CHAPTER43【ダークの特訓】
フィオと紫音の二人はディズニーキャッスルのグーフィーの部屋にお見舞いに来ていた。グーフィーは以前、ヘルツに氷付けにされたが、あのあとなんとか氷は溶けた物の、まだ意識が戻っていないらしい。
「グーフィーさん、寝てますね。」
先程までほとんど同じ状態だった紫音が言う。フィオがその事に思わず突っ込みそうになったが、その時部屋にダークが入ってきた事で遮られた。
「よ!フィオに紫音じゃんか。なにやってんだ?」
ダークが相変わらずのテンションで二人に話し掛ける。フィオが答えようとしたが、紫音がそれより先に説明する。
「私達、グーフィーさんのお見舞いに来たんです。フィオさんの提案で。」
「ほう。」
紫音の説明を聞いて、何故か腕くみをして黙りこむダーク。その様子を不思議に思ったのか、フィオがダークを見上げて聞いてみた。
「どうしたの?」
フィオが聞くと、ダークは腕くみを止め、眠っているグーフィーを見て言った。
「いや、ちょっと特訓の相手を探しててな。グーフィーの容態が安定したら、特訓に誘おうと思ったんだがよ」
「なら僕達が付き合うよ!」
ダークの特訓に自ら付き合うと申し出たフィオ。フィオは『良いよね?』と言わんばかりの表情で紫音を見上げ、紫音は『もちろん』とでも言うように頷く。
「ありがとな、二人とも。」
そう言うとダークは光の裂け目を出現させ、三人はそこに入って行った。
たどり着いた場所はディープジャングル。かつてソラ達が冒険した世界の1つである。フィオ達はこの世界の中でも特に深いジャングルに降り立った。
「うわぁ……」
フィオはこの何処までも広がるジャングルを見渡す。辺りを見る限り、とても長くて丈夫そうなツタが幾つもあり、更にはいつ崩れても可笑しくないほどボロボロの橋も見える。それどころかこのジャングルの中ではいつジャングルの猛獣達に襲われても可笑しくない。
「フィオさん……!」
紫音が少し震えている。ジャングルの事は前にフィオから聞いてはいたが、いざ本物のジャングルに来てみると、やはり恐怖感という物が生まれるのだろう。紫音はフィオの腕を掴む。その手の振動から紫音の恐怖感がよく伝わって来る。フィオは仕方無く、暫くそのままの状態で良い事にした。
「さて、特訓を始めるぞ。」
ダークが自らの武器である太刀【バニシングルーラー】をすでに掛けている。そろそろ始まるようだ。
「それで、どうするの?」
「あれを見ろ。」
ダークが指差す方には崖があった。その崖はいつ崩れても可笑しくないほどボロボロだった。
「あれをお前の狙撃で崩して、俺にぶつけるんだ。」
この発言には流石のフィオも驚く。ダークはなんと崖崩れを相手に特訓しようとしているのだ。だが、このダークの発言を言い換えると、『俺を殺せ』と言っているのと同じだ。だが、ダークの真剣な表情を見る限り、少なくとも冗談では無いようだ。
「……………。」
流石のフィオでもこれには流石に躊躇せざるを得なかった。何故ならこの特訓内容は一歩間違えばダークの命を奪ってしまうからだ。彼よりも付き合いの長い親友を殺す事なんて出来ない。だが、ダークの目はフィオに『やってくれ!』と訴えている。
「………わかった。やろう!」