CROSS30【狭間の町で】
あれからどれだけの時が過ぎたのだろう、私――クロナとクラインは見知らぬ町へとやって来た。だがその町の雰囲気は何処かで聞いた内容で語られていた気がする。
「ここ、何処だ?」
SAOプレイヤーからすればもはや日常茶飯事であろう現実にはあり得ない町並みを見てクラインが言った。この町の空は常に夜のようで、そもそもこの町からは普通ではない雰囲気を感じる。それらの特徴を纏め私は初めてこの場所を理解した。
「わかった、ここはトラヴァースタウンだわ!」
「トラヴァースタウン……聞いたこと無い町だな?」
当然と言うか知ってたらおかしいクラインにこのトラヴァースタウンの説明をした。ここは所謂狭間にある町であり、かつて様々な世界が消滅した際、それらの欠片によって生まれた世界である。
「でも、確かソラ君がアンセムを倒したら消滅した世界は元通りになって、この世界も消滅したはず……」
「よくわかんねぇけど、時空が歪んで俺達の次元がぐちゃぐちゃになったからまた出来たとかか?」
私はクラインの意見に賛同するように頷いた。よくわからない所は多いが今はそう考えるのが打倒だろう。漆黒の影のせいで唯でさえ時空が不安定な為この世界ははっきり言っていつ消えるかわからない町なのであまり長居はしていられない。
「クライン、この町で出来るだけ探索をしたらすぐに出ましょう。この町は存在自体があやふやになってる」
「了解だ、さっさと行こうぜ」
この町に仲間達がいれば良いが、見つからなければ完全に時間の無駄遣いとなる。仲間が見つからなくてもせめて漆黒の影に関する情報等があればそれはそれで収穫だ。つまり今回の目的は自分達の仲間及び情報を探す事、この町はそんなに広くはなかったはずなので下手をすれば物の数分で終わってしまいそうだ。
「そういやお前、やっぱ似てるな」
「へ?」
「……いや、何でもない。早く行こうぜ!」
またも誰かに似ていると言われたが相変わらず誰の事かはわからない。
その後私達は町の探索に当たったがその道中にハートレスに遭遇する事は無かった。その上何の情報も無くおまけにこの町には人の気配すら無かった。まあ時空の歪みにより出来たこの時空に存在する訳だから人がいない方が自然なのだが。
トラヴァースタウンの三番街の扉を開けた時、すぐそこに見覚えのある顔があった。
「やぁお前ら、また会ったな」
「セラ!」
漆黒の影の一人であるセラ、彼が三番街に入った途端にそこにいた。今回以前の偽リズのような物は連れておらず、明らかに一人だった。
「おいお前!リズは無事なんだろうな!?キリトやアスナはどうした!!」
「おいおい落ち着け野武士面、そう焦らなくても答える」
彼の煽りにクラインは怒りを押さえ、セラは以前のような淡々とした口調で語り始めた。
「器なら心配はいらない。ちょっと前に逃げ出そうとしたけど、我々が丁重にもてなしてるよ。後黒の剣士は鳴冠が追放したし、閃光については何も知らない」
「じゃあ、お前が……!」
「フフッ、今頃どっちも倒れてるかもな?」
セラの発言にクラインは悔しそうな表情を浮かべた。まさか鳴冠がキリトまで襲撃していたとは思わなかった。アスナさんに関してはセラは本当に知らないようだが、あの言い回しからすると漆黒の影に襲撃されている可能性が高いと言う事。
「さて、また集団バトルと行こうぜ」
そう言ってセラは何処からともなくハートレスの集団を繰り出した。前回とは違い偽者はいないが、代わりに以前いなかった強力なタイプが幾つか追加されている。
「またハートレス集団…!?」
「あのセラってやつ、どんだけ俺達と戦わないつもりだよ!」
「悪いね、あまり手を汚さずに始末する方だからサ」
そう言ってセラは音も無く姿を消した。セラをすぐに追いかけようとするがすぐにハートレスに阻まれる。
「クロナ、行けるか!?」
「もちろん、何時でも準備OKよ!」