CROSS67【目的】
「その名前で呼ぶのは控えてもらえないかな?このアバターの姿では“アルベリヒ”と言う名前なのだから」
アルベリヒと名乗るその男は軽く指を鳴らすと三体のシャドウを出現させた。それには陽介とクマが特に驚いており、その長い銃が何より目を引いた
「まさか……こんなことって……!?」
「流石に驚いているようだね、アスナ?僕は君達の敵である漆黒の影に就いたと言う訳さ」
どうやらこのアルベリヒと言う男はアスナさんと知り合いのようだが、キリト君は誰なのかイマイチ分かっていないながらも警戒心を強めていた
「漆黒の影に就いた事で、僕はある契約をした。それは僕の研究――人間の記憶・感情・意識のコントロールを全て成功させるほどの力を与えてくれるとね!」
その瞬間、三体のシャドウが一斉に戦闘体制に入った
「その為には異界の英雄達を始末しなくてはならない……僕としては君をやるのは残念だけど、これで僕の野望は叶うはずさ」
「……」
「漆黒の影の一員となったお陰で、こんな風に異界の力も使えるようになったよ」
アルベリヒが指差したのは三体のシャドウ。もしこのアルベリヒと言う男がキリト君達の時空の人ならこのような非現実と出会い興奮するのは当然だろう。研究を成功させる力と言うのもこのような非現実を目の当たりにして信じたと言う事だろうか
「行け、刈り取る者!」
アルベリヒの指示で三体の刈り取る者が一斉に襲い掛かって来たが、それは巨大な疾風と氷結――ガルダインとブフダインに阻まれた
「何っ!?」
「へっ。こんなもん、テレビの世界のこいつよりも大したことねーぜ!」
「お前が使ってるのはただの紛い物クマー!」
刈り取る者を止めてくれたのは二人のペルソナ使いこと陽介とクマだった。その隙にディアが先程放ったダークスプレッドを一体に喰らわせ、更に俺が仕掛けた
「ストームラッシュ!」
陽介とクマとディアと俺の四人で何とか刈り取る者を無抵抗のまま倒し、残りは2体となった。
「アスナ、リーファ、行くぞ!」
「OKキリト君!」
「分かった!」
キリト君の指示によりSAO組の抜群の連携でさらに一体を撃破し、残り一体となった。 刈り取る者を一気に2体も倒されアルベリヒが同様している隙に情報支援を担当するユイちゃんの指示が下る
「ディアさん!ママと一緒に連携攻撃を御願いします!」
「「了解!」」
ディアはキーブレードを左手に持ち変え、アスナさんと共に駆け出した。標的は勿論、刈り取る者
「連携攻撃名は任せるぞ」
「フフっ、その代わり足引っ張らないでよね?」
「当然だ、親友」
ディアがありったけの闇を込めた左手でダークスプレッドを、アスナさんが強大な光を得た右手でスタースプラッシュを同時に放ち、それは刈り取る者に直撃した
「「デュアルスプラッシュ!」」
光と闇が混じり合うようにダークスプレッドとスタースプラッシュの二つの技が混ざり合い、それは強力な無属性攻撃となって刈り取る者を消滅させた
「よくやった、アス」
「ディア君もね」
ディアとアスナさんもそうだが、相手の呼び出した強敵をこうも簡単に倒すほどみんな強くなっているようだ。これは出会った時からすれば大きな進歩であり、誰もが見違えるほどである
「くそっ!ならもう一度……」
アルベリヒがさらに魔物を呼び寄せようとしたまさに時、キリト君が彼を気絶させて戦いに終止符を打った
「これで良し……だな」
漆黒の影が遣わした刺客であるアルベリヒを倒し、彼が一体何者なのかを訪ねようとしたその時、何処からか拍手の音が聞こえた
「見事なものだ」
その拍手の正体はこの時空に迷い混んで最初に出会った漆黒の影――No.3のキリスだった
「キリス!」
「知ってるのか?」
「うん、ディアは覚えてるよね?リズの事。彼女を連れ去ったのは、こいつなんだ!」
「何ですって!?」
「フン、そう言う事だ」
SAO関係者の全員はキリト君以外驚きを隠せていないようで、陽介達もすぐに彼が危険な人物だと察知した
「今日はお前達に、二つほど用事がある。一つはお前達との約束を果たしに来た」
「約束……?」
「覚えていないか?俺はあのとき、俺の呼び出した刺客を倒せば一つ情報を提供してやると言った」
キリスと初めて対戦して完敗したあのとき、確かにキリスはそのような事を言っていた。となるとキリスの言っていた悪人と言うのはこのアルベリヒと言う事になり、彼はその時の約束をちゃんと覚えていたのである
「……我ら漆黒の影の目的、それはこの時空を破滅させること」
「それ、どういう事だよ!?」
「この時空は元々、時空の歪みにより生まれたもの。それは全ての時空が交わって出来た事を意味する。もしその融合した世界が壊れれば……」
「間接的に、全ての時空を消滅させられるって事クマね……!」
「そう言う事だ。そうなればお前達もただでは済まないだろう。最悪の場合、命が消えるやもしれん」
「……っ!そんなっ!?」
「……待った」
漆黒の影の目的が明かされ全員が衝撃を受けている中、ただ一人冷静なキリト君がその口を開いた
「もしそれがお前達の目的なら、この時空を生み出してすぐに実行出来たはず。なのに何故しなかった?それどころか、リズを連れ去りリーファを実験に使い、俺達をこの時空へと迷い混ませた。出来ない理由でもあるのか?」
「そう言えば……」
「確かに……」
キリト君の言う通り確かにキリスの語る目的には不自然な点も無いわけではなかった。何故漆黒の影はすぐにでもこの時空を破壊しなかったのか、何故数々の実験を行いながらも俺達をこの時空へと落としたのか、疑問だらけである
「残念だがそれには答える事は出来ない」
そう言うとキリスは自らの愛剣“オリヴィアン・ディスメギス”を引き抜き、その矛先を向けた
「さて、それでは第2の用件を果たすとしよう」
キリスがその剣先から溢れんばかりの氷結を放ち、それはこの高原に巨大な迷宮を作り上げた。その上俺達はその中に強制的に迷い混み離れ離れになってしまった