CROSS31【彼女の焦り】
今回の場合以前のような偽者等の強い敵はいないが代わりにその数が増えている上に新しく追加された物もいた。
前回同様私は自身のみに強いやつらばかりを引き付け、その他の敵をクラインに任せた。クラインの実力は確かに強いが信じていない訳ではない、だが彼は一人で旅立とうとしていた私に協力してくれた。だからこそ、私が強く無くてはならないと思ったのだ。
「はぁっ!」
得意の高速連続突きでハートレスを攻撃し、出来る限りの数を攻めるがその数はまるで減る気配が無い。いや、きっと倒せている。しかしその数が多いせいで感性が鈍っているのだろう。特にわざと自分の方に数を集めたのだから余計にそう思うのかもしれない
「くっ!」
自他共に認める剣のスピードもこのハートレスの数にはまるで意味を成さなかった。以前レイ君に言われた事がある、“君の剣は一つ一つの威力は低いけど、手元が見えなくなるくらいの早さで連続攻撃出来る”と。自身もこの剣の早さは光速級だとは認めていたが、この時に限って威力の低さが痛手となった。
「喰らえっ!」
それに対しクラインの一撃は重かった。軽く一振りしただけで敵が弱い物ばかりのもあるが三体も倒せている。彼の武器は私の物とは対照的で、私のそれは言うなればレイピアのような性能。あまり集団戦には向かないのだろうか
この状況はクラインが有利で私が不利。どうすれば良いのか敵の攻撃を防ぎながら思考を巡らせ、弾き飛ばした後あれを呼び出した。
「来て、ファラフェニックス!」
力が具現化姿こと聖獣を召喚し、ファラフェニックスがその翼を羽ばたかせるとハートレスは一気にその数を減らした。だが身体の大きな物にはかすり傷程度のダメージしか無い。
聖獣をコントロールし、さらにハートレス集団との連戦でそろそろ私の体力も限界に達してきた。
「おいクロナ、大丈夫かよ?」
「……うん、ダイジョバ!心配しないで」
クラインは私を心配してくれたけど、大丈夫としか言えなかった。先程も言ったが彼は私に協力してくれている。だからこそ余計な負担は掛けさせたくないのだ。
「でもお前疲れきってんじゃねぇか!」
「ダイジョバって言ってるでしょ?私が信じられない!?」
「……じゃあ何でお前は俺を信じないんだよ……」
クラインにそんな言葉を投げ掛けられた時、背後からハートレスの追い討ちが襲いかかってきた。だがそれは振り向いた途端突然斬られるようにして消えた。
「え!?」
「お前、大丈夫か?」
そこにいた少年には見覚えがあった。彼と同じキーブレードを持ち、髪形と色こそ違うがその顔つきは彼その物。黒いロングコートに身を包んだ彼がいる事に驚愕した。
「ロクサス!?」
ソラのノーバディ、ロクサス。]V機関と言う組織の一人で組織中唯一のキーブレード使い。だがそんな彼は少し前に消滅したはずだ。
「貴方、何故!?」
「そんなことより、こいつらだろ!」
ロクサスはハートレス達を指して確かにそう言った。なんと彼は私達と一緒に戦ってくれると言うのだ。
「良いのかよ、お前?」
「良いから早く倒そう!」
今まで二人だけだった戦力に頼もしい仲間が加わった。