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キングダムハーツ【Five・Blade】

レイラ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 HEARTS1【始まりの朝】
  • 02 HEARTS2【鍵の軌跡】
  • 03 HEARTS3【二つの純心】
  • 04 HEARTS4【花火と影】
  • 05 HEARTS5【心無き者の進化】
  • 06 HEARTS6【王様】
  • 07 HEARTS7【アンチネス】
  • 08 HEARTS8【大魔導士の搭】
  • 09 HEARTS9【幻想五光輝】
  • 10 HEARTS10【旅立ち】
  • 11 HEARTS11【純心の少女】
  • 12 HEARTS12【馳せる想い】
  • 13 HEARTS13【不思議の国の風少年】
  • 14 HEARTS14【ポップ】
  • 15 HEARTS15【疾風一閃】
  • 16 HEARTS16【女王の心】
  • 17 HEARTS17【眠れぬ日の夢】
  • 18 HEARTS18【戦う意味】
  • 19 HEARTS19【TRAINING】
  • 20 HEARTS20【潜在解放】
  • 21 HEARTS21【ヒーロー】
  • 22 HEARTS22【野獣城】
  • 23 HEARTS23【邪悪粉砕】
  • 24 HEARTS24【暗闇室】
  • 25 HEARTS25【大切なモノ】
  • 26 HEARTS26【光と闇の激突】
  • 27 HEARTS27【異界戦争】
  • 28 HEARTS28【闇の使者】
  • 29 HEARTS29【四人集合】
  • 30 HEARTS30【決意の閃光】
  • 31 HEARTS31【新世界へ】
  • 32 HEARTS32【ただ会いたかったから】
  • 33 HEARTS33【君との思い出】
  • 34 HEARTS34【リポップ】
  • 35 HEARTS35【二人の夜】
  • 36 HEARTS36【一日船長】
  • 37 HEARTS37【航海】
  • 38 HEARTS38【絆の連携】
  • 39 HEARTS39【ベルーガ】
  • 40 HEARTS40【戦え連合軍】
  • 41 HEARTS41【レイディアントスター】
  • 42 HEARTS42【一致団結】
  • 43 HEARTS43【策略】
  • 44 HEARTS44【残酷な感情】
  • 45 HEARTS45【アースへ】
  • 46 HEARTS46【仲間達との再会】
  • 47 HEARTS47【我が家の温もり】
  • 48 HEARTS48【機関の思惑】
  • 49 HEARTS49【決戦】
  • 50 HEARTS50【χ】
  • 51 HEARTS51【繋がる心】
  • 52 HEARTS52【運命は変わる】
  • 53 CHAPTER1【暗黒竜ダークエンドドラゴン】
  • 54 CHAPTER2【目覚めるレイ】
  • 55 CHAPTER3【こっちに来た理由】
  • 56 CHAPTER4【謎の少年】
  • 57 CHAPTER5【その名はリアス】
  • 58 CHAPTER6【消えた希望】
  • 59 CHAPTER7【閉ざされた心】
  • 60 CHAPTER8【動き出す機関】
  • 61 CHAPTER9【襲撃のアレクセイ】
  • 62 CHAPTER10【全力の意味】
  • 63 CHAPTER11【動き出すDED】
  • 64 CHAPTER12【シュージとライガ】
  • 65 CHAPTER13【白凰と黒凰】
  • 66 CHAPTER14【ヒトミとヒナタ】
  • 67 CHAPTER15【謎の少女】
  • 68 CHAPTER16【命名】
  • 69 CHAPTER17【過去の記憶】
  • 70 CHAPTER18【解禁のカオスアイ】
  • 71 CHAPTER19【集う仲間達】
  • 72 CHAPTER20【宣戦布告】
  • 73 CHAPTER21【ミッキーに迫る危機】
  • 74 CHAPTER22【砕かれた希望】
  • 75 CHAPTER23【力無き礎】
  • 76 CHAPTER24【遅い来る敵】
  • 77 CHAPTER25【強敵】
  • 78 CHAPTER26【植え付けられた闇】
  • 79 CHAPTER27【思い出せない約束】
  • 80 CHAPTER28【方針】
  • 81 CHAPTER29【求むる力】
