旅人探し 〜シンフォニア編〜 PART2
「うっ・・・!?」
すると突然胸に痛みが走り、セレスはその場に倒れ込んでしまう。
「げほっ、ごほ、ごほっ!どうして、こんな急に・・・!?す、スイッチを」
苦しそうに胸を押さえ、起き上がる力も無く、テーブルの上にあるスイッチに手を伸ばすが当然届かない。
ゴロンと体勢を変え、せめて楽な姿勢を取ることで精いっぱいだった。
「(苦しくて大声が出せないし、何か、他に大きな音が出そうな物を・・・!)」
何か探そうとするも目の前がボヤけだし、意識が飛んでしまいそうになるのをセレスはぐっと堪える。
「(助けて・・・助けて、お兄様・・・!)」
ギュっ、と目を瞑ると、頭上から見知らぬ声が聞こえた。
「おや、これはいけない・・・大丈夫ですか、セレス様」
「え・・・?」
何とか顔を上げ、声の主を確認すると、白黒の道化師のような服を着た人物が自分に手をかざしていた。
そこから緑色の光が発せられると、たちどころに体が楽になっていくのを感じ取れた。
「ど、どちら様?」
「私、サイグローグと申します。いや驚きました。こちらに参ったらセレス様が床に倒れていたものですから」
セレスは起き上がって恐る恐る尋ねると、サイグローグはお辞儀をしながら口を開き、どうしてここに来たかをセレスに話し出した。
「いきなりの訪問で申し訳ございません。実は、本日はセレス様に夢のような情報をお話しにきました」
「・・・わたくしに?」
「はい」
にっこりと笑顔を浮かべるサイグローグを、セレスは何だか不気味に思っていた。
普段なら不審者としてすぐさま他の人物を呼びつけるのだが、このサイグローグは先ほど自分を治療してくれたし、何が目的かが分からなかった。
どうやってこの部屋に入ったのかなど聞きたい事がたくさんあったが、とりあえずセレスはこの人物と二人きりにはなりたくなかったので、スイッチを手に取った。
「あ、あの、そのお話、わたくしの執事を同席させてもよろしいかしら?」
「んー、構いませんが、恐らく無駄だと思われますよ?」
「それはどういう・・・」
カチッ、とスイッチを押して少し待つが、トクナガは現れない。
ならばと連続で2回押しても、トクナガが現れる気配は一向に無かった。
「そんな・・・どうして・・・」
押すのを止めたセレスは、先ほどの発言をしたサイグローグを睨み付けた。
「あなた、トクナガに何をしたんですの!?」
「ご、誤解でございますセレス様!ただ、ちょっとこの場所を空間ごと切り取らせて頂いたので、外部との連絡が取れなくなっているだけなのです。このお話は、なるべく私とセレス様だけでしたいものですから・・・」
「空間を?そんな事が・・・」
試しにセレスは扉を開けようとするが、鍵がかかっている訳でもないのに全く開こうとはしなかったし、窓の外も街の明かりや空の星が見える夜景であったのに、今は何も見えず、真っ暗になっている。
サイグローグの言っている事が本当だと確信し、セレスは未だに驚きを隠せない表情でサイグローグの方へと向いた。
「ご理解いただけたようですね、セレス様」
「何者なのですか、あなたは・・・」
「ふふ、それは秘密でございます」
片目を閉じ、立てた人差し指を口元に当てるジェスチャーをした後に、サイグローグは‘さて──’と言いながら話を切り出した。
「本題に入りますが・・・セレス様、何か願い事はありませんか?一つだけ、何でも叶えてさしあげますよ」
「願い事?」
「ええ、例えば・・・死んでしまった兄を生き返らしてみたい、とか」
「えっ!?」
そんな事が可能だとしたら、正に夢のようだった。
今までのサイグローグの行動からしてただ者ではない事は十二分に理解したし、死人を復活させる事も可能かもしれなかった。
そして、そんな余りにも唐突な言葉に思わずセレスはサイグローグに歩み寄っていた。
「お、お兄様を生き返らせる事ができますの!?」
「可能でございますよ・・・ただ、それにはセレス様に協力していただく必要がありまして」
兄が生き返る。そのためならば、セレスは何だってする覚悟でいた。
そんな必至な様のセレスを見て、サイグローグは表情には出さず、心の中でニヤついていた。
「わたくし、やりますわ。お兄様のためならどんな事でも!」
