CROSS34【純白の刃現る】
「紫音、テラって?」
「私達の時空の10年ほど前のキーブレード使いです。ただ、行方不明になっていたはずなのですが……」
「ですが、何?」
「装備が妙に古臭く無いんです。まるで過去から来たみたいに」
それにその身体つきや装備も10年前のそれであり、大して汚れても無かった。つまり考えられるのはテラが過去から飛ばされてきたと言う事、どうやら時空だけでなく時までも歪んでしまっているようだ。
「もしかして、この事態と何か関係あるのかな?」
「可能性としてはあり得るでしょうね。恐らくこの事態を引き起こした犯人が何らかの方法を用いてテラを過去からこの時空に引き込んだ……」
「……うっ」
「気がつきましたか!?」
りせさんに自身の意見を述べているとテラが意識を取り戻し、立ち上がった。
「もしかして、君達が助けてくれたのか?」
「はい、私は紫音と申します。そして彼女が久慈川 りせさん」
「宜しくねテラ!」
何故名前を知っているのか困惑するテラを見てすぐに今起きている事を解説し、先程述べた事も説明した。それが全て正論と言う事では無いが、今はそうとしか考えられないし黙っていても仕方無い為話す事にしました
「なるほど、つまりその“誰か”が俺をこの時空に……」
「テラ、唐突ですが私達に着いてきてくれませんか?一緒に犯人を倒しましょう!」
りせさんも強く頷き、私達は一度頭を下げた。テラは暫く躊躇したあと、答えてくれた。
「悩んでも仕方無い、そう言う事なら断る理由は無いな」
「ありがとうございます!」
「よし、これで戦力が増したね!」
「それにしても、その誰かとは一体?」
「わからないなら教えてやろう」
その刹那、何処からか怪しげな声が聞こえた。
「きゃあ!」
「りせさん!?」
いつの間にか私の隣からりせさんがいなくなっており、彼女の悲鳴が聞こえた方に振り向いてみるとそこには白い髪や瞳をした少年がりせさんを捕らえて立っていた。
「りせさん!」
「貴様、一体何者だ!りせをどうする気だ!!」
「俺はキリス、漆黒の影の一員さ」
キリスと名乗るその少年は私達を見て不適な笑みを浮かべた。彼が何者なのかはわからないが、キリスの口から放たれた漆黒の影と言う言葉が妙に気になる。
「漆黒の……影?」
「簡単に言えば新世界の創造者だ。全ての時空は交わり、そして壊れる」
「じゃあ……テラをこの時空に引き込んだのは貴方なのですか!?」
「正確には漆黒の影がな。それより、こいつはどうする?」
キリスがりせさんの手首を掴む力を強めた。漆黒の影のメンバーである彼はこのような卑怯な手段を取るとなると、こちらが下手に動けない。
「うっ……!」
「りせさん!!」
「貴様っ!」
「リーダーは今は様子見と言っていたが、腕が鈍る前に力試しをしておきたくてな」
「戦うって事ですか!」
「その通りだ」
キリスが何処からか白い剣を引き抜くと、それを構えた。そしてりせさんを捕らえているもう片方の手から謎の紫色の光が放たれ、いつの間にか彼女を包み込んでいた。
「な、なにこれ!?」
両手首を捕まれている為逃げることも出来ずりせさんは光の中に入っていく。しかしそれに痛みなどはなく、すぐに離れていった。
「え……?」
そしてその光が空中でみるみる形を変え、人の姿で着地した。その姿はりせさんその物だった、だが目にハイライトが存在せず、闇色のオーラを纏っていると言う決定的な違いがあり、本物もまだ捕まっている。
「こいつを捕らえたのにはこう言う理由があってな」
「りせさんの……偽者!?」
りせさんの偽者は不適な笑みを浮かべ闇色に染まったペルソナ、ヒミコを召喚した。その瞬間にキリスはりせさんを離し、彼女はすぐ私達の後ろに回った。
「大丈夫だったか?」
「うん……大丈夫。でも気を付けて!あの偽者、私とほぼ同じ性質を持ってる!」
「何から何まで偽者と言う訳ですか……」
その刹那、二つのキーブレードが出現する音が響いた。私達がそれぞれの武器を構えたのだ。一方のキリスももう片方の手に水色の剣を持っている。
「フッ……少しは楽しませてくれよ?」