  • 82 CHAPTER30【闇の力を】
  • 83 CHAPTER31【君を想う】
  • 84 CHAPTER32【闇のレイ】
  • 85 CHAPTER33【光無き者】
  • 86 CHAPTER34【親友との再会】
  • 87 CHAPTER35【アンセムの真実】
  • 88 CHAPTER36【ザルディン死す】
  • 89 CHAPTER37【謎の研究者キルアント】
  • 90 CHAPTER38【伝説の真実 前編】
  • 91 CHAPTER39【伝説の真実 中編】
  • 92 CHAPTER40【伝説の真実 後編】
  • 93 CHAPTER41【暗黒の鍵の呪い】
  • 94 CHAPTER42【フィオの姉】
  • 95 CHAPTER43【ダークの特訓】
  • 96 CHAPTER44【成し遂げたい事】
  • 97 CHAPTER45【心に抱える不安】
  • 98 CHAPTER46【ベクセスとヘルツ】
  • 99 CHAPTER47【クロナの思想】
  • 100 CHAPTER48【決心】
  • 101 CHAPTER49【波瀾】
  • 102 CHAPTER50【理解出来ない事】
  • 103 CHAPTER51【夢の民】
  • 104 CHAPTER52【特訓!ヒトミと闇】
  • 105 CHAPTER53【選ばれし者】
  • 106 CHAPTER54【暗黒島ダークエンド】
  • 107 CHAPTER55【予感】
  • 108 CHAPTER56【ユナイテッドサテライトへ】
  • 109 CHAPTER57【町の危機】
  • 110 CHAPTER58【大量のアンチネス】
  • 111 CHAPTER59【レイの秘密】
  • 112 CHAPTER60【6皇帝】
  • 113 CHAPTER61【謎の疲労】
  • 114 CHAPTER62【迫り来る者】
  • 115 CHAPTER63【二人のキーブレード】
  • 116 CHAPTER64【永遠の偽り 紫音の正体】
  • 117 CHAPTER65【悲哀】
  • 118 CHAPTER66【夕日の決闘!! レイvsダーク】
  • 119 CHAPTER67【Sadness story 相棒の涙】
  • 120 CHAPTER68【現れた闇の空中庭園】
  • 121 CHAPTER69【立ち上がれレイ!!奇跡のキーブレード】
  • 122 CHAPTER70【約束】
  • 123 CHAPTER71【空に浮かぶ暗黒の島】
  • 124 CHAPTER72【紅蓮の鎌】
  • 125 CHAPTER73【凍てつく女王】
  • 126 CHAPTER74【非情の暗殺者】
  • 127 CHAPTER75【ヴィヴァードの正体】
  • 128 CHAPTER76【ダークエンドコロシアム】
  • 129 CHAPTER77【暗黒竜降臨】
  • 130 CHAPTER78【光と闇の調律】
  • 131 CHAPTER79【混沌の竜】
  • 132 CHAPTER80【Wish Story キミの願い】
  • 133 DREAM1【私の始まり】
  • 134 DREAM2【それは】
  • 135 DREAM3【戦う力を得た日】
  • 136 DREAM4【無知な私】
  • 137 DREAM5【それもまた1つの姿】
  • 138 DREAM6【七つの星】
  • 139 DREAM7【それが何を意味するのか】
  • 140 DREAM8【夢と現実の繋がり】
  • 141 DREAM9【夢を知るもの】
  • 142 DREAM10【エージェントの苦悩】
  • 143 DREAM11【その日生まれた絶望】
  • 144 DREAM12【夢と現実の違い】
  • 145 DREAM13【夢の民の姿】
  • 146 DREAM14【それは一対の物】
  • 147 DREAM15【現実世界の助っ人】
  • 148 DREAM16【新しい道】
  • 149 DREAM17【キオクヲタドル】
  • 150 DREAM18【光差す道へ】
  • 151 DREAM19【仲間の力】
  • 152 DREAM20【同じだが違う場所】
  • 153 DREAM21【言葉の意味】
  • 154 DREAM22【邪念シャットアウト】
  • 155 DREAM23【D-リンク】
  • 156 DREAM24【再戦】
  • 157 DREAM25【一触即発】
  • 158 DREAM26【犠牲】
  • 159 DREAM27【もう1つの場所】