「ふふ、迷いのないその尊さに感謝いたします」
そう言うと、サイグローグはまたお辞儀をする。
「これから私が異世界へと続く扉を開きますので、そこで8つの特別な宝石を集めて欲しいのです・・・が、その世界にも魔物はいますので、お体の弱いセレス様には酷なことでしょう。そこで、セレス様にはこれをお渡しいたします」
「?・・・これは、エクスフィア!?」
自分の右手が光りだしたので、何かと思って光が収まってから見てみると、立派な要の紋の付いた、ちゃんとしたエクスフィアが装着されていた。
エクスフィアとは、簡単に言えば装着した者の身体能力を高める効果のある宝石だが、要の紋という抑制装置が無いとエクスフィアに寄生されてしまい、醜い化け物へと姿を変えてしまうものである。
しかもこのエクスフィアは見るからにランクの高そうな物なので、セレスはこれを装着する事で体の弱さが改善されるどころか、余裕で魔物と戦う事も可能になりそうであった。
「後は・・・そうですね、武器としてこれもお渡ししましょう」
「これは一体・・・?これにも、エクスフィアが付いているようですが」
「それは少しばかり変わった武器でして、念じる事で剣になったり盾になったり、はたまたハンマーになったりなど、本人の想像次第でどんなものにも変化する代物です。試しに剣になれ、と念じてみて下さい」
エクスフィアの埋め込まれた乳白色の短い棒みたいなのを手渡されたセレスは言われた通りに軽く念じてみると、一瞬でセレスにはちょっと大振りな剣へと変化した。
エクスフィアは武器に付ける事も可能であり、その場合は武器の性能を大幅に上げる力があるので、これもその一種なのだろうとセレスは思った。
盾や他の物に変化することも確認したセレスはただの棒に戻し、失くさないように腰に装着した。
「そして、こちらが異世界へと続く扉でございます」
「これが・・・」
サイグローグはパチンと指を鳴らし、大きな扉をその場に出現させる。
見ていると引き込まそうになってくるが、セレスは何かを思い出したのか、小走りでタンスからある物を取り出した。
「セレス様、そちらは?」
「これはわたくしが去年お兄様からもらった誕生日プレゼントの鞄ですわ。持って行ってはダメでしょうか?」
「そんなことはありません。持って行ける物なら何でも持ち込みOKでございますよ」
「・・・ありがとう」
セレスは星のマークの入った鞄を見つめながら言った。
これは去年、ゼロスから護身用としてもらった鞄であり、鞄なのに護身用?と不思議に思ったら、一緒に送られてきたメモ書きを見るとどうやら鞄本来の使い方をしてもいいし、武器としても使用できるらしい。
材質がとても硬い物で作られているようで、これで殴ったら常人ならばひとたまりもないだろうと思えた。
見た目からしたらとてもではないが武器には見えないので、もしかしたら相手を油断させる目的で製作者はこれを作ったのかもしれない。
武器自体はサイグローグから受け取ったが、何かあった時に役立つかもしれないし、何より兄からもらった物を旅立つときに持って行きたかった。
そんな事を思いながらセレスは扉の前へと立つと、サイグローグがわざわざ扉を開けてくれる。
「最後になってしまいましたが、この旅はセレス様以外にも七人おりますので、ぜひとも皆さんと協力して宝石を集めて下さいませ」
「わたくし以外に、あと七人が旅を・・・」
セレスはつぶやき、扉の中をのぞくと、この奥へと進むのは勇気がいりそうなほどだったが、ゼロスの事を想うとそんな不安はどこかへと消えていってしまった。
「(いつまでも素直になれなくてごめんなさい、お兄様・・・今度こそ、セレスの本当の想いを伝えに行きます)」
セレスが扉の奥へと進み終えたのをサイグローグは確認すると、その扉を消し、今度は自分用の扉を出現させる。
「いやはや、今回は楽でしたね。毎回こんな風だと良いのですが」
すると突然胸に痛みが走り、セレスはその場に倒れ込んでしまう。
「げほっ、ごほ、ごほっ!どうして、こんな急に・・・!?す、スイッチを」
苦しそうに胸を押さえ、起き上がる力も無く、テーブルの上にあるスイッチに手を伸ばすが当然届かない。
