CROSS44【不利】
俺達は加勢に来てくれたレイ達と共にこの漆黒の影の所有施設――シールボードを進む事になり、メンバーが合計六人となった(バックアップ担当のユイも含めれば七人)。前線のメンバーはチームの機動性の都合上五人までしか無理な為、レイをユイの護衛として一旦前線から外し、俺達連合軍は先に進んでいた訳だが、案の定やつらは現れた。リーファの偽者、しかも三体。言葉すら発しないその偽者は見ているだけで不気味ささえ感じる。
「行くぜ、ジライヤ!」
「ペルクマっ!」
先手を討ったのは連合軍のペルソナ使い二人組。陽介が偽者の一体に向けて風魔法であるガルダインを撃つが偽者には効いていなかった。続けてクマがマハタルカジャと言う技で俺達の能力を高めてくれた。マハタルカジャとは味方全体の攻撃力を上げる技のようだ。
「気を付けてください!リーファさんの偽者には風属性は効きません!」
「風が駄目なら物理だ!」
ユイの言葉を聞いたキリトが二刀流を用いて陽介が攻撃した物とは別の偽者を攻撃するが、それもまた通用していなかった。
「どういう事なんだ!?」
何故物理攻撃が通用していないのかわからないままキリトは乱舞を続ける
「これならどうだ!」
ペルソナ使い二人とキリトがそれぞれ一体ずつを相手にしているので俺は残った一人を闇の炎――ダークファイガで撃った。だがやはり偽者には効いていない。
「っ!?皆さん気を付けて!大変な事がわかりました!この偽者達、それぞれ耐性が違うんです!」
「なんだと!?」
「ユイちゃん、どういう事なの!?」
後衛で偽者達の性質を測っていたユイが口にした言葉にキリトとアスは困惑する。偽者は確か本物と同じ能力のはず、砂漠で出会った偽者は風属性の魔法を使っていたから風属性耐性と言う事を完全に信じきっていたが、どうやら違うようだ。
「つまり見た目は全て同じですが、性質はそれぞれ全く異なると言う事です!」
「嘘だろっ!?」
「と言う事は、誰に何を使えば良いかわからんクマ!?」
クマの言う通りだった。きっと産み出された際に改造でもされたのだろう偽者達は唯でさえそれぞれ性質が全く違う上に見た目が全員同じで上手く弱点を突く事が出来ない。今のところ風、物理、そして闇の耐性をそれぞれが持っている事が判明している。
「こうなったら色々試すしか無い!燃えろっ!」
自棄になった俺は一番正面にいる偽者に向かって炎の魔法――ファイガを放った。それは軌跡を描きながら飛んでいき、見事に命中した。
「よしっ!」
「どうやら炎属性は効くみたいだね!」
メンバーの数の都合上とユイの護衛役で戦いに参加出来ず待機しているレイの言う通り、試してみると三体とも炎属性が効いた。弱点がわからない以上とりあえず当たる技でやるしか無いのだが、これには少し問題点がある。
それは炎属性の技を現状俺しか使えないと言う事。キリトとアスは元々SAOのアバターであるためそもそも魔法を持っていない為物理技しか使えない、そして陽介とクマも得意属性がそれぞれ風と氷であるため、まだ試していないクマはともかく先程ガルダインを止められた陽介には少々不安が残る。
レイを他のメンバーと入れ換えようにもリーファの偽者の動きは予想以上に早くその暇すら無かった。
こちらは五人、あっちは三体だと言うのにかなり不利な状況になっていた。
「中々粘るわね」
砂漠の時のように偽者の口から漆黒の影の一員エスナの声が放たれた。どうやら再び偽者を通じて俺達に話し掛けてきているようだ
「またお前か……!」
「ようこそシールボードへ、歓迎するわ。お客様には最高のおもてなしをしたいんだけど、何が良いかしら?」
「ふざけないで!本物のリーファちゃんは何処!?」
「……貴女、良い目してるわね」
リーファの偽者、もといエスナの視線がアスに向けられた。するとエスナは怪しく微笑み、こう言った
「“閃光のアスナ”とか言ったかしら?良いわ、特別に答えて上げる。妖精剣士は私の部屋に捕らえてある」
「っ!」
「一つ忠告しておくけど、偽者達は本物を起こさない限り消えないし、増え続けるよ」
「だがお前からリーファちゃんを助ければ良いんだろうが!!」
陽介がエスナにそう叫びながらジライヤを操り攻撃した。しかし偽者はそれを軽々と避け、しかも雷属性の魔法を放ちジライヤに落とした。
「ぐはっ……!」
「陽介!」
あまりにも大きなダメージに倒れる陽介にレイが駆け寄る。ジライヤは風属性を得意とするペルソナだが、雷属性に弱くこのように凄まじいダメージを受けてしまう。
「確かにそう……でもその前に偽者達を何とか出来るかしら?」
エスナがその台詞を言い終わるとほぼ同時に俺達が来た方から何かが迫ってきた。
「来たわね……」
振り向いて確認してみると、そこにはハートレスの中でもかなり厄介な部類に入るインビシブル、同じくノーバディの最高クラスの実力の持ち主であるソーサラーがそれぞれ三体ずついた。