CROSS57【リアン・イデアール】
一方その頃、漆黒の影の城の司令室ではシャドウレイとキリスがモニターを見ながら話をしていた
「リーダー。どうやら鳴上 悠は、“ラミンブード”の方角に向かっているようだ」
「ラミンブードねぇ……困るなぁ、あそこは我らの兵器を生み出す場所なのに」
「だがラミンブードは海の上にある。見つけたとしてもたどり着く事は出来ないだろう」
「どうかな……?鳴上 悠にはミッキーがいるでしょ、キーブレードの力とやらで道を作られるかもよ?」
シャドウレイの予測する通り、王様ことミッキーのキーブレードの力は光の力で一時的にだが道を作る事が出来る。ただでさえ厄介極まりない強さを持つ二人が海上の兵器工場ラミンブードに来るとなると漆黒の影としてはピンチだ
「……あ、良いこと思い付いたかも」
「リーダー?」
「確か鳴上 悠の所に器がいたよね?」
「あぁ」
「やつらを招待してあげて。器を丁重にもてなしてから、回収しなきゃ。後は殺さない程度に工場を爆破して閉じ込める」
「本気なのか……?我らの計画に欠かせない工場だと言うのに……」
「構わないさ。今まで計画成功の為にどれだけの兵器と工場が消えていったと思う?今度こそ成功出来るのなら、惜しくない」
敵であるはずの鳴上達を殺さず、あえて兵器工場を爆破して閉じ込めることで計画を妨害させまいとするシャドウレイはあえて招待することで器を回収する作戦を選んだ。彼の威厳に強い想いを感じたキリスがシャドウレイにこう言った
「なら俺も、ラミンブードへ向かう。どうせ鳴上 悠の所へは鳴冠が向かっているし、数は多い方が良いだろう」
「キリス、実は丁度それを頼もうとしてたんだ」
「えっ?」
『何故』と言う表情をするキリスに見せるようにしてシャドウレイはモニターに写る映像を指差した
「彼らもまたラミンブードの方角へ向かっている」
そこにはライガとソラに千枝、それに直斗の四人が平地を歩いている姿があった
「恐らく彼らは鳴上 悠に合流する。だからラミンブードに入って来て器を回収したら……」
「同時に閉じ込めると言うことか」
シャドウレイは黙って頷いた。ラミンブードに近づきつつある鳴上一行、そしてそれに合流するであろうライガ一行。器であるヒトミを狙って開始される漆黒の影の作戦は犠牲者こそ出ない物の危険極まりない物だった
「それとねキリス、そろそろ俺も動こうと思う」
「リーダーが?」
そう言うとシャドウレイは立ち上がり、“愚者”のタロットカードを取り出した
「示せ、アルカナ」
そう呟くとタロットカードが不思議な光を放ち、気がついた時には“正義”のアルカナに変わっていた
「リーダー、まだその力は早いんじゃ無いのか?」
「いや、やるからには全力でやりたい。この、“アルカナシフト”を解禁してでも」
アルカナシフトとはシャドウレイが持つ禁断かつ強力極まりない彼の特性であり、自由に自身のアルカナを変化させ圧倒的な力を司る事の出来る力を持つ。
「リーダー……いや“リアン”!お前は自分の状態を分かっていながら戦おうとするのか!?」
「分かってるさ……充分。それにしても懐かしい名前だね?リアン・イデアール……俺の名前」
「あぁ……」
「親友だからこそ呼んでくれる名前だね」
リアン・イデアールと言う本名がキリスより明かされたシャドウレイは戦いの準備をする為に司令室から出て、キリスもまたラミンブードに向かうべく部屋を後にした