ゴロンと体勢を変え、せめて楽な姿勢を取ることで精いっぱいだった。
「(苦しくて大声が出せないし、何か、他に大きな音が出そうな物を・・・!)」
何か探そうとするも目の前がボヤけだし、意識が飛んでしまいそうになるのをセレスはぐっと堪える。
「(助けて・・・助けて、お兄様・・・!)」
ギュっ、と目を瞑ると、頭上から見知らぬ声が聞こえた。
「おや、これはいけない・・・大丈夫ですか、セレス様」
「え・・・?」
何とか顔を上げ、声の主を確認すると、白黒の道化師のような服を着た人物が自分に手をかざしていた。
そこから緑色の光が発せられると、たちどころに体が楽になっていくのを感じ取れた。
「ど、どちら様?」
「私、サイグローグと申します。いや驚きました。こちらに参ったらセレス様が床に倒れていたものですから」
セレスは起き上がって恐る恐る尋ねると、サイグローグはお辞儀をしながら口を開き、どうしてここに来たかをセレスに話し出した。
「いきなりの訪問で申し訳ございません。実は、本日はセレス様に夢のような情報をお話しにきました」
「・・・わたくしに?」
「はい」
にっこりと笑顔を浮かべるサイグローグを、セレスは何だか不気味に思っていた。
普段なら不審者としてすぐさま他の人物を呼びつけるのだが、このサイグローグは先ほど自分を治療してくれたし、何が目的かが分からなかった。
どうやってこの部屋に入ったのかなど聞きたい事がたくさんあったが、とりあえずセレスはこの人物と二人きりにはなりたくなかったので、スイッチを手に取った。
「あ、あの、そのお話、わたくしの執事を同席させてもよろしいかしら?」
「んー、構いませんが、恐らく無駄だと思われますよ?」
「それはどういう・・・」
カチッ、とスイッチを押して少し待つが、トクナガは現れない。
ならばと連続で2回押しても、トクナガが現れる気配は一向に無かった。
「そんな・・・どうして・・・」
押すのを止めたセレスは、先ほどの発言をしたサイグローグを睨み付けた。
「あなた、トクナガに何をしたんですの!?」
「ご、誤解でございますセレス様!ただ、ちょっとこの場所を空間ごと切り取らせて頂いたので、外部との連絡が取れなくなっているだけなのです。このお話は、なるべく私とセレス様だけでしたいものですから・・・」
「空間を?そんな事が・・・」
試しにセレスは扉を開けようとするが、鍵がかかっている訳でもないのに全く開こうとはしなかったし、窓の外も街の明かりや空の星が見える夜景であったのに、今は何も見えず、真っ暗になっている。
サイグローグの言っている事が本当だと確信し、セレスは未だに驚きを隠せない表情でサイグローグの方へと向いた。
「ご理解いただけたようですね、セレス様」
「何者なのですか、あなたは・・・」
「ふふ、それは秘密でございます」
片目を閉じ、立てた人差し指を口元に当てるジェスチャーをした後に、サイグローグは‘さて──’と言いながら話を切り出した。
「本題に入りますが・・・セレス様、何か願い事はありませんか?一つだけ、何でも叶えてさしあげますよ」
「願い事?」
「ええ、例えば・・・死んでしまった兄を生き返らしてみたい、とか」
「えっ!?」
そんな事が可能だとしたら、正に夢のようだった。
今までのサイグローグの行動からしてただ者ではない事は十二分に理解したし、死人を復活させる事も可能かもしれなかった。
そして、そんな余りにも唐突な言葉に思わずセレスはサイグローグに歩み寄っていた。
「お、お兄様を生き返らせる事ができますの!?」
「可能でございますよ・・・ただ、それにはセレス様に協力していただく必要がありまして」
兄が生き返る。そのためならば、セレスは何だってする覚悟でいた。
そんな必至な様のセレスを見て、サイグローグは表情には出さず、心の中でニヤついていた。
「わたくし、やりますわ。お兄様のためならどんな事でも!」
「ふふ、迷いのないその尊さに感謝いたします」
そう言うと、サイグローグはまたお辞儀をする。
「これから私が異世界へと続く扉を開きますので、そこで8つの特別な宝石を集めて欲しいのです・・・が、その世界にも魔物はいますので、お体の弱いセレス様には酷なことでしょう。そこで、セレス様にはこれをお渡しいたします」
