CROSS69【変えられぬ運命】
キリスが産み出した氷の迷宮を抜けると、そこには先程まで周囲に吹いていたはずの風さえも失せるほど強大な雰囲気を放っている金目の自分の姿があった。しかしそれは俺そのものと言う訳では無いようで、俺に似た彼は数秒経ってやっとこちらに気がついた
「……ん、君達は……」
当然だが全員今の状況に困惑している。それも先程仲間が一人浚われたショックがまだ残っている上にもう一人の俺がいるのだから、もう何が何だか分からなくなっているのだろう。それに先程から誰も言葉を発しようとしないが表情だけは驚きを隠せていない
「レイ、キリト、陽介、ユイ、ディア、クマ、リーファ……」
なんと彼は俺達の事を知っていた。何故俺達の名前を知っていたのか俺達が聞こうとしたまさにその時、謎の少年はその口を開いた
「もう一人はどうした?」
「もう一人……アスの事か……!」
「っつー事は、こいつは……!」
俺達の事を知っている事やもう一人の存在も把握しており、今までの漆黒の影のメンバーが俺達の誰かに酷似した容姿であった事を考えると、答えは一つしかなかった
「そう、俺はシャドウレイ。君達の敵である、漆黒の影のリーダーだ」
「やっぱり……!」
ついに姿を現した漆黒の影のリーダーことシャドウレイは不敵な笑みを浮かべると同時に、右手を翳すと突然無の中から一冊の分厚い不気味な本が出現した
「さてはキリス、もう浚ったのか……全く、しょうがないな……」
「えっ?アスナさんを浚うように命令したのは、貴方じゃないの?」
「今回はキリス達の独断なんだ。俺は反対したのだが、キリス達は結局実行した……すまなかった」
今回の件の真実を伝えると同時にシャドウレイは頭を下げた。本当に敵のリーダーなのか疑わしくもなるが、少なくとも今彼が言った事は本気のようだ
「別に信じなくてもいい。信じろと言う方が、無理な相談だろうからな。でも俺が言ったのは、真実だ」
「……あぁ、信じる。お前の目は嘘をついていない」
「流石、黒の剣士。理解してくれると、思ったよ」
シャドウレイはキリト君にそう言い放ちつつも先程の不気味な本の真ん中辺りのページを開いており、そこから一枚のカードを取り出した。それは愚者のタロットカードであり、そのカードは青色の光を帯びていた
「……正位置……悪くない」
その言葉を放つと共に風が吹いてもいないのに本が勝手にページを捲り、そのページを見てシャドウレイが少し微笑んだ
「シャドウレイ……今回の件は分かったが、だがアンタのしたことを許すつもりは無い」
流石と言うべきか早々に冷静さを取り戻していたディアはそう言い放つと、そのキーブレードを構えた
「お前を倒して、この時空を元に戻す!」
「あぁ!せっかく目の前に敵の親玉がいるんだ、こんなチャンス他にねーだろ!」
「相手は一人!クマ達ならやれるクマ!」
「アスナ……こいつを倒した後で助けに行くからな!」
「全力でみんなをサポートする!」
「シャドウレイ……俺達は負けないぞ!」
メンバー全員が戦闘体制に入ったのを見たシャドウレイは本を閉じ、目を瞑ってから少し俯いた
「……そうか」
シャドウレイはそれだけ言うと、念力だけで本を開いた。さらにその本の開いたページから凄まじい光が放たれており、いつの間にかシャドウレイの左手には2メートルほどの長さの片手用直剣が握られていた
「ならば君達に教えよう……どうしても変えられぬ運命が、そこにある事を」
その言葉を放つと共にシャドウレイは何処からともなく先程のタロットカードを取り出し、あえて攻撃はせずその場に立ち止まった。まるで俺達の攻撃を誘っているかのように
「はぁっ!」
「キリト君!?」
その挑発に乗ってしまったのかキリト君が先行し、自らの得意技であるスターバーストストリームを放つがそれは軽く避けられてしまった。アスナさんの事もあり漆黒の影には強い恨みがあってもおかしくないこの状況で冷静さを失っては相手の思うツボであり、それはシャドウレイですら例外ではなかった
「なっ……!?」
「面白い技だ……俺もちょっと、やってみるかな」
その刹那シャドウレイの本から不気味な光が放たれ、気がついた時にはシャドウレイもまたキリト君同様二刀流となっていた。その上シャドウレイが取った行動はスターバーストストリームのそれであり、キリト君は自分自身の技で一瞬にして倒されてしまった
「ぐっ……!」
「キリト君!」
「パパ!!」
「嘘……お兄ちゃんの技を、1度見ただけで習得するなんて……!!」
キリト君のスターバーストストリームをたった1度見ただけで習得しキリト君を打ち倒したシャドウレイには強大な力があると思われ、その力はもはや天才を通り越して最強のカリスマ性とも呼べる物だった
「さらに、行かせていただこう」
さらにその瞬間どういうわけか味方全体の能力がダウンし、シャドウレイから発せられる力が逆に増していた。その上シャドウレイの両手には剣は無く、代わりに右手に先程の本があった。シャドウレイが左手で指を鳴らすと同時にメギドラオンを放ちダメージを与えてきたけど尚、今解説した事は全て一瞬で起きた出来事である
「ぐっ!!」
「うわっ!!」
「嘘だろっ……ランダマイザとヒートライザ、メギドラオンを同時に放っただって……!?」
「ヨースケ違うクマ!同時じゃなくて、やつは人間離れした速度で技を使ってるクマ!」
「そんな……!」
「フフッ、それじゃあ俺が人間じゃないみたいな言い方だな」
シャドウレイはさらに本のページを進め、ページから発せられた光から幾つかのカードを取り出すとクマの方を見て不気味に微笑んだ
「けど、案外それは間違いではない。君へのご褒美として、面白い物を見せてあげよう」
その言葉と共にカードの一枚が独りでに砕かれ、空中に信じられないものが出現した
「イザナギ!」
なんとシャドウレイのカードにより呼び出されたのはペルソナイザナギであり、イザナギはシャドウレイの意思のままにマハジオダインを放った
「「うわぁ!!」」
「ジライヤ!」
続いて現れたのは陽介も使っているペルソナことジライヤであり、マハガルダインで全体を攻撃した
「トモエ、コノハナサクヤ!」
さらに2体のペルソナが同時に現れ、炎と氷の竜巻が発生した。それは仲間達全員を巻き込み、一瞬にして瀕死まで追い詰めた
「ヒミコ、タケミカヅチ、スクナヒコナ!」
ヒミコでこちらの事を分析された上で今度は雷と混沌が同時に発生し、全員がもうすでに立ち上がれないほどの傷を負っていた
「見せ物はこれだけじゃない。来たれ、エルシオン!」
「なっ!?」
シャドウレイが繰り出したのは俺の聖獣ことエルシオンであり、その風属性魔法で倒れているキリト君を吹っ飛ばした
「くっ!!」
「キリト君!」
「ファラフェニックス!」
「嘘……だろっ……!!」
「ガントラ、ブラックソード!そしてダークエンド、フェイク!」
仲間達の聖獣及びペルソナを繰り出され仲間達は数えきれないほどの攻撃を受け、シャドウレイはさらに追い討ちをかけるようにして13枚のカードを取り出した。愚者、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、法王、恋愛、戦車、正義、隠者、運命、剛毅、刑死者の0〜12番目の全てのタロットカードを握っており、何れも青い光を纏っていた
「さぁ、もっと本気を見せてくれ……!」