーリーを放ちユイちゃんが指名した敵を倒す事が出来た。
「ナイスバックアップユイちゃん!!」
「はい!!」
後衛と前衛の絶妙なコンビネーションで敵を倒したが、その時キリト君の方に五体ほどの敵が一斉攻撃しているのが見えた。
「っ!キリト君!!」
「パパ!!」
「しまっ!?」
不意を突かれたキリト君はそのまま立ち尽くし、成す術も無くその攻撃を喰らった……………ように見えたが当たる直前に突然巨大な竜巻が発生し、ハートレスやシャドウのみを吹き飛ばした。