CROSS70【アルカナシフト】
「ジライヤ、万物流転!」
13枚のタロットカードの内魔術師のアルカナが砕かれると同時にジライヤが再びシャドウレイのペルソナとして現れ、風属性の中でも最高の威力を誇る“万物流転”を陽介に向かって放った。陽介には風属性耐性があるはずだが、何故か本来以上のダメージを喰らい吹っ飛んだ
「ぐはっ……!!」
「陽介!」
「どうしてなんでしょう……?陽介さんは風には強いはずなのに、耐性の無い状態とほぼ同等のダメージを喰らっています!!」
「嘘だろっ……」
ユイちゃんの解析により風属性に強いはずの陽介が平均以上のダメージを喰らった事が判明し、シャドウレイが瞬時にガードキル系の技でも使ったのでは無いかと誰もが疑ったがその真相はシャドウレイ自身の口から語られた
「それが“封印の書物”の力さ。この書物は、相手のあらゆる耐性を無効化する」
「そうか!だから陽介が耐性があるはずの風属性を喰らってしまったのか!!」
「って事は……私達の耐性全部打ち消されちゃってるって事!?」
「そうなるよね……」
シャドウレイが所持している不気味な本は封印の書物と呼ばれる物らしく、あれが有る限りこちらの持つ属性耐性を全て無力化されてしまう。つまりどんな強力な耐性を持っていたとしてもシャドウレイの前では無意味と言う事である
「さらに封印の書物は、こんな事も出来る」
その瞬間封印の書物から不気味な光が煌めき、目を見開いた時にはシャドウレイの左手にキリト君の剣ことエリュシデータが握られていた。一瞬誰もがキリト君から奪い取ったと疑ったが、今もエリュシデータはキリト君の右手に握られている。しかしもう1つのエリュシデータはしっかりとシャドウレイの左手にあり、それは封印の書物の能力をここにいる全員に知らしめていた
「エリュシデータ!?」
「まさか、封印の書物は自由自在にモノを産み出す力まであるのかよ!?」
「と言う事は、さっきまでの聖獣やペルソナは……!!」
「正確には、創造しているのだけれどね」
封印の書物は相手の耐性を打ち消す以外にもペルソナや聖獣、武器などを初めとしたあらゆるモノを創造する力まで秘めていた。先程の二刀流や仲間達のペルソナや聖獣は全てこの力で創造されていた事になり、すでにその姿が無い事を考えるとシャドウレイの意思で出したり消したり出来るようだ
「さて、そろそろ終わらせよう……!」
エリュシデータを消滅させ先程の13枚から1つのカードを引き抜くと、シャドウレイは封印の書物の力で左手に斧のような刃が付属したハンマーを握り青い光を放つそのアルカナカードを見つめた
「知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった……カードが告げた旅路を巡り、未来に淡い希望を託して。 そう……とあるアルカナがこう告げた……何もかもが不確か故に、正しき答えを導かねばならぬ事を……示せ、アルカナ」
不思議かつ意味深な口上を言い放つとタロットカードが表になり、正義のアルカナが露になった。次の瞬間正義のアルカナカードは消えており、シャドウレイの気配が変わっていた
「皆さん、気を付けてください!シャドウレイの気配が変わりました!」
「変わっただって!?」
「はい!先程まではお兄さんやパパと同じく“愚者”の反応だったのですが、何故か今は“正義”の反応を感じます!」
「それが“アルカナシフト”だ。俺の中には各アルカナの俺がいて、全員が倒されぬ限り、俺は倒れない」
「それも……封印の書物の力なのか……!?」
「いや、これは俺自身の力さ」
謎の能力アルカナシフトによりシャドウレイは自身のアルカナを愚者から正義に変化させ、戦闘を続行した。その後もシャドウレイは封印の書物で産み出したペルソナやアルカナシフトにより変化していく存在を使い分け、俺達を追い詰めていく
「ぐっ……!」
「うぅっ……!」
「止めだ……アルカナセレクト!!」
その瞬間シャドウレイの左手の平が輝き、その手の先には攻撃対象が二人いた
「愚者!」
「「うわぁぁぁああっ!!」」
「お兄ちゃん!レイさん!!」
何故かシャドウレイに愚者と宣言されただけだと言うのに俺とキリト君は今にも自分自身が崩壊しそうな痛みに襲われ、地に倒れ付した
「法王!!」
「なにっ……ぐわぁ!!」
「ディア!」
今度は法王と宣言された途端にディアが同じ現象に襲われ、耐えきれず倒れた
「戦車!」
「きゃあっ!!」
「リーちゃん!」
続けてリーファがやられ、シャドウレイはさらにアルカナを文字通りセレクトしていく
「魔術師!」
「うわぁっ!!」
「ヨースケ!!」
陽介さえも正体不明の現象に敗れ、現在立っているのはクマだけとなった。しかしシャドウレイはクマに先程の攻撃をしてくる気配が無く、封印の書物のページを高速で進めていた
「何でクマにはやってこないクマ!?」
「……分かりました!恐らくあの技は、指定したアルカナを持つ人に絶大なダメージを与える技なのだと思われます」
「だから愚者から正義に変えたクマね……!」
「何故クマさんが対象にされる気配が無いのかは、恐らく先程の13枚が関係している物と思います」
先程の13枚、要するに0から12番目までの全てのアルカナカード。クマのアルカナは星であり、この中には入っていない。そうなると答えは1つだった。シャドウレイは恐らくだがこの13種類のアルカナしか使えず、またアルカナセレクトも同様でその中からしか選べない為にクマは狙われずに済んだのだと思われる