CROSS35【まだ敵わない】
「テラさん、敵は何をしてくるかわかりません!注意してください!」
「わかった!」
謎の組織“漆黒の影”の一人だと言う少年、キリスは私達が迫ってきていると言うのに全く動かず守ろうともしない。
「行きます、エリアルブレイク!」
非常に単純な動作だが、高くジャンプした後そこから縦に剣を降り下ろす技“エリアルブレイク”で攻撃を仕掛けた。だがそれは当たる寸前に何かに弾かれた
「なっ!」
その正体はなんとヒミコの放った波動だった。しかし波動も、ヒミコ自身も闇色であるためあの偽者が妨害してきたと言う事が明白だ。
「あの偽者、私と同じなのに戦えるの!?」
「ハッ、実力は同じだが思考は違うのさ」
いくら偽者と言えど戦術までは完全にコピー出来ていないようだ。その為偽者は本物とは違いかなり攻撃的になっている。だがそれとは対照的にキリスは二刀流を構えているだけで特に動きを見せない
「くっ、私が偽者を引き付けます!だからその間にテラさんはキリスを!」
「了解だ!!」
偽者のペルソナに対抗するために私は自身の聖獣であるフェイクを召喚し、偽者のペルソナを押さえる為に終始聖獣のコントロールに徹した。一方テラさんは私が敵を引き付けている間にキリスに攻撃を仕掛ける。
「やっと会えたな」
先程ヒミコに邪魔され、中々キリスの元へたどり着けなかったテラさんがふとその言葉を発した。キリスは表情を変えず鼻で笑った。
「行くぞ!」
テラさんがソニックレイヴに闇の力を加えた技“ソニックシャドウ”を使ってキリスに突っ込むが、連続攻撃を行う直前にキリスの二刀流に受け止められ失敗した。
「なっ!」
「遅い!」
彼の剣はキーブレードごとテラさんを吹き飛ばし、さらに彼は自身の聖獣を呼び出した
「ノーブルディモン!」
上半身が一つ目の悪魔、下半身がムカデの上半身のような不気味かつ巨大な聖獣、ノーブルディモンがその姿を現した。
「嘘っ!?紫音以外にも聖獣使いが!?」
「フッ、その力を使うのはお前だけではないと言う事さ」
キリスはこちらに向かって走りながらノーブルディモンをコントロールしテラさんに攻撃した。
「くっ!」
「テラさんっ!」
「そんな……聖獣をコントロールしながら動き回るなんて……」
恐るべきキリスの実力に恐怖感を覚えながらもりせさんは自身のペルソナの特性を生かして彼の特徴を調べた。
「えっ?」
アナライズの結果彼の属性攻撃に対する耐性や弱点が表示された。その結果『物理攻撃は耐性があり、炎攻撃には弱く、氷攻撃は吸収、雷攻撃にも耐性、風と光、そして闇には特に耐性無し』と言う物だったが、驚くのはそこではなかった。
「戦力……測定不能!?」
そう、なんとキリスの戦闘力はペルソナでは計れないほど強力な物だった。炎属性が弱点である事は一応判明したが、今の状態では明らかに分が悪い。
「紫音!テラ!逃げるよ!!」
りせさんは今の自分達ではキリスに到底敵わないと察し、まず自分から駆け出した。
「行きましょうテラさん!」
「だが、しかし!」
「本当はわかってるんでしょう?今の私達では勝てません!!」
「くっ……!」
悔しそうな表情をするテラさんと共に私はりせさんを追いかけるようにして逃げ出した。
「フッ、まあ良い……」
後ろを振り返ってみるとそこにキリスの姿はなかった。私達が逃げたからじゃない、見逃してもらったんだ。あのままだったらすぐに捕まり、やられていた。