CROSS45【実験体】
「そんな……」
「ソーサラーに……インビシブルだと!?」
「……何だよ?そのインビシブルとソーサラーって?」
突如戦闘中に現れた二種類の新手を知っているのは俺とレイのみ。キリト達がわからないのも自然だ
「あいつらは……ハートレスとノーバディの中でもトップクラスの強さを持つやつらだよ!」
「嘘だろ!?」
「って事は、偽者と纏めて相手しなきゃいかんクマ!?」
「つまり、そう言う事ね……」
「なんてこった……偽者と合わせて9体かよ!」
キリトが二刀流を使って一気に蹴散らそうとしたとき、その前にレイがキーブレードを持って現れた。
「キリト君とアスナさんは先に行って」
「レイ!?」
その言葉を投げ掛けられたキリトとアスは驚きの表情を隠せなかった。だが俺を含めたその他のメンバーはその訳を何となくだが察している
「リーファは二人の仲間なんでしょ?なら、早く行ってあげなきゃ。ここは俺達に任せて、ね?」
そう言ってレイはSAOプレイヤー二人以外のみんなを見た。当然その考えを理解していた一同は頷き、俺は黙って聖獣“ブラックソード”を呼び出した
「……みんな、すまない!」
「行こう、キリト君!」
キリトとアスはこの場を俺達に任せ、エスナの部屋に囚われていると言うリーファの捜索に向かった。そして俺達は二人を見送った後、改めて今の標的達に矛先を向ける。
「さーて、やっと俺も戦えるね!」
「よーし!男集団の力見せたるクマ!!」
「……お前は性別すら微妙だけどな……」
クマの意気込みに陽介が然り気無く突っ込み、ユイのバックアップの元戦闘を開始した。相手は9体と数が多いが俺達はすでにあの二人に後を託している為、ただ全力でやるのみだ。
一方、キリトとアスは着実に先に進んでいた。途中リーファの偽者には何体も遭遇した物の、久し振りに会ったとは思えないほど完璧な連携で倒し、慎重に先に進んだ
「ねぇ、キリト君……」
「ん?」
「今言うのもあれだけど……無事で良かった」
「……うん、アスナも」
「心配したんだよ?」
「フッ……悪い」
そんな懐かしいような久し振りの他愛無い会話をしている内に彼らは先程までとは違う通路に出た。そこは先程までの通路や部屋が辺り一面水色だったのに対し、辺り一面が赤色だったのだ。
「いよいよって事か……」
「この先に、リーファちゃんが……」
だがその赤い通路は一本道であり、向こう側には一つの扉があった。しかもその扉はここまで進む途中で見掛けた物とは違い明らかに大きく、それはエスナの部屋である事を示していた。
鍵が掛かっているのを確認した二人は強行突破で扉を破壊し、部屋に突入した。そこには先程までの通路からは想像もつかないほどの広さの中に大量のディスプレイやモニター、そして明らかに人一人が使える物ではない大きさのキーボードのような司令台があり、その部屋の中心にあるカプセルには彼女がいた。
「困るわね、扉を壊されちゃ」
そう言って現れたのはアスによく似た少女だった。ただし髪は赤色で分け目が逆と言う違いはある物の、彼女からは見た目の可憐さからは想像もつかないほどの激しさを感じた。つまり彼女こそが漆黒の影のメンバー、エスナだ
「っ!リーファちゃん!」
「あの扉、作るのにどれだけ掛かったと思ってるのかな?全く、これだからガキは……」
「……お前だって俺達とそう変わらないだろ?リーファを返せ!」
「そう変わらないですって?フフっ、どうかしらね?それと妖精剣士は返さないよ。何せ、実験体として最適だから」
「……実験体?」
カプセルの中に囚われている本物のリーファを見つめながらエスナがキーボードを打ち、大量のモニターに一つの画像を写した。それはよくわからない図ばかりが載った資料のようだった。
「私達漆黒の影には様々な能力がある。その内の一つがシャドウコピー、貴方達も見た通りのように精巧な偽者を作る事が出来る。でも私達の能力がこの時空の人間に適応するかは試してみないとわからない……だから彼女を使って偽者の実験をさせてもらった。リーダーにはこの実験が終わったら好きにして良いって言われたけど、私はさらなる実験に利用しようと思ってね」
長い演説を終えた後、エスナはカプセルの中で眠っているリーファの頬にそっと触れた。それを見た二人は武器を引き抜こうと構える
「仮に目覚めても記憶を消して上手いこと仲間にすれば……どうにでもなる」
「……それも、お前達の能力なのか?」
「……どうかしらね?」
「……もう良いわ。単刀直入に言うけど、リーファちゃんを返してもらうわよ!!」
「……フフっ……」
その瞬間、何故かエスナが高笑いは始めた。そしていつの間にか彼女の右手にはアスの物とそっくりな黒いレイピアが握られており、その矛先をキリト達に向けた
「なら貴方達が負けたら、貴方達も私の実験体にさせてもらうよ!それが勝負の掟だからね!」
そう言ってエスナは自らの力を身体の外に放出し、聖獣を呼び出した。
「フォルエンゼル!!」
その叫びと共に禍々しい姿をした堕天使、フォルエンゼルが現れた。