俺はダーク。突如現れた鳴冠と言う少年に相棒達と切り離され、フィオや雪子と共にこの謎の時空を旅している。

今の所三人ではあるが、仲間達を見つけ次第協力してもらうつもりだ。ちなみに現在俺達は見るからに怪しい謎の研究施設にたどり着いた。

「何だろう、ここ？」

雪子が謎の研究施設を見上げて言った。この研究施設は普通の物とは違い、尋常じゃなく大きい。例えるなら機械の要塞だ。

「見るからに怪しいよな……どうする？」
「調べて見ようよ！そこの入り口の扉開けてさ！」

フィオの指差す先にはそれほど大きく無い鍵の掛かった入り口があった。右も左もわからない以上、調べてみるしか無いだろうと思い、俺は自身の太刀を取り出した。姿自体は違うがこれもキーブレードなので扉の鍵を開ける

「開けるぞ」

研究施設への入り口の鍵を解除し、俺達は不審な研究施設へと足を踏み入れた。

その研究施設には驚くほど人の気配が無く、防衛システムらしき物も起動する気配すら無かった。まるで俺達を誘い込んでいるかのような、いや、そもそも俺達の事など眼中に無いような、そんな感覚だった。

その道中、物音を立てないように歩いているとその途中に一つの扉を見つけた。だが廊下はまだ続いているようで、所謂個室なのだろう。扉の向こうから何やら話し声が聞こえてきたので俺達は耳を澄ました。

「……と言う訳だ。任務は理解出来たな？」
「わかってますよキリスさん、あいつの所にいきゃーいいんでしょ？」
「あぁ、鳴上 悠。あいつは我々にとって邪魔な存在となるはずだ」

扉の向こうにいる男がキリスと言う少年のような声と通信をしていた。キリスと言う人物が今回の事件に関係するのかは不明だが、その話の内容に雪子は驚愕していた。

「……まさか、鳴上君がここに？それに今の声……」

雪子はキリスと話していた男の声に聞き覚えがあるようで、さらに耳を澄ました。

「わーかってますよ。その代わり任務を成功させたら、報酬は払ってくれるんスよね？」
「当然だ、契約を破るつもりは無い」

男はどうやらキリスと何やら契約をしているようで、何やら気の抜けた口調だ。彼の声を聞いて雪子は確信した。

「嘘……足立さん……！？」
「雪子、何だよその足立ってのは？」

彼らに聞こえない様に聞くと、同じく自分達以外に聞こえないほど小さな声で雪子は解説を始めた。

「足立 透って言う人でね、私達の時空で起きた連続殺人事件の犯人なの」
「犯人……！？」

小声ながらもフィオは驚いていた。扉の向こうにいるのは殺人犯となると、驚きを隠せないのも無理は無い。

「でも、その事件は解決したんでしょ……？」
「うん、それで収容されたはずなんだけど……あの声は間違いなく足立さんだよ……」

丁度その時、足立とキリスの通信が終わったようで、足立はその部屋から消えていた。部屋に誰もいない事を確認すると俺達はそこに侵入した。当然中には誰もいない

「……ん？」

ふと部屋のデスクの上に目をやると、何かの資料を見つけた。

「これは？」

その資料を手に取ってみると、何やら細かく文字が刻まれていた。タイトルは『時空の器について』

それを読もうとしたとき、誰かが部屋に入ってきた。見つかったと一瞬思ったが、それは見覚えのある顔だった。

「リク！？」
「ダーク、それにフィオ……何故ここに？」

リクもキーブレード使いの一人であり、ソラと言う同じくキーブレード使いの親友がいる。俺達がここにいる理由を話すと、リクもまた話してくれた。どうやらミッキーと一緒にいた所を俺達と同じように襲撃され、気がついたらここにいたらしい。

「って事はソラ達もかよ……」
「あぁ、それに雪子の時空も歪められているとなると、これはただ事じゃない……」
「それより、この資料を読んでみよう。何かわかるかもしれないからな」

細かい所まで刻まれている謎の資料をみんなにも聞こえるようにしつつ研究施設の人間にばれないように読み上げた。

『時空の器について

全ての時空の均衡を保つとされる力を持つ存在であり、その力を無意識の内に身に宿すことから“器”と呼ばれる。全次元に二人しか存在せず、どの時空に存在するかも不明だが、器が元いた世界を離れた時、およそ半分の時空が歪みを起こす。歪んだ時空を元に戻す為には器を元の時空に戻す必要があるが、逆に二人を同じ場所に留めておけば歪んだ時空達は一体化を始め、やがてもう二度と戻らなくなる。また、生きている間自身が生きた時空の記憶を無意識の内に記録しておく事が出来るようで、我らの新世界の創造には最適だと推測した。我らはこれを『次元の記憶』と称す』

謎が解けるかと思いきや寧ろ深まってしまい、俺達は困惑しながらもその資料を片手に新たな仲間、リクを加え再びこの研究施設の中を進んだ。