CROSS28【禍津現る】
さて、その後の話を始めようか。
俺の名は鳴上 悠。以前話した通りペルソナ使いの一人で、八十稲羽を去ろうと電車に乗ったらいつの間にか見知らぬ港にたどり着いていた。
その頃には俺以外の乗客の姿は無く、運転手や関係者すらも消えていた。その上港にすら人の気配は無い。
そんな時にハートレスと言う謎の怪物と対面し、助けてくれたミッキーと共に撃退したが『漆黒の影』の一員を名乗るエスナと言う少女の襲撃に遭い、間一髪の所で彼女は去った。
その後俺はこの歪んだ時空の謎を突き止める為ミッキーと共に旅をする事になった。もしこの時空に巻き込まれた人が俺以外にもいるなら陽介を始めとした特捜隊もこの時空にいる可能性が高い。だからまたみんなで一緒に戦えるようにこの時空を生き抜くだけだ。
さて、ここからが本題なんだが、俺とミッキーは今港から少し離れた場所にいる。少し遠くに氷山が見えるので恐らくこの辺りは氷雪地帯なのだろう
「悠君、一旦ここで休もう」
「あぁ」
一旦足を止め、不気味なほど黒い空を見た。その色はまるで闇のようで今にも地面に降りかかりそうだ。そんな時、空から何かが急速に落ちてきた。幸いそれを受け止める事が出来たので目を見開いて見るとなんと一人の女の子だった。ミッキーはその少女を見て驚きながら言った。
「まさか……そんな!ヒトミじゃないか!」
「ヒトミとは?」
「僕の友達の妹で、以前話したキーブレード使いの一人だよ」
「キーブレード使いの少女が空から……じゃあヒトミも、俺と同じように時空の歪みに巻き込まれて?」
「残念だけどそうじゃ無いんだよね〜」
突然氷山のある方角から聞き覚えのある声がした。未だ目を覚まさないヒトミを地面に降ろして見上げると、そこには彼がいた。
「足立……さんっ!?」
「やぁ久しぶり、悠君」
「何故貴方がここにいる……?」
「足立 透……確か悠君の時空で起きた事件の真犯人だよね?それに逮捕されたって……」
「あのさぁ鼠さん……僕は未来じゃ逮捕なんてされてるのかい…?」
「……未来?」
今目の前にいる足立さんからはあのときとは違う雰囲気が放たれており、それに先程彼が発した“未来”と言う単語が疑問を生む。
「毎日が退屈すぎてクソったらありゃしない。そんな時に漆黒の影って言う人達が僕にこう言ったんだ……“最高のゲームに付き合う気はないか”って。僕はそれに乗ってここにいるのさ」
「そんな……漆黒の影はあらゆる時空だけじゃなく、時まで呼べるなんて……」
「どういう事だミッキー?」
明らかに何か知っているような台詞を吐いたミッキーは今の言葉の意味を話してくれた。
「この時空に来る前、僕はリクって言う仲間と共に世界に起きている異変について探っていたんだけど、その途中に漆黒の影の情報を掴み、彼らの能力の一つがわかったんだ。その内の一つが、様々な時空から人を連れてこられる能力……まさか好きな時代からも連れてこられるなんて……」
「つまり、目の前にいるのは“事件解決以前の足立”さん……」
「そう言う事。漆黒の影は鼠さんとそのお仲間が探ってるのを邪魔だと思ったようで、襲撃したらしいけどね」
「それでミッキーはリクと離れ離れに……」
ミッキーはあのとき俺を助けてくれた。だがそれは漆黒の影の者に襲撃されリクとはぐれた後で相当痛手を喰らっていただろう。それを聞いた俺は漆黒の影に対して無性に腹が立った。
「さてと、その漆黒の影に命令されてるんだよね〜、“君達を消せ”ってさ!」
足立はその台詞と共に自身のペルソナ、マガツイザナギを召喚した。