CROSS39【リーファの偽者】
リーファらしき少女はこちらに向かってゆっくりと歩いてくるが、それよりも先にアスナが彼女に駆け寄った。
「リーファちゃん!どうしてここに?」
アスナが声をかけてもリーファは何も言わなかった。その上さっきから目を閉じており、まるで周囲の事に感心を持っていないようだった。
「リーファちゃんってば!」
アスナが彼女に触れようとしたその時、リーファが瞳を開かずに不気味に微笑んだ
「っ!離れろアスナ!!」
「えっ?」
だが間に合わなかった。その瞬間リーファはかざした右手から風を起こし、アスナを吹き飛ばした。
「きゃあ!」
「アスナっ!」
俺は間一髪アスナを受け止め、リーファを見た。すでにその瞳は開かれており、その瞳にはハイライトが存在しなかった。それどころか先程まで存在していなかった闇色のオーラまで発生している。
「大丈夫か?」
「うん……ありがとうディア」
「それより、リーファはお前の知り合いだったんじゃ……?」
傷を負った彼女を支えている為現在まともに戦う事が出来ない。その隙を見てリーファが長刀を無言で構え、こちらに迫ってきた。
「クマ!俺はアスナの傷を回復するから、その間時間稼ぎを頼む!」
「了解クマ!アスちゃんに手は出させんクマ!」
この場をクマに任せ、俺はアスナの傷の治療に専念した。俺は基本的には戦闘向きの技ばかり使うが、こう言う時の為にケアルなどの回復魔法も揃えてある。アスナの傷は意外と浅かった為わりとすぐに完了した。
「これで大丈夫だ」
「ありがとう、ディア」
「どういたしまして、アス」
「へ?」
俺は実は昨日考えていたアダ名を勇気を出して言った。当然困惑の表情を浮かべられたが、それも一瞬ですぐに笑顔になった。
「うん、行こう……ディア君!」
「当然だアス!」
俺は長剣、アスはレイピアを構え、戦いに参戦した。先程まで時間稼ぎをしてくれた為かクマは多少のダメージを負っているようだ。
「待たせたな」
「待ってたクマ!それより、何故リーちゃんはクマだけじゃなくアスちゃんまで襲うクマ?」
「……わからないなら教えてやろう」
戦いの最中、突如リーファの口からアスとよく似た声が放たれた。その声は確かにリーファの口から放たれているようだが、どうも彼女の言葉では無さそうだ。
「っ?お前は何者だ!」
「私はエスナ。漆黒の影のNo.2であり、副リーダーを勤めている」
「漆黒の……影?」
「もっとも、今そこに私はいないけどね。この妖精剣士の偽者を通じて会話をしている」
「偽者ですって!?」
なんと今目の前にいるリーファは漆黒の影と言う組織が生み出した偽者だった。そして今、その副リーダーであるエスナが偽者を介して話しかけてきている。
「そう、貴方達の驚異パラメーターを測るため、戦わせたの。本来は始末する予定だったけど……気が変わったわ。来なさい、今私のいる場所……“シールボード”に」
その言葉を最後にリーファの偽者は爆発し、その反動で二人が吹き飛ばされそうになる。
「っ!ブラックソード!」
だが俺は自身の聖獣であるブラックソードを召喚し仲間達を守った。それにより偽者の爆発はやり過ごす事が出来た。
「大丈夫か?アス、クマ」
「うん、助かった」
「もう少しで吹っ飛ぶ所だったクマ……」
「それより、あのエスナってやつ……俺達を試していたのか?」
「みたいクマね……それに“シールボードに来い”とも言っていたクマ……」
「それってもしかして、クマさんが見たって言う施設!?」
「可能性は高いな……」
その瞬間、メンバー全員の表情が変わった。それに偽者が出てきたと言う事はリーファが漆黒の影とやらに囚われている可能性すらある
「行くの?ディア君……」
「当然だろ……行こう、リーファを助け、真実を知る為に!」