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キングダムハーツV《仮》

アオキ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 プロローグ
  • 02 第一章《胎動》 その1
  • 03 第一章《胎動》 その2
  • 04 第一章《胎動》 その3
  • 第一章《胎動》 その1

    揺れる世界。
    割れる窓ガラスの音。
    軋む建物。
    悲鳴。

    混乱の中、一人の若い女は上を見上げ口をあんぐりとあけた。
    彼女の名は青木優焚。何の変哲もない、どこにでもいそうな大学生。
    大学へと向かう途中だった彼女を襲ったのは、震度6強の大地震。
    身近にあるものをつかみ飛ばされないようにしながら、優焚は昨日みた夢を思い出していた。

    若い少女の声で一言、
    「"黒い雲"には気を付けて。世界を壊しにやってくる」
    と。

    その夢の通り、頭上に広がる広大な空には黒く稲光を放ち、もくもくと手を伸ばす巨大な雲があった。
    周りの人も徐々に気が付いてきている。
    と、突然、地震はぴたりと止まった。

    急に静かになる世界。
    皆がおびえ、涙を流し、一斉にケータイを取り出した。
    大切な人の安否を確認するために。

    優焚も例外なく、母へと連絡を取ろうとケータイを取り出す。
    が、次の瞬間、目の前にあらわれたのは..黒い影。
    悲鳴を上げるとなりのおばさん。その声を合図に何体もの黒い影が姿をあらわした。

    徐々に形を成すそれに、優焚は身震いをして駆け出す。

    そんな、ばかな..!?あれは..っ

    ほどよく離れたところで角を曲がり、そこに身をひそめるようにして黒い影の方を向く。
    丸い顔に触覚のようなものが2本飛び出ている。目は金色に怪しく光り、たえず身体を動かしている黒い影。

    あれは..まるで...!

    優焚はあれが何かを知っていた。優焚だけではない、ゲーム好きな人であるならば知っている者は少なくないはずだ。

    「な、何..??なんで..?なんで"ハートレス"がここにいるのよ...っ!?」

    優焚は恐怖におびえながらも高揚する。
    ありえない光景が目の前に広がり、ゲームの中の話であるはずの存在が実際に動き、跳躍し、人を闇へと引きずり込んでいた。

    「ひっ、人を襲ってる..っ。助けなきゃ!..それとも逃げなきゃ?」

    じりじりと黒い影、"シャドウ"は距離を縮める。
    優焚は身近にあった鉄の棒を拾うと、めちゃくちゃに振り回す。
    ヤツらにはこんな攻撃は効かない。

    鼓動が高まる。
    息が乱れる。

    壁際まで追い詰められて、優焚は逃げておくんだった、と後悔した。
    無駄な正義感ほど役に立たないものはない。
    実際、ほんとうに、彼女は普通の人間だったのだ。
    何の力もなく、なす事も出来ぬままに覚悟を決めて、目をつぶった。

    13/06/02 02:29 アオキ   

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