「?・・・これは、エクスフィア!?」
自分の右手が光りだしたので、何かと思って光が収まってから見てみると、立派な要の紋の付いた、ちゃんとしたエクスフィアが装着されていた。
エクスフィアとは、簡単に言えば装着した者の身体能力を高める効果のある宝石だが、要の紋という抑制装置が無いとエクスフィアに寄生されてしまい、醜い化け物へと姿を変えてしまうものである。
しかもこのエクスフィアは見るからにランクの高そうな物なので、セレスはこれを装着する事で体の弱さが改善されるどころか、余裕で魔物と戦う事も可能になりそうであった。
「後は・・・そうですね、武器としてこれもお渡ししましょう」
「これは一体・・・?これにも、エクスフィアが付いているようですが」
「それは少しばかり変わった武器でして、念じる事で剣になったり盾になったり、はたまたハンマーになったりなど、本人の想像次第でどんなものにも変化する代物です。試しに剣になれ、と念じてみて下さい」
エクスフィアの埋め込まれた乳白色の短い棒みたいなのを手渡されたセレスは言われた通りに軽く念じてみると、一瞬でセレスにはちょっと大振りな剣へと変化した。
エクスフィアは武器に付ける事も可能であり、その場合は武器の性能を大幅に上げる力があるので、これもその一種なのだろうとセレスは思った。
盾や他の物に変化することも確認したセレスはただの棒に戻し、失くさないように腰に装着した。
「そして、こちらが異世界へと続く扉でございます」
「これが・・・」
サイグローグはパチンと指を鳴らし、大きな扉をその場に出現させる。
見ていると引き込まそうになってくるが、セレスは何かを思い出したのか、小走りでタンスからある物を取り出した。
「セレス様、そちらは?」
「これはわたくしが去年お兄様からもらった誕生日プレゼントの鞄ですわ。持って行ってはダメでしょうか?」
「そんなことはありません。持って行ける物なら何でも持ち込みOKでございますよ」
「・・・ありがとう」
セレスは星のマークの入った鞄を見つめながら言った。
これは去年、ゼロスから護身用としてもらった鞄であり、鞄なのに護身用?と不思議に思ったら、一緒に送られてきたメモ書きを見るとどうやら鞄本来の使い方をしてもいいし、武器としても使用できるらしい。
材質がとても硬い物で作られているようで、これで殴ったら常人ならばひとたまりもないだろうと思えた。
見た目からしたらとてもではないが武器には見えないので、もしかしたら相手を油断させる目的で製作者はこれを作ったのかもしれない。
武器自体はサイグローグから受け取ったが、何かあった時に役立つかもしれないし、何より兄からもらった物を旅立つときに持って行きたかった。
そんな事を思いながらセレスは扉の前へと立つと、サイグローグがわざわざ扉を開けてくれる。
「最後になってしまいましたが、この旅はセレス様以外にも七人おりますので、ぜひとも皆さんと協力して宝石を集めて下さいませ」
「わたくし以外に、あと七人が旅を・・・」
セレスはつぶやき、扉の中をのぞくと、この奥へと進むのは勇気がいりそうなほどだったが、ゼロスの事を想うとそんな不安はどこかへと消えていってしまった。
「(いつまでも素直になれなくてごめんなさい、お兄様・・・今度こそ、セレスの本当の想いを伝えに行きます)」
セレスが扉の奥へと進み終えたのをサイグローグは確認すると、その扉を消し、今度は自分用の扉を出現させる。
「いやはや、今回は楽でしたね。毎回こんな風だと良いのですが」
■作者メッセージ
えー、どうも。今まで風邪を引いていてパソコンどころかエクシリアもろくにやっていないペッパーです・・・。
ほんっとに、更新が遅れてすみません;
まだ咳とノドの痛みだけが治りませんよちくしょう!
でもまぁ何とかシンフォニア編も終え、次はリバース編ですね。
多分サイグローグ君は次が一番苦戦すると思いますw
それでわ、次回に!
ほんっとに、更新が遅れてすみません;
まだ咳とノドの痛みだけが治りませんよちくしょう!
でもまぁ何とかシンフォニア編も終え、次はリバース編ですね。
多分サイグローグ君は次が一番苦戦すると思いますw
それでわ、次回に!