  • 160 DREAM28【初勝利】
  • 161 DREAM29【不安】
  • 162 DREAM30【佳境】
  • 163 DREAM31【君と同じ体験】
  • 164 DREAM32【次へ】
  • 165 DREAM33【彼女との再会】
  • 166 DREAM34【疑い】
  • 167 DREAM35【本心は…】
  • 168 DREAM36【ライブラ・Y】
  • 169 DREAM37【離れてても…】
  • 170 DREAM38【その心の中】
  • 171 DREAM39【宿命】
  • 172 DREAM40【親友の為に】
  • 173 DREAM41【次の世界は】
  • 174 DREAM42【漆黒の弓】
  • 175 DREAM43【後四人】
  • 176 DREAM44【あの場所へ】
  • 177 DREAM45【ブリューナク】
  • 178 DREAM46【聖獣】
  • 179 DREAM47【仮面の少女】
  • 180 DREAM48【ベネトナシュとの対面】
  • 181 DREAM49【苦渋】
  • 182 DREAM50【フィオ覚醒】
  • 183 DREAM51【約束・プロミス・プロメッサ】
  • 184 DREAM52【彼女と自分の差】
  • 185 DREAM53【本当の気持ち】
  • 186 DREAM54【リーダークロナ】
  • 187 DREAM55【氷花の巫女】
  • 188 DREAM56【情報屋】
  • 189 DREAM57【その気持ち】
  • 190 DREAM58【やつらの狙い】
  • 191 DREAM59【闇の世界】
  • 192 DREAM60【恋路】
  • 193 DREAM61【奇襲】
  • 194 DREAM62【ブラックソード】
  • 195 DREAM63【狭間の答え】
  • 196 DREAM64【夜の城下町】
  • 197 DREAM65【ディズニーキャッスル戦争】
  • 198 DREAM66【魔術師の聖獣】
  • 199 DREAM67【刑死者の聖獣】
  • 200 DREAM68【謎の青い影】
  • 201 DREAM69【ν】
  • 202 DREAM70【5年前の悲劇】
  • 203 DREAM71【変化】
  • 204 DREAM72【新たな仲間 クロ】
  • 205 DREAM73【すでに貰われてる】
  • 206 DREAM74【VSアリオス】
  • 207 DREAM75【真の目的】
  • 208 DREAM76【ヴァーヴァリアンコロッセオ】
  • 209 DREAM77【優しい記憶】
  • 210 DREAM78【怒りの氷】
  • 211 DREAM79【私が、君を守るから】
  • 212 DREAM80【ファラフェニックス】
  • 213 DREAM81【全て思い出した】
  • 214 DREAM82【本当の名前は……】
  • 215 DREAM83【俺達は未来永劫、一緒だろ!】
  • 216 DREAM84【クロッシングドリーム】
  • 217 DREAM85【繋がる心が、私の力だ!!】
  • 218 DREAM86【仲間と共に】
  • 219 DREAM87【破壊神】
  • 220 DREAM88【究極の絶望VS究極の希望】
  • 221 DREAM89【さよなら】
  • 222 DREAM90【そしてありがとう】
  • 223 SONG1【Real Emotion】
  • 224 SONG2【時の使者】
  • 225 SONG3【キーブレード】
  • 226 SONG4【来訪者】
  • 227 SONG5【聖獣エルシオン】
  • 228 SONG6【ウェンヴィス】
  • 229 SONG7【ディアと鈴神】
  • 230 SONG8【ハイイレギュラー】
  • 231 SONG9【失わない気持ち】
  • 232 SONG10【親友(とも)よ】
  • 233 SONG11【宣告】
  • 234 SONG12【明日への鼓動】
  • 235 SONG13【帰還】
  • 236 SONG14【始まりを告げて】
  • 237 SONG15【今の力量】
  • 238 SONG16【戦闘流儀(コマンドスタイル)】
  • 239 SONG17【意外な協力者】
  • 240 SONG18【絆、繋がりの心】
  • 241 SONG19【久しぶりの運命島】
  • 242 SONG20【僕の名はホワイトだ】
  • 243 SONG21【Husk】
  • CHAPTER74【非情の暗殺者】


