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ぜにそせ。 ― 全世界二次元化阻止戦争 ―

キラワケ

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  • あらすじ
  • 01 1-1
  • 1-1

    なんでもかんでも二次元化!
    立体から平面へ。現実から仮想へ。
    辛い日常を逃げ出した先は、夢と希望の二次元世界!

    あんな娘やあんな人とお近づきになっちゃったり。
    地道にサラリーマンやってたけど、今は勇者で敵を倒してガッポリだったり。
    妻にそっぽを向かれて険悪すぎる家庭から逃避して、二次元世界で家庭築いちゃったり。

    良い事ずくめの二次元世界!
    もう三次元は古臭い、これからは画面の中で全て完結するんです!

    さぁ、あなたも二次元の世界へ向かいましょう!
    きっと新しい自分と新しい世界が手に入りますよ?

    ……は?

    よくもそんな中学生の妄想みたいなことを垂れ流し出来たもんだな。
    それにホイホイ付いて行くあんたらもどうよ?

    ああ、くだらない。
    ほんと、ばからしい。


    * *


    「お前のことが好きなんだぁぁぁぁ」

    「ご、ごめんなさいっ!」

     ―BAD END―

     ちっ、また攻略失敗か。
     フラグを立てず特攻したのが敗因ってトコだな。

    「あー、ヒロイン落とすの面倒くせぇ。 だからギャルゲーは嫌いなんだよ」

     まぁ、俺そのものが異性と付き合うことを志望してないしな。
     ……夢も希望もなくてつまらない? けっ、ほっとけ。 それもこれも――


    「それでいてなんでギャルゲーなんて買ってるの?」


     こいつのおかげだ。
     というかギャルゲーなんてギャル目当てで買っている訳じゃない。
     
    「シナリオとCGに興味があるからな」

     ギャルゲーなるものはかなり安直な展開シナリオが多い。
     シナリオの出来が悪くなるのと比例するようにCGの完成度は高かったりする。 もちろん、全ての作品に言えることではないが。 
     シナリオとCGの完成度共々良いものもあれば、シナリオ破綻にCG崩壊という残念極まりない作品もある。
     
     ギャルゲーという一ジャンルの中で良作を探し出す――というのが今の俺の楽しみであり、趣味だ。
     ラノベといっても、中にはラノベという括りを超えた素晴らしい作品も存在する。
     一般小説も探せば探すほどに良作に巡り合える。

     しかし、俺はあえてギャルゲーという縛りの中で良作を探すのだ。

     かといえば、駄作だからといってそれを忘却の彼方へと葬りさる訳ではない。
     駄作だとしても、少なからずは誇れる点があるものだ。 それを探すのも面白い。
     救いようのないカス作品も観方を色々変えて、違う楽しみ方をするというのも面白い。

     ということで、一応俺はギャルゲーマニアだ。

    「金の無駄遣いだと思う……」

    「ふん、俺的には有意義な使い方が出来ていると自負している」

     楽しみ方は個々で見つけだすものだ。自分の金で何を買って、どう楽しむかなんて自由だろう? 抑制など受ける理由は無い。

    「というか……女の子が遊びにきているそんな時までギャルゲーというのはどうなんだろな?」
     
     女の子……はてさて?

    「……誰だそれは?」
     
     うしろで何かが切れる音がした。 しかし気にしてしまうのは果てしなく時間の無駄だと俺は考え、思考中止。

    「……喧嘩を売ってるのが分からないのか?」

    「いや、だって女の子なんて生涯一回も連れ込んだ事ないぞ?」

    「いやいや! なんで純粋に疑問に思ってんだよ!」

    「……今、この部屋にいるのは俺とお前だけだからなぁ」

    「あんたの中でアタシはどういう扱いになってんだよ!」

     ……?

