「それっ！」

フィオ君は現実世界同様の戦闘スタイルで遠距離からの射撃でナイトメア達を攻撃している。その命中制度は百発百中。まさに無双であった。

「でうりゃっ！！」

続いてダーク君がガンブレードを上手く使ってナイトメアを切り裂き、重い一撃を喰らわした。ダーク君は手数の多さよりも一撃の重さで勝負するタイプなので、スピードがそこまで早くないのが難点だが、攻撃防御共に長けている。

「ふっ！」

遅い来るナイトメアを迎え撃つアディア。その能力はレイ君に極めて近く、ナイトメア達を限界まで引き付けてから一気に凄まじい一撃を放つ。その上相手が放ってきたファイアを魔法を跳ね返す技『マジックミラー』で跳ね返し、逆に倒した。まさにレイ君と同様の戦い方だ。

「はぁぁ！！」

そして私はと言うと、足の早さを利用して一瞬で敵の懐に潜り込み、そのまま連続で攻撃をした。キーブレードが見えなくなるほど素早い攻撃によってナイトメアは倒され、他の敵が襲って来るが、その場で高くジャンプし、木の上に跳び移った。

「氷れ！」

そしてそのままこの高い位置から氷の魔法『ブリザガ』を放ち、ナイトメア達をまとめて氷の餌食にした。

そして

「はっ！」

ディアはそのパワーとスピードを生かしてナイトメア達に切り込んで行っている。だが明らかに苦戦している。やはり闇を捨てると言う事は元々闇の存在であるディアにとっては不利な事だったのだろうか。現にさっきから私達と違って特別な魔法や技は使えていない。

闇の存在が闇を捨てたら、何が残るのだろう。何も残らないと言えばそれが正論だろうが、ディアが可哀想なので本人には間違っても言えない。残るとすれば光になりたいと言う"信念"だけだろうか。とにもかくにも闇の力を使わないディアはただの"キーブレードを持っただけの剣士"も同然の状態だった。

今までディアが用いてきた魔法や技は全て闇の力。闇を使わない今はいわば何も技が無いのと同じだ。心なしかディアの表情に焦りが見える。

「はぁ…はぁ…くそっ！」

ディアの背後からナイトメアが一体襲い掛かって来るのが見え、彼を助けようと全速力で走ったが、それを別のナイトメアに阻まれた。ディアは疲れていて背後のナイトメアに気づいていない。ナイトメアがディアを攻撃しようとしたその時、赤紫色の弾丸がナイトメアを射抜いた。そう、フィオ君が間一髪ディアを救ったのだ。

「大丈夫！？ディア！」
「あぁ、すまない……」

フィオがディアに駆け寄り、心配の言葉をかけるが、ディアは目を合わせずに謝った。それに表情が何処か虚ろだ。

その後、何とかしてナイトメア達を倒し、森を抜けた。するとそこには別の部屋が広がっていた。見る限りティーパーティ会場のように見える。

「なんだ……この部屋？」

ダーク君が気味悪そうに言った。先程ナイトメアに襲われたからだろうか、ここも怪しく見えてしまう。それにダーク君は確かこう言う場所には来たことが無いので流石にどうして良いのかわからないのだろう。

個人的にティーパーティはお茶会と同じだと思うのだが。

「何があるかわからないから、気を付けて」

一応みんなに忠告をし、再び歩き出した。ある二人を除いて。

「なぁダーク」
「？」

ダークとディアだ。ディアは先程の戦いの中で何処か虚ろな表情をしていた。ダークを呼び止めたのも何か関係あるのだろうか。

「俺……足手まといになってるんじゃ無いのか……？」
「何？」

ディアの右の握り拳が震えている。それに何処か声も。

「光になるとか言っといて……結局みんなの足を引っ張ってちゃ……何も変わってない。寧ろ空しくなるだけだ。俺は……弱いな」

泣いているのだ。あのディアが、滅多に感情を表に出す事が無いディアが仲間の為に涙を流しているのだ。自分が無力であった事を認め、悲しみをしっかりと出せている。前から比べれば立派な成長とも取れるが、同時にまだ弱いとも取れる。

「そう"かも"な……」
「え？」

ディアの言い分を聞いたダーク君が何か思い耽ったかのような表情で言った。そしてディアの顔を見て、彼に対してこう言った。

「良いか？もし自分が足手まといとか、弱いとか認めてんなら、それが真実だ。でもな、それは自分と言う人間の限界を決めちまってるって事なんだ。"自分は弱い"とか、そうやって決めつけたらお前は本当に弱いやつだぜ？」
「………」
「お前の努力は知ってる。光になってレイを見つけて、みんなの役に立つ為に強くなりたくて、ダークエンド事件の後すぐに修行を始めたんだろ？なら、その時お前は自分を"まだ強くなれる"と信じてた訳だ。なぁに、闇を失って足手まといなのは今に始まった事じゃない。これからゆっくり"足手まとい"から"エース"になってけば良いさ！」
「ダーク…………」

ダーク君の優しい説得でディアは涙を止め、一度深呼吸をして頷いた。そして改めてダークの方を向いて笑顔で言った。

「ありがとう……」

ダーク君はゆっくりと頷き、再び歩き出した。その後をすっかり笑顔になったディアが追いかける。これでディアも本当の意味での仲間になれただろうか。