旅人探し 〜ファンタジア編〜
「じゃあ行ってくるよ、ミント」
「デカいの捕まえてきてやるからな。期待してろよ!」
「行ってらっしゃいクレスさん、チェスターさん」
(・・・今日も、行ってらっしゃい)
ここはトーティス村の一角にある孤児院で、ダオス戦役を戦い抜いたクレス、チェスター、ミントがいつも通りの朝を迎えていた。
前回の戦いで破壊されたこの町を復興させつつ、生計を立てながら三人共ここで暮らしているようだ。
この孤児院は主にダオスによって行き場を失った子供たちを預かっており、二人は今日も食料となるボアの肉を狩るために南の森へ出発しているところだった。
食べ盛りの子供が多く、村の食材屋から買っているだけではお金が尽きてしまうので、こうして自給自足の生活を繰り返している。
そして、南の森に到着した二人は、小動物や鳥のさえずる声を聴きながら狩場まで足を進めていた。
「・・・良い天気だね、チェスター。これなら、今日は満足するまで狩ることができそうだ」
(本当に、良い天気ですね)
「ああ、そうだな。最近雨続きでまともにガキ共に食わせてやれなかったから、その分いつもより張り切ってやらねぇとな!」
(頑張ってください、お二人とも!)
しばらく歩いていると一匹目のボアを発見し、クレスとチェスターは最早慣れた手つきで、まずは一匹仕留めていた。
時間が経ち、そろそろ夕暮れ時になろうかという頃には、二人は目標数の最後の一匹を相手にしていた。
「クレス!そっちに行ったぞ!」
「分かってる!・・・虎牙破斬ッ!」
クレスは剣を下から上へと振り上げながら自分も飛び上がり、すかさずトドメの降り下ろしをボアに叩き込んだ。
(すごいです、クレスさん!)
「・・・ふぅ、ようやく全部仕留めることができたね」
「うーん、ちょっと狩りすぎたか?これだけのボアを持って帰るのは一苦労だな・・・」
(うわ、ホントに凄い数だ・・・)
「そうだね。でも、これを持ち運ぶのもいい筋力トレーニングになるさ!」
「はは・・・そうだな・・・」
意気込むクレスを尻目に、疲労が溜まってきていたチェスターは呆れ顔で適当に相槌を打っていた。
(もう、クレスさんったら・・・ん?)
見ると、一息ついた二人の後ろで先ほど仕留めたと思っていたボアがよろよろと起き上がっていたのだ。
そして、残った力を振り絞りながら、クレスに突進を喰らわそうとしていた。
(危ない、後ろっ!)
「え・・・?」
ふと、クレスは振り向き、突進してくるボアに気付くと素早く剣で受け止めた。
「うわっ!?こいつ、まだ生きていたのか!」
「クレス、どけっ!・・・紅蓮!!」
炎をまとったチェスターの矢がボアを撃ち貫くと、しばらく足をバタつかせた後に、今度こそピクリとも動かなくなった。
息が無いのを確認すると、やれやれ、と言いながらクレスは剣を鞘に納めた。
「危なかった・・・もし直撃を受けていたらタダじゃすまなかったよ」
「しかし凄ぇなクレス、よく今のに反応できたな。これも日々の修練の賜物(たまもの)ってやつか?」
チェスターも残りの矢を背中の矢筒にしまいながら、素直に感心していた。
「いや、違うんだ。僕でもよく分からないんだけど・・・声が、聞こえた気がしたんだ」
「・・・声?」
「うん。聞いたことは無い声だったんだけど・・・でも、どこか知っているような、懐かしいような・・・そんな声が」
(・・・・・・・・)
「お、おいおい・・・まさか、幽霊とかって言うんじゃないだろうな・・・?き、きっと気のせいだろ?」
明らかに動揺しているチェスターをよそに、クレスは‘気のせい・・・うん、そうかもね・・・’と力無く返事をしていた。
この件はあまり考えない事にして、二人は捕まえたボアをロープで縛り、道中他の魔物に襲われることもなく孤児院まで辿り着いた。
「あ!兄ちゃんたちお帰り〜!」
「おかえり〜」
「ただいま。ごめんな、待たせちゃって」
「今日は大漁だぞ、チビ共!腹いっぱい食わせてやるからな!」
子供たちは‘わーい!’とそれぞれはしゃぎ、厨房の奥からエプロンをかけたミントがひょっこりと姿を現した。
「あっ、み、ミント・・・///」
「おう、いま帰ったぜ」
「お帰りなさい、二人とも。調理の準備はできてますので、早速お肉を捌(さば)いてもらってもいいですか?」
「いいぜ。行くぞ、クレス」
「ああ、うん」
肉を捌くために二人は孤児院の裏へ回ると、チェスターはニヤニヤとした顔つきでクレスをひじで突々いていた。
「おいクレス。さっきミントの家庭的なエプロン姿に見とれてただろ?」
「なっ!?そ、そんな事ないさ!///」
「いい加減慣れろよなぁ?ったく、そんなんじゃ先が思いやられるぜ」
などと顔を真っ赤にしたクレスをおちょくりながら、チェスターはボアを適当に捌いていた。
何か反論したそうなクレスだったが、何を言ってもからかわれると思い、ぶすっとした顔をしながら無言で肉を捌く作業に入った。
そして、今日の一部始終を見守った少女が、離れた場所で一人寂しく立っていた。
「デカいの捕まえてきてやるからな。期待してろよ!」
「行ってらっしゃいクレスさん、チェスターさん」
(・・・今日も、行ってらっしゃい)
ここはトーティス村の一角にある孤児院で、ダオス戦役を戦い抜いたクレス、チェスター、ミントがいつも通りの朝を迎えていた。
前回の戦いで破壊されたこの町を復興させつつ、生計を立てながら三人共ここで暮らしているようだ。
この孤児院は主にダオスによって行き場を失った子供たちを預かっており、二人は今日も食料となるボアの肉を狩るために南の森へ出発しているところだった。
食べ盛りの子供が多く、村の食材屋から買っているだけではお金が尽きてしまうので、こうして自給自足の生活を繰り返している。
そして、南の森に到着した二人は、小動物や鳥のさえずる声を聴きながら狩場まで足を進めていた。
「・・・良い天気だね、チェスター。これなら、今日は満足するまで狩ることができそうだ」
(本当に、良い天気ですね)
「ああ、そうだな。最近雨続きでまともにガキ共に食わせてやれなかったから、その分いつもより張り切ってやらねぇとな!」
(頑張ってください、お二人とも!)