    「そりゃ、退屈しない話相手および小学校時代からの友人と言っぐはっ――」

     横から来る肘が俺の顔を捉え、見事にスッ飛んだ。

    「……なにすんだよ」

    「お前は本当にデリカシーの欠片もねぇな! アタシは立派な女子だバカっ!」

     らしい。 まぁ、名義上は女子だけどな。 ……不確かのには理由があって――


    「……その体で女と言い張るには、乏しい胸だな」


    「っ! 仕方ねぇだろ! ここだけは成長が遅いんだよ!」

    「……」

    「どうした? アタシの体をまじまじと見て」

    「いや……ブラジャーという拘束具は拘束するものがないから不要だなぁ、と考えてた。 というか付けてんのか?」

    「っっっ! 完全なセクハラだぞお前! 失礼飛び越えて変態だ! というか付け取るわっ!」

    「……絆創膏で十分だろ」

    「それこそ変態だ!?」

    「うるさい、その胸とは言い難いまな板の上でキャベツでも千切りにしてろ」

    「!? 流石にアタシも怒るぞ!」

    「どーぞどーぞ」

    「! ……失せたわ。 というかなんでこんな性悪で最悪な奴に家に遊びに来てんだろうな」

    「まぁ、それは伝統みたいなもんだろ」

     ということで彼女(文面では一応彼女と呼んでおこう)とは長い付き合いだ。
     俺だけがこんなにボロクソに言い捨ててると言えばそうでもない。 彼女は彼女で――

    「胸の事をこんな平凡を具現化したようなお前に言われたくないわ!」

     そんなことを言ってくる、まぁそれに関しては俺も重々承知してるが。

    「まぁ、平たい同士気長にやろうじゃねぇか」

    「……性格容姿が平凡な男と胸がす、少ないアタシじゃどっちがいいと思う?」

    「体を洗うのが楽でいいだろ?」

    「●ね! いい加減に●ねっ!」

     と言う訳で、彼女を一女性として観た事は一度もない。
     胸が存在しているというのも憚れるほどに無く、とにかく色気がない。
     女子高生で、この胸は正直今後に期待出来ない。

     友人として過ごしてるだけで、異性と捉えたことはない。
     というか、彼女が一応異性であるせいか異性に興味を失くしたのも事実。

     ギャルゲをやっても「かわええ〜」とか「萌え〜」とかは感じない。 「綺麗」と感じることはある。
     
     何度も言うが彼女は友人だ。
     話していて退屈しない友人。 
     今日の俺の冗談と本音が混じった事も仲が良く、ジョークが通じるから口にする。
     
     あんな反応をすれど、分かっていると思う。
     
    「●ねはしないな、ミサキと話すことはいくらでもあるからな」

    「……へ、へぇ? 話すって、どんな?」

    「貧乳と巨乳、果たしてどちらの需要が高いのか」

    「当てつけか!」

     異性として見ずに、ミサキと見れば良い友人だ。
     異性としてはみていないが、大切な友人ではある。 勘違いはしないでほしい。

    「まぁ、そんなお前好きだけどな」

    「え?」

     もちろん、友人としての――

    「ライクとしてな」

    「期待持たせんな!」

     ……鈍感でなく鋭敏な俺は、どうやらこいつに好意を抱かれているようだ。 
     しかし異性への興味などない、クルものが無いのだ。 

    「ふん、なら俺をトキメかせて見ればいい」 

     ないだろうけどな。

    「……トキメかしたら、アタシを女だと認めるのか?」

    「さぁな」

     無理だろ。 ギャルゲで、何の反応もしない俺が。

    「……わかったよ」

     何が分かったのだろう?
     
     ――ちなみに俺が今までどんな事を言っていたのか、書き出して分かったことがある。
     
     酷い。

     今日は特に酷い。
     なんだろうね、俺の趣味が否定されたからか?
     もう、これは嫌われてもしょうがない。
     自分が愚かすぎて言葉も出ない。

     もしかしたら、彼女が友人でなく異性になるのが怖かったからなのかもしれない。
     関係が変わってしまうのが嫌だったからとか?

     気軽に話せる相手を失いたくなかったから?

     これで、関係が終わるのなら……仕方ないのかもな。
     今の俺には後悔するしかなさそうだ。 


     そして案の定、俺と彼女の関係は終わった。
     しかし、それは異性として意識しなくて済む友人の関係のことで――


    「……ど、どう?」


     画面に映る、確かに彼女な彼女は――見違えていた。


    「……困るな」

     
     ときめいた。 初めて胸が熱くなった。
     というか一瞬で惚れた。

     ……と、彼女への緻密な感想を述べる前にあらかたの日常をお話したい。
     今日のように罵詈雑言を連ねている日は少ない訳で、俺を誤解しないでほしい。
     まぁ、弁解の意を籠めて、話していこう――

    11/07/21 03:11 キラワケ   

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