    ダーク、白凰、黒凰に続きソラと紫音まで6皇帝に戦いを挑み、メンバーから離脱してしまった。これまで辿ってきた道を振り替えって見てみても、そこにあるのは心配と空しさだけ。俺達にはもはや振り向く事も、引き下がる事も許されなかった。ディアがボーッとしている俺を呼び掛け、俺は軽く頷き一同に追い付こうと走る。そう、彼らは前を向いて進む事しか許されていないのだ。

    やがて俺達はこの摩天楼の中でも一際大きいビルの正面入り口にやって来た。不自然な事に扉は開いており、すぐに誘っているとわかった。これは罠だ。だが今ここで進まなければこの浮遊島がいつ暴れ出すかわからない。罠だとわかっていても、俺達は迷わず進む。

    ビルの中に入ってもロビーに人は居らず、ましてやサービスカウンターらしき所にもいなかった。そう、ここは無人のビルである。その為空気がどんよりとしており、唯一の明かりさえも無い、暗闇の廃墟と言った所だろう。

    だが、何故かはわからないが、同時に何か違和感のようなものも感じた。まるでこの無人のビルで、何かが蠢いたような、そんな気がした。アンチネスならば戦わなくてはならないのだが、当のアンチネスも全く姿を現さず、それ以外の何かかもしれないという考えが密かに浮かんだ。

    奥に進んでいくと、他よりも一回り大きい扉を見つけ、開いてみるとそこはなんと真っ黒のプールだった。いや、そもそも水自体に色は無いのだが、この部屋その物が全て真っ黒な為プールの水さえも真っ黒に見えてしまう。現に底が見えているので、水は普通の水である事が確認出来る。

    レイ達がその部屋に足を踏み入れた時、向こう側から突然何者かが凄いスピードで泳いできて、大きな水飛沫と共にこちらに飛んできた。泳いでいた人物の正体はベクセスだった。何時もと違い、赤と黒の不気味なギョロ目マーク入りの水着を着用していた。

    「ようこそ、私のステージへ。」
    「ベクセス!」

    ベクセスはその雪のように冷たい目で俺達を見る。その中でも特にフィオの事を見つめていた。フィオを見たベクセスは俺達にもはっきりと見えるくらいに微笑み、自分の前髪を少し弄る。

    「みなさんよく来たわね。特に……『フィオ』は。」

    ベクセスは何故かフィオという文字を強調して言った。当然フィオはそれが気になり、俺を通り越してベクセスの前に立った。

    「特に僕って……どういう事だ?」
    「貴方にお礼をしてなかったからね、紫音を……ミカをここまで連れてきてくれた事を。」

    フィオはベクセスの発言にはっとした。なんとベクセスは紫音の元の姿であるミカの名前を知っていたのだ。

    「どうしてその名前を!?」
    「どうして?フフッ、良いわよ、教えてあげる。」

    そう言ってベクセスはアンチネスを2体ほど呼び出した。恐らく自分が話している間に自分を倒させないようにしているのだろう。

    「紫音は元々、機関の城から奪われたデータを元に作られた改造人間。記憶も本物と同じように作られるはずだった、でも何故消えたのか?それは簡単な事よ。私が彼女を襲撃したからよ。」
    「「「何だと!?」」」

    衝撃的な発言に驚きを隠せない一同。なんと紫音の記憶喪失にはベクセスが関わっていたのだ。今の言葉だけで信じろと言われたら難しいが、逆に誰の妨害も無しに記憶を失ったとは考えづらい。ベクセスの言葉は正直信じられる物ではないが、フィオには聞く権利がある。自分の大切な人に関わる話を聞くことを。

