相棒と過ごす日
俺はその日クロナとではなく俺の相棒を自称するダークと定食屋に来ていた。今日クロナは学校の課題をかたずけなければならないとのこと。クロナは普段優等生で課題をやり忘れるなど絶対にあり得ないし、俺と一緒にいる事を誰よりも望む人なので嘘もあり得ない。恐らく俺と一緒にいる時間を取りすぎて疎かにしていたのだろう。
「なぁ相棒、ここの定食屋…新しいメニューが出来たって知ってるか?」
「新しいメニュー?」
「その名は『ごちゃ混ぜ定食』!なんでも、あらゆる具材を取り入れているそうだ」
「へぇ、それ美味しいの?」
「さぁな、俺も見たことねーから俺らで試して見よーぜ」
「リョーカイです」
と言う訳で俺とダーク共々そのごちゃ混ぜ定食と言う物を注文した。暫く待っていると俺達の前に口ではどう語っていいのかわからないほど言い表し様の無い何かが置かれた。
「こっ、これって……!」
それは明らかに異様な雰囲気を放っており、普通の料理の臭いではなかった。寧ろオイルの臭いを嗅いでいた方が楽なくらい酷い物である。ごちゃ混ぜと言う名前なので思わず量が多い物を想像したが案外普通だった――見た目と臭い以外は。
「どうやらこれを食べきるとタダな上に一万マニー貰えるらしい」
「えっ、嘘!?」
「だが、何人もの勇者が挫折したそうだ……」
流石のダークもこれには恐れを抱いているようだ。一見量だけ見れば誰でも食べれそうな物だろう。しかしその異様な見た目と臭いからは何か危険な物を感じる。俺は思わず、息を飲んだ。
「相棒、準備は………良いかっ……?」
「ま、待ってくれ……まだ心の準備が……」
「仕方ない、俺から剣を取る!!」
剣、と言うか箸を掴み早速定食のような何かを口に入れたダークだったが、その表情はすぐに青冷めて行った。そしてすぐにダークが気を失ってその場に倒れた。
「ダークっ!!」
俺はふと自分の分に恐る恐る目をやった。やはりそこからも恐ろしいオーラが放たれており、何故か俺の脳裏にゲームのラスボスにでも流れそうな禍々しい音楽が流れてきた。
「……これはっ……ハートレスやアンチネスよりも強大だ……!」
そう感知した俺は即座にキーブレードを出現させ、危険物体を叩き斬ろうとしたが、無理だった。その時倒れていたダークに足を掴まれ、止められた。
「止めろ相棒……そいつは強いっ!!」
「わかってる、でも始末しないと!!」
「レイ!!わかってるのか、お前がやろうとしている事は……自殺行為だ!!!」
完全に恐れを成したダークの説得で俺はキーブレードを消滅させ、大人しく負けを認める事にした。幸い危険物体の値段は一つ200マニーだったので精神的な被害だけで済んだ。