しばらく歩いていると一匹目のボアを発見し、クレスとチェスターは最早慣れた手つきで、まずは一匹仕留めていた。
時間が経ち、そろそろ夕暮れ時になろうかという頃には、二人は目標数の最後の一匹を相手にしていた。
「クレス!そっちに行ったぞ!」
「分かってる!・・・虎牙破斬ッ!」
クレスは剣を下から上へと振り上げながら自分も飛び上がり、すかさずトドメの降り下ろしをボアに叩き込んだ。
(すごいです、クレスさん!)
「・・・ふぅ、ようやく全部仕留めることができたね」
「うーん、ちょっと狩りすぎたか?これだけのボアを持って帰るのは一苦労だな・・・」
(うわ、ホントに凄い数だ・・・)
「そうだね。でも、これを持ち運ぶのもいい筋力トレーニングになるさ!」
「はは・・・そうだな・・・」
意気込むクレスを尻目に、疲労が溜まってきていたチェスターは呆れ顔で適当に相槌を打っていた。
(もう、クレスさんったら・・・ん?)
見ると、一息ついた二人の後ろで先ほど仕留めたと思っていたボアがよろよろと起き上がっていたのだ。
そして、残った力を振り絞りながら、クレスに突進を喰らわそうとしていた。
(危ない、後ろっ!)
「え・・・?」
ふと、クレスは振り向き、突進してくるボアに気付くと素早く剣で受け止めた。
「うわっ!?こいつ、まだ生きていたのか!」
「クレス、どけっ!・・・紅蓮!!」
炎をまとったチェスターの矢がボアを撃ち貫くと、しばらく足をバタつかせた後に、今度こそピクリとも動かなくなった。
息が無いのを確認すると、やれやれ、と言いながらクレスは剣を鞘に納めた。
「危なかった・・・もし直撃を受けていたらタダじゃすまなかったよ」
「しかし凄ぇなクレス、よく今のに反応できたな。これも日々の修練の賜物(たまもの)ってやつか?」
チェスターも残りの矢を背中の矢筒にしまいながら、素直に感心していた。
「いや、違うんだ。僕でもよく分からないんだけど・・・声が、聞こえた気がしたんだ」
「・・・声?」
「うん。聞いたことは無い声だったんだけど・・・でも、どこか知っているような、懐かしいような・・・そんな声が」
(・・・・・・・・)
「お、おいおい・・・まさか、幽霊とかって言うんじゃないだろうな・・・?き、きっと気のせいだろ?」
明らかに動揺しているチェスターをよそに、クレスは‘気のせい・・・うん、そうかもね・・・’と力無く返事をしていた。
この件はあまり考えない事にして、二人は捕まえたボアをロープで縛り、道中他の魔物に襲われることもなく孤児院まで辿り着いた。
「あ!兄ちゃんたちお帰り〜!」
「おかえり〜」
「ただいま。ごめんな、待たせちゃって」
「今日は大漁だぞ、チビ共!腹いっぱい食わせてやるからな!」
子供たちは‘わーい!’とそれぞれはしゃぎ、厨房の奥からエプロンをかけたミントがひょっこりと姿を現した。
「あっ、み、ミント・・・///」
「おう、いま帰ったぜ」
「お帰りなさい、二人とも。調理の準備はできてますので、早速お肉を捌(さば)いてもらってもいいですか?」
「いいぜ。行くぞ、クレス」
「ああ、うん」
肉を捌くために二人は孤児院の裏へ回ると、チェスターはニヤニヤとした顔つきでクレスをひじで突々いていた。
「おいクレス。さっきミントの家庭的なエプロン姿に見とれてただろ?」
「なっ!?そ、そんな事ないさ!///」
「いい加減慣れろよなぁ?ったく、そんなんじゃ先が思いやられるぜ」
などと顔を真っ赤にしたクレスをおちょくりながら、チェスターはボアを適当に捌いていた。
何か反論したそうなクレスだったが、何を言ってもからかわれると思い、ぶすっとした顔をしながら無言で肉を捌く作業に入った。
そして、今日の一部始終を見守った少女が、離れた場所で一人寂しく立っていた。
■作者メッセージ
あれ?5000字超えてしまった?
ま、まさかこんなに長くなるとは・・・。
まぁ、というわけで少女の正体はPART2へと続きます。
ま、まさかこんなに長くなるとは・・・。
まぁ、というわけで少女の正体はPART2へと続きます。