    「あのとき、化学者はミカをカプセルに入れた状態で異空間に飛ばした。最初はトワイライトタウンに流れ着く予定だった。だけど、そこに私が待ち構えていたの。機関の命令でね。私はアンチネスを使ってミカの入っているカプセルを攻撃し、ミカの身体に大きな負荷が掛かってしまった。カプセルも攻撃を受けて墜落。そしてアースについた頃には負荷が大きすぎたショックで記憶を失ったって訳。」
    「じゃあ…………、」

    ベクセスの話を聞いたフィオは悔しそうに涙を流しつつ、右手に握り拳を作った。

    「じゃあ………紫音の記憶を消したのはお前だって事なのか!?いやそれだけじゃない!!カイリちゃんの闇落ちもそうだし、デスティニーアイランドの襲撃や、ナミネちゃんを傷つけたのもお前だって言うのか!?」
    「そうだとしたら?」
    「ベクセス!!僕と戦え!!決着をつけよう!!」
    「良いわ、貴方の無力をわからせてあげる。」

    そう言うとベクセスは何故か奥の扉をアンチネスに開かせ、プールに飛び込んだ。

    「貴方の勇気に免じてレイ達は行かせてあげる。貴方一人をいたぶるのも面白そうだし。」
    「いいや一人じゃない!!」

    突如叫び飛び出して来たのはライガだった。ライガの表情は今までになく真剣な物だった。

    「何よ?キーブレードも持たないメンバー1の弱小の癖に?」
    「確かに俺は弱いかもしれないけど、俺は俺の希望(こうはい)を守りたいんだ!!」
    「ライガ………。」

    ライガにとって俺を初めとした後輩達は希望のような物だった。そもそもライガには同級生の友達が非常に少なく、いつもいつも年下や年上と関わるだけで敬語ばかりの生活に嫌気が差してきたころ、ある日ライガは後輩達にタメ口を使わせてみようと思い、試してみるとみんな自分を先輩としてではなく、一人の友達『霧風ライガ』として見てくれたのだ。だからライガにとってみんなは希望となっているのだ。

    「俺のこのみんなを守りたいって気持ちは………お前達とは訳が違う!!お前達はアンチネスで、友達も何も無いからわからないかもしれない、でも、人間だった時、自分の中の希望と言える人はいなかったのか!?強い絆で結ばれた信愛の人はいなかったのか!?」
    「別に、いなかったけど?」
    「貴様ぁ!!」
    「落ち着いてライガ!!」

    ベクセスの心無い発言に思わずライガは怒り狂いそうになったが、それをフィオが止めた。

    「レイ、行って!ここは僕とライガでなんとかしておく!」
    「で、でも……、」
    「頼むよレイ!!僕はこいつと決着をつけなくちゃいけないんだ!!紫音の仇を撃つために!!」

    フィオの全力の説得。フィオの真剣な眼差しを見て、この気持ちに嘘は無いと確信し、黙って頷き、残るメンバーを連れて先に進む事になった。

    「それじゃあこっちに来なさい!水の中で相手してあげる!」

    そう言ってベクセスはそのまま水中へと身を隠した。このままではベクセスと戦う事が出来ず、自分達はこの部屋に閉じ込められたままだ。フィオがどうしようか悩んでいた時、ライガがフィオの肩に手を置き、そこから不思議な力を持った霧が送られてきた。するとフィオの身体が緑色の霧に包まれ、どういう訳か深呼吸がしやすくなっていた。

    「これは『エアーミスト』。何時でも何処でも空気を吸える……所謂酸素ボンベみたいな霧だ。ただし、これは5分しか持たないから、それ以内に倒さないと、俺達は間違いなく溺れ死ぬ!!ここをよく見るとかなり深い!恐らく100mはある。ベクセスはきっとそのもっとも深い場所だ。5分以内にベクセスを倒さないと、俺達の命は無い!」
    「わかった!行くよライガ!!」

    そう言ってエアーミストを纏った二人は真っ黒のプールの中に飛び込んだ。

    やはりと言うべきか水その物に色はなく、フィオの武器から放たれる光が唯一の明かりとなってこの暗闇を照らしている。フィオ達は深い場所を目指して潜っていっているつもりなのだが、進んでいるという気が全くしない。もはやプールではなく海のようだった。

    「フィオ!」

    ライガが指差した方向から突如魚雷の如く氷の弾丸が飛んできて、二人はそれを辛うじて避けた。弾丸の飛んできた方向を見ると、少しずつだが何かが迫ってきている。そう、ベクセスだ。ベクセスが氷の弾丸を放ち、二人を攻撃したのだ。

    「雷魔法、サンダ、」
    「待てフィオ!!」

    サンダガの魔法を唱えようとしたフィオを急いでライガが止めた。

    「何故なんだ!」
    「考えろ、ここは水の中だ。ここで雷でも使ってみろ、俺達にも被害が及ぶぞ。」

    水は電気を通す。学校でも習った基本的な基礎が二人の戦術に制限をかける。しかもここは水の中なので、何処から攻撃が飛んでくるかわからず四方八方全てに気を配らなければならない。二人の出来る行動は本の小数だった。

    「フフッ、水の中での戦闘に手間取ってるようね!」

    二人が悪戦苦闘しているうちにベクセスが杖を出現させ、水中とは思えないほどの早さで二人を連続攻撃した。

    「「ぐわぁ!!」」
    「まだよ!」

    突如杖の形が大きなキャノン砲のような姿に変化し、その中心から巨大な闇の弾丸が出現した。その闇の弾丸はこの暗闇島のように真っ黒であり、時々紫に輝くのがまた不気味である。

    「くたばってもらいましょうか、ダークアルテマキャノン!!」

    光属性の中でもトップクラスの技であるアルテマキャノンのダークバージョンとも言える高威力の技、ダークアルテマキャノンが二人を襲う。その距離約10m。秒速は1m。つまり十秒もすればほぼ確実にヒットしてしまうという事。何時もの二人なら十秒あれば避けられる距離なのだが、二人は先程からベクセスの奇襲を受けている為、避けられる体力はほぼ無い。

    「くっ………どうすれば……!?」
    「……僕は………!」

    フィオが突然ダークアルテマキャノンの弾丸へと突っ込んでいった。

    「フィオ!?」

    ライガが呼び止めてもフィオは決して止まらず、ただアルテマキャノンへと全速力で進んでいく。

    「何をする気!?」
    「僕は…………自分の限界を……超える!!」

    フィオはなんと弾丸の中に飛び込み、大爆発に巻き込まれた………かと思われたが、爆発の中からフィオが何事も無かったかのようにその姿を現した。しかし、その姿はまるで別人と化していた。何時も頭に巻いている水色のPの字入りのバンダナの色が白くなり、髪が黄金色に変化、さらに目の色も明るめのオレンジ色になっており、その顔つきは完全に何時ものフィオでは無かった。

    「………フィオ?」
    「………………俺はアルテマキャノンをこの身に取り込み、我が物とした。俺はこれより、この勝負に勝つ!!」

    一人称が変化しており、どうどうと勝利宣言を叫ぶとフィオの背中から大きな羽のように稲妻が広がり出し、なんとプールの水を全て吹き飛ばした。

    フィオがその稲妻の力を解放し、大量の雷を発生させた。するとたちまちプールどころかこの部屋全体が崩壊してしまった。水が無くなった事によりライガは底に落ちそうになるが、稲妻の羽のお陰で中に浮いているフィオに助けられた。

    「そん…………な。」

    無論、ベクセスも底に落ち、倒れた所をフィオがアローガンで狙いを定め、アローガンに雷の力を注いだ。

    「いけっ………BOL(ボルテックスオーバーライト)!!」

    とてつもなく巨大な雷の弾丸がベクセスに向かって飛んでいき、ベクセスはその雷に飲まれ、悲鳴を上げながら消滅した。ベクセスのいた場所はフィオの放ったBOLによって崩壊してしまっている。

    フィオとライガは水の無くなったプールから脱出し、着地した所でフィオの不思議な力が消え元の姿に戻った。ライガはこの時、クロナから聞いていたキルアントの話を思い出していた。

    (フィオが雷の勇者の可能性がある。)

    「(もしかして………こう言う事だったのか………?)」

    14/08/02 01:27 